『トロンプルイユの星』 米田夕歌里(集英社)
☆☆☆78点☆☆
(2010年すばる文学賞受賞作)
受賞のインタビューを読んでいて、すこし好感が持てました。
私は大阪人なので、大阪人は、はじめての人に対しては、「なんだこいつ?」という感じで接するので、それを考えれば、好感が持てたことはすごい前進だと思います。
ややこしい設定の小説ではあります。
でも、ややこしさをよく描ききったなと思います。
この世界は、だまし絵のようにできていて、色んな人や物が実はすり替わっていて、それに皆、気付いていない、という設定です。
主人公の女と、久坂という男だけがそのカラクリに気付いていますが、久坂は消されてしまいます。そして、久坂の記憶も女の中から消える。
主人公たちが、世界からの疎外感を抱いているのは良いと思います。
私自身、いつの間にか、人や物がすり替わっているなんて思ったことなんてないですから、この設定の物語に没入できるか否かが、この小説を好きになれるかどうかの境目だと思います。
ファンタジーや架空の世界で起こるミステリーのような小説です。
ところで、すばる文学賞の選評は、どうにかならんかなー。
不親切というか。
群像も不親切。
昔の文学界は良かった。島田さんとか。
やっぱり、何をどう評価したのか、詳しく書いてくれないとねえ。
説明不足なら、誰でもできますよ。私でもできる。
言葉足らずなのは、実力がない証拠。