第44回新潮新人賞はダブル受賞で、先日記事にした「肉骨茶」とこの「黙って喰え」の二作でした。
「肉骨茶」は迫力のある作品でしたけれど、「黙って喰え」はそれとは対称的に変化球の効いた作品に仕上がっています。
あらすじはこんな感じです。
大学生のシュウ君の元に、幼馴染みの眞壁君からスピリチュアルな内容の手紙が断続的に届きます。眞壁君はお腹の中のサナダムシを通して、シュウ君の語りかける声を聞いているというのです。シュウ君は気味悪く思って、返信せずに無視していましたが、眞壁君はシュウ君の個人的な事柄について知っていることが手紙を通して分かります。
一方、アルバイトや彼女との出会いと別れなどシュウ君の大学生活は続きます・・・。
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面白いと思ったエピソードは少しあります。
志保という彼女に何故別れるのかと訊かれて、「最近工事の音がうるさくて、志保の部屋で気分良く昼寝ができないから」などという意味のことを答えます。志保はすこし変になって、「シュウ君のために引っ越してもいいんだよ」などと言ってきますが、シュウ君は部屋を引っ越しても別れたいと思う自分の気持ちは変わらないと考えます。
読んでみて、よくわからなかったんですけれど、だからといって、この作品がダメというわけではないですね。村上春樹の「風の歌を聴け」も最初はよくわからなかったです。だけど、何度か読むうちに、これはいい作品じゃないかと思えてくる時もあります。
この小説は、もしかしたら、大人になることの不安を描いているのかもしれないですね。
パチンコばかりしていた先輩が働き出して、その先輩と飲みに行くシーンもありますし、朝と夕方のラッシュ時の電車に乗るのが嫌だというパラグラフもあります。
まあ、青春小説だから、どの作品にもだいたい大人になることの不安が書かれることにはなると思うのですけれど。
大事なシーンである、彼女の首を絞めるシーン。
この衝動は、意味不明ですね。
私が同じ立場なら、締めるだろうな、と思わないですもん、全然。
読んでいて、締める必然性みたいなものも、感じることができなかったですし。
選評を読んでいても、評価した理由がいまだによく分からないです。
選考委員が言っている意味はわかるのですけれど、だからといって、そのためにこの作品が高い評価になるとも思えなかったですし。
それは私の感想。
他の方が読んだらどう思うのか、知りたいです。
星は一つで。
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