『キッチン』吉本ばなな | 『にゃんころがり新聞』

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『キッチン』吉本ばなな

  1987年にこの作品で海燕新人文学賞を受賞しています。

<あらすじです>
 大学生の桜井みかげは、祖母が亡くなったために、アパートを引っ越さなければならなくなります。そこへ田辺雄一というひとつ歳下の男の子がやって来て、うちへ来ないか?  と言ってくれます。田辺は祖母とは知り合いでしたが、みかげとはあまり面識がありません。しかし、ふわふわとみかげは田辺の家に転がり込みます。そこには雄一の母親も住んでいるのでしたが・・・



  冒頭、みかげの台所への思いが綴られます。散らかった台所も好きだ、と。
  何故キッチンが好きなんでしょうか?
  みかげは天涯孤独です。両親もいませんし、唯一の家族であった祖母とも死に別れてしまいます。
  恋人とも別れた後です。
  バスの中でおばあさんに生意気な口をきく子供に「ガキ」と心の中で罵ったりします。おばあさんの優しさが羨ましかったんすね。

  主人公がなんでキッチンが好きなのか、それは読んだ人それぞれが感じることだと思うので、ここでは私は言いません。
  文庫の裏には、「すべては(この作品から)はじまった」と書かれています。

  せつなさ。寂しさ。哀しさ。孤独。
  そういったものが、主人公の気丈な振る舞いから滲み出ている作品だと思います。
  シンプルな作品ではありますが、その無駄なものを削ぎ落としたシンプルさが、こころに直接響きかけてくる作品かもしれません。



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