すこし長い小説だし、観念的な文章が時々出て来るので意味を理解するのに苦労しました。
けっこう私は読みづらかったですね。
ニューヨーク3部作らしい「幽霊たち」と似たようなシチュエーションも出て来ます。
友人の奥さんをもらうっていうのは、いらなくなったお古の服をもらうみたいでなんだか面白いです。
まあ人間は年はとりますけど古くなったりはしませんから、古い妻をもらうっていうのはイメージ的な感覚です。
ストーリーはこんな感じです。
「僕」のもとに最近会っていない昔の友達(ファンショー)の奥さんから手紙がくる。
彼女の話によると、ファンショーが失踪して帰ってこない。ファンショーが失踪する前に執筆していた小説や戯曲などがあるが、彼がまだ失踪する前にもし自分の身に何かあればこの小説などの処理については友人の「僕」にお願いすればいいと言っていたことから、「僕」に連絡をとったという。
「僕」はファンショーの妻と会い、彼女の美しさに魅了され、彼女と関係をもつようになる。そして、ファンショーの遺稿については出版社を探して出版することにする。
小説は予想に反して売れ行きが良い。
やがて月日がたち、ファンショーは戻らないまま。ファンショーの妻はファンショーの赤ちゃんを身ごもっており、やがて子供が産まれる。
「僕」はファンショーは死んだのだと思う。こんなに美しい妻と彼女のお腹の子供を残して、ある日何の原因もなく失踪するなんて考えられないから。
数年後、「僕」はファンショーの妻と結婚する。ファンショーは法律の定めにより、死んだことになる予定であった。
しかし、そんなある日、「僕」の元にファンショーから手紙がくる。「妻と結婚してくれてありがとう。僕のことを絶対探さないように。もし君が僕を見つけたら、僕は君を殺すだろう。」などとその手紙には書かれていた。
その頃、「僕」の元にファンショーの伝記を書かないかと編集者から依頼がくる。「僕」はファンショーの伝記を書くことになり、彼の実家に行ったり、彼の日記や手紙などから、彼が少しでも接触した人物に話を聞いて回るが、全く彼の尻尾をつかむことができない。
僕はファンショーの妹が気が狂ってしまったことを知る。ファンショーは妹を楽しませるために暗号のような手紙を彼女に送るが、その手紙を繰り返し読んだ妹が発狂してしまったため、「罪滅ぼしのため」自分の書いた小説などを発表するのをやめたことが分かる。
「僕」は外国でファンショーを探すが、明らかにファンショーでない男をファンショー呼ばわりして追いかけ回し、逆にその男から気絶するくらい殴られたりする。そして、「僕」はファンショーの伝記を書くことをあきらめる。
そして、「僕」の元にファンショーからの最後の手紙がくる。「どうしても会いたい」と。
「僕」はファンショーに会いに行き、ファンショーが独りきりで住むには広すぎる家の中で、ドアを隔てた状態で彼と話をする。
彼はもう2年も誰とも口をきいておらず、自分はここで死ぬのだと僕に言う。僕はドアを開けて、話している相手がファンショーであるかどうかの確認をとろうとするが、相手はドアを開けたら、構えている銃でお前を撃ち殺す、と言う。
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さてさて、このたび、にゃんくの書評集が本になりました!
ブログ未発表のレビューがほとんどです。ブログ発表済みのレビューも、作品を読み直し、大幅に加筆修正しているものがありま
す。試し読みもできますので、お気軽にご覧下さい。
『小説道場』
本書は、作家になりたいと考えているにゃんくが、体当たりで挑んだ作品の数々から得たものを、出し惜しみなく綴った闘いの記録でもあります。
作品を書くことは、オリンピック選手などのアスリートたちの日々の訓練と同じ、とある作家は言いました。
一文一文を練り上げ、構造を考え、バランスが悪ければ、また一から組み立て直す…。文章を綴ることは、簡単なように見えて、容易ではありません。
選手たちには、合宿のような泊まりがけの訓練や、あるいは町道場など鍛える場があり、お互いに切磋琢磨しながら、自身の技を向上してゆけます。ところが、同じくらい大変な、作家になりたい人のための道場というのは、あまり聞いたことがありません(というか、ないでしょう、多分)。
そこで、作家をめざす人のための道場で鍛錬する、というイメージで書いたのがこの書評集です。
一週間で一作品群、三ヵ月でひととおりの訓練は終わります。
もちろん、作家をめざすつもりのない人も、対戦試合を眺めているだけでも楽しめます。時には「このような読みもあるのか」とのサプライズもあるでしょう。
皆さんも、作家志望者が真剣に取り組むこの「小説道場」に一緒に参加をしてみませんか?
『小説道場』目次
第一週 怪奇小説3本勝負
坂口安吾『桜の満開の下』、『夜長姫と耳男』、
『紫大納言』、 『青鬼の褌を洗う女』
第二週 リアリズム基本訓練
志馬さち子『うつむく朝』、井岡道子『次ぎの人』、
高倉やえ『ものかげの雨』
『紫大納言』、 『青鬼の褌を洗う女』
第二週 リアリズム基本訓練
志馬さち子『うつむく朝』、井岡道子『次ぎの人』、
高倉やえ『ものかげの雨』
第三週 エンタメホラーで作風の幅をひろげる
遠藤周作『蜘蛛』
第四週 基本訓練 文学賞受賞作から文章力を学ぶ
田中慎弥『共喰い』、前田隆壱『アフリカ鯰』、『朝霧のテラ』
第五週 戦争青春文学でテーマの大きな作品を書く
シリン・ネザマフィ『白い紙』、『耳の上の蝶々』
第六週 奥義 風俗AV斡旋で人間の業の深さを知る
野坂昭如『エロ事師たち』
第七週 あえて働かないことにより、見えた世界を描く
葛西善蔵『子を連れて』
第八週 詩人から言葉の切れを学ぶ
三木卓『砲撃のあとで』、『K』、『野いばらの衣』
第九週 童話で物語センスを鍛える
アーノルド・ローベル『ふたりはともだち』、
ファージョン『ムギと王さま』、『天国を出て行く』
ファージョン『ムギと王さま』、『天国を出て行く』
第十週 漫才師の笑いのセンスを取り入れる
又吉直樹『火花』
第十一週 私小説という圧倒的なリアリティ
島尾敏雄『死の棘』
第十二週 外国文学で視野を広げる
フィツジェラルド『冬の夢』、『お坊ちゃん』、
ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』
ナボコフ『ロリータ』
フィツジェラルド『冬の夢』、『お坊ちゃん』、
ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』
ナボコフ『ロリータ』
総仕上げ 歴史小説、自伝的小説で人間・おのれを見つめる
井上靖『死と恋と波と』、『考える人』、『結婚記念日』、『波紋』、
井上靖『死と恋と波と』、『考える人』、『結婚記念日』、『波紋』、
『楼蘭』、『平蜘蛛の釜』、『しろばんば』、『信康自刃、』、『補堕落渡海記』