書評:『変性の”ハバエさん”』山城窓さん | 『にゃんころがり新聞』

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 出だしからの「掴み」が凄いです。

 場所はコールセンターです。女性からの電話がかかってきます。派遣社員の「僕」は、その女性の応対をしますが、その女性は、フグになりたいという訴えをしてきます。「僕」は、女性に、「フグになってからどうしたいんですか?」などと問いかけ、「とりあえず具体的にはありません」という女性に、「そんな漠然とした気持ちじゃフグになっても長続きしないんじゃないですか」などと、すこし怒ったふりをして、まあ、とりあえず丁寧な応対をします。会話が終わったあと、パソコンに記録を残していると、隣の席の、角野さんという女性係員が「僕」に話しかけてきます。「あなたさっきから何をしてるの?」と。…角野さんは言います。「あなたちょっと変わってるわね。…私はもっと変わってるわよ」

 いつも嫌味ばかり言ってくる上司「嫌味の精」や、「僕」の前では、かわいらしいふりをしているという木村さん(僕がいない時には軍神のようになるという)、長寿アニメ「ハバエさん」を終わらせることを画策している角野さん、全く空気の読めない落窪くんなど、多彩なキャラクターを配し、今まで読んだこともないような、スラップスティック・ラブストーリーが私たちの眼前で展開されます。
 「僕」はわけがわからないながらも、「ハバエさん」を終わらせる活動をしている角野さんを手伝い、その見返りに、木村さんとセックスできるよう、角野さんに支援してもらいますが…。
 やがて無意味・ナンセンスの連続と思えるストーリーが終盤で絡まりはじめたとき、読者の爆笑の数々は、感動という一歩上のプラトー(台地)で景色が開けているかもしれません。

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