書評:『中田病院』郭公太さん | 『にゃんころがり新聞』

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書評:『中田病院』郭公太さん

(あらすじ)
 扁桃腺からくる高熱で、青い絣の着物を着せられ、小学一年生の修一は、雪道を箱橇に乗せられ、両親に中田病院へと連れて行かれます。長い道のりをようやく病院に辿り着き、診察が終わると、修一は、病院の外で、白いタクシーが横付けされ、そこから出てきた赤い着物を着た女の子と出会います。女の子は、白い足袋で板敷きの廊下に立つと、修一のところへ歩み寄って来て声をかけてきますが、小さな唇が動くばかりで、何と言っているのかわかりません。何度か聞き返すうちに、女の子は修一の横をすり抜けて待合室に入って行ってしまいます。女の子を追い掛ける修一ですが、足が滑って少しも前へ進みません。そこで母親から声をかけられ、目を醒ます修一。今の女の子は夢だったのかと思います。けれども、病院の外の雪の上に、タクシーの車の跡が残っているのを見て、やっぱり夢ではなかったと思います。

 中学一年生になり、貧血をおこし倒れた修一は、中田病院の点滴室に寝かされます。どこからか聞こえてくるラジオの音に誘われて、点滴室のドアを開けると、二階の病室へ続く階段を発見します。そこには、佐藤直美という、修一と同年代の女の子が白いパイプベッドの上に坐っていました。直美は、毎朝、窓から登校する生徒を見ていて、修一のことを知っている、と言います。すると、修一も、直美に会ったことがある、と応じ、直美を驚かせます。そして、修一は、小学一年生の時に見た、現実か夢か定かでない情景の話を直美に聞かせます。そこへ直美の母親がやって来て、白いタクシーで病院にやって来たことはあるけれど、その時に修一と直美が会っているかどうかは分からない、というふうなことを言います。けれども、修一も直美も、修一が見た夢が、あながち夢ではないように思えてなりません。

 梅雨があけると、直美は仙台にある大学病院で本格的な治療をするために、中田病院からしばらく離れることになります。直美は急性骨髄性白血病という難病なのでした。会えなくなるばかりか、直美が生きて帰って来れない可能性もあることから、沈んだ雰囲気に落ち込む二人ですが、……病院からの帰り際に、修一は直美からの手紙を受け取ります。そこには、修一が小学一年生の時に見た、現実とも夢とも思えるあのイメージについても書かれていたのでした。……


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 特に最後の2センテンスがいいと思いました。青と赤の着物のイメージが鮮やかな、珠玉の短篇と言っていいと思います。二度読み返しましたが、気に入ってしまいました。

 郭公太さんの『中田病院』は、こちらから読めます。→http://p.booklog.jp/users/kakkouta