- 本記事執筆者/K・Kaz
STORY
昭和64年に発生した少女誘拐殺人事件、通称「ロクヨン事件」。
未解決のまま14年が経ち、時効まであと1年に迫った平成14年。
警察庁長官による現場慰問が行われることとなり、D県警では被害者の父、雨宮芳男との交渉が進められていました。
交渉を担当していた県警警務部広報官・三上は、かつて「ロクヨン事件」に捜査官として参加していたのですが、
「被害者死亡・犯人は捕まえられず」
という結末をむかえてしまい、それが、いつまでも心の中にしこりとして残っています。
三上は、14年ぶりに再会した雨宮に、犯人逮捕に役立つかもしれないと説得しますが、雨宮は、それを全く信用せず、慰問を受け入れようとしません。
三上は、そんな雨宮の態度に疑問を抱き、独自で「ロクヨン事件」を調べはじめます。明るみになる、警察内部の隠蔽工作や、謎。
時を同じくして、「ロクヨン事件」を摸倣した誘拐身代金事件が発生し、二つの事件は複雑に絡み合っていきます。 - REVIEW
三上自身も一人娘が家出して行方不明になっており、娘を亡くした雨宮に、職務以上の思いを抱いています。
しかし、縦社会の警察機構の中で思うように動きがとれず、記者クラブの記者達からも、様々なトラブルに足を引っ張られ、信頼もなくしてゆくばかり。
やりきれない日々のなかで、思いは心残りとなっている事件の真相へと向かってゆきます。
ある者は、事件のことを忘れようとし、ある者はあの事件を境に人生が一変しています。
犯人を取り逃がしてしまった一因が、犯人がかけてきた電話の声を録音し損ねた為だったのですが、隠蔽されたその事実が、現場にいた捜査官・幸田の残した「幸田メモ」に記されていたことを知ります。
長官の慰問に向けて、上層部は、三上の動きを快く思わず、体面を気にするばかり。
クラブの記者たちからも、日ごろの警察の秘密主義的なやり方を非難される中、様々な怒りや、やりきれなさ、事件ですべてを失った被害者の両親への申し訳なさを全身に感じながら、事件を調べる三上の姿は、痛々しいほどでした。
そして、警察上層部や、三上の苦労をあざ笑うかのように、14年前におきた誘拐事件にそっくりの事件まで発生してしまいます。
その事で、事態は、意外な方向に大きく動き、止まっていたように見えた時間が、実はゆっくりと動き続けていたことが分かりはじめます。 - 何気なく思えたことが、実は重要な伏線となっており、
「あぁ、そういう事だったのか!」
と驚かされました。
県警上層部の言動からは、保身に必死な気持ちが見え隠れして、
「自分が事件の被害者だったら、こんなゴタゴタした捜査は絶対にして欲しくない」
と、映画を見ているこちらまでイライラさせられました。
前編・後編と分かれていて長い作品ですが、それだけに事件の経緯や登場人物が丹念に描かれており、手に汗握りながら見入ってしまう、重厚で見ごたえのあるサスペンスでした。 - この作品の評価は星4つとしたいと思います。K・Kazの映画『64~ロクヨン~』の評価↑
*レーティング評価(本ブログ内での定義)
☆☆☆☆☆(星5) 93点~100点
☆☆☆☆★(星4,5) 92点
☆☆☆☆(星4) 83点~91点
☆☆☆(星3) 69点~82点
- 『64-ロクヨン』は、前編・後編の二部構成。
前編は、2016年5月、後編6月に公開。
主演/佐藤浩市。