『黒冷水』羽田圭介・・・66点
同じく17歳という若さで新人賞を獲った人に、綿谷りささんがいます。
『インストール』は私はわりと好きな作品です。
『インストール』は完全に大人になりきれていない主人公がちょっと背伸びして味わう大人の世界を新鮮に描いています。
これに対し、『黒冷水』は、子供同士の兄弟喧嘩をいつまでも繰り広げる興味の持てない内容です。
悪い意味で、幼さばかりが目立ってしまっている作品です。
文章の密度も低いような気がします。
作品の大部分を占めるのが作者に近い「僕」が書く小説ですが、その小説がいかにも作り話っぽくて、それが小説だと判明した時に読者のあじあわされる徒労感は最高潮に達します。
それまで苦労して読んできたことが全部夢や小説だった、つまり出鱈目だったというオチです。
ラスト、「僕」が現実の世界は小説よりも狂気に満ちていると思うところがあるのですが、まさにそれではいけないのであって、私は小説は現実より先を行っていなければならないと思っています。