『八日目の蝉』角田光代・・・85点 | 『にゃんころがり新聞』

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 『八日目の蝉』角田光代・・・85点

(中公文庫、ジャンル:サスペンス)


 期待してい
たのですが、90点以上いくかなと思っていましたが、結果はこのとおりです。


 前半、特に小豆島での生活は魅力的に描かれていたと思う。それに反して、後半の恵理菜と本物の家族との生活は味気なく描かれている。

 ラスト、希和子がフェリー乗り場で恵理菜とすれ違うシーンにはさして感動が起きなかったし、希和子がフェリー乗り場で毎日待っているというのはなんだか嘘臭かった。

 どうせなら、恵理菜が希和子に会いに行き感動の再会を果たす方が良かったと思う。しかし、作者には何らかの考えがあり、あえてそうしなかったのだろう。

 文庫の巻末にもあったが、この物語に登場する男性は「情けない」、というより嘘つきで許しがたい存在だ。だけど、こういう人間は、けっこういる。
 そんなにヤりたいか?と思ってしまうが、実際男ってそう。女の子とヤることしか考えていない。ヤった後の妊娠とか赤ちゃんとかにはびっくりするほど無責任だ。しかし、実際身ごもるのは女だから、後始末というか子育てはいつも女に押し付けられる。


〈あらすじ〉

 希和子は妻子ある男性、丈博を好きになってしまい、その人の子供を身ごもる。

「妻とは別れる、今子供ができると妻との離婚交渉が台無しになる」、という丈博の言葉を信じ、希和子は堕胎する。

 堕胎手術で子宮に不都合が生じ、二度と子供を産めない体になってしまった(と希和子は医師の説明を誤解してしまう。)

 しかし、間もなく丈博の妻に子供が産まれ、希和子は自分が騙されていたことを知る。

 希和子は丈博の子供をひと目見るために丈博たちが留守の間を見計らい、勝手に彼らの家に忍び込む。

 希和子は女の赤ちゃんを抱いた瞬間、丈博の妻からの電話で、「がらんどう」と自分が罵られたことを思い出し、赤ちゃんを誘拐して逃げる。

 ある時は、家から立ち退かなければならないのに堂々と居座り続けている老女の元に、ある時はエンジェルホームという堕胎した経験か、子供を失った経験がある女しか入所できない施設に。

 警察の手が伸びるたび、逃げ出す希和子だが、小豆島で島の住民たちと打ち解け、見合いまでして今後の生活が徐々に良くなるように見えはじめた頃、祭りの時にふと撮られた写真が新聞に載ってしまい、希和子の存在が警察の知るところとなってしまう。