『幸せ最高ありがとうマジで!』本谷有希子(戯曲)・・・73点
ストーリーの要約です。新聞販売所の4人家族のもとにある日突然、明里という女がやってきます。明里は自分が新聞販売所の主人の曽根慎太郎と7年も付き合っている愛人であるということを妻の曽根美十理に言います。
ところが、美十理と慎太郎の結婚生活はまだ1年半で、1年半前に再婚したことが分かります。
明里は美十理や慎太郎の息子の功一に追い払われます。
ところが、この新聞販売所の住み込みバイトをしている えいみ という女が明里に話しかけ、実はここに住み込んだ初日に慎太郎にレイプされたと打ち明けます。
えいみの腕にはリストカットの跡があります。
それを聞いた明里は復讐よ! と叫び二人で販売事務所に向かいます。
明里の目的は一家を不幸にさせることで、この曽根一家を狙ったことにたいした理由などはありません。別に他の家族でもよかったのです。
明里が慎太郎の愛人だったという話も実は嘘で、ただこの家族を不幸に落とし入れたかったための虚言に過ぎません。
明里はこの日誕生日で、不幸は無差別に誰の元にも起こるということを伝えるためにこの家族を標的にしました。
明里の行動が 徐々にこの家族の関係を暴き出していきます。
えいみは慎太郎にレイプされたことなどを美十理にあらいざらいぶちまけてやると脅したり、慰謝料の200万円を請求したりします。
一方で明里は功一に彼女になってあげるから代わりに家族のこと裏切りなさいと言います。
しばらく後に 近所の小学校のスピーカーから功一の声で「おらぁ、ガキども、死ねやぁ!」という声が聞こえてきて、最高の誕生日プレゼントだわと言って明里は笑います。
しかし、美十理に「本当は強がっているだけでしょ」と言われ 逆上した明里は灯油の入ったポリタンクを持ち上げ、チャッカマンを自分に近づけ、焼身自殺すると言います。
皆が止めようとしますが、慎太郎は「そうしてくれたほうが保険も下りて、新聞屋をやらなくてすむ」と言います。
明里は「なんであなたたちのために私が死ななくちゃいけないの」と自殺を中止します。
ラスト、えいみが「この人は希望の星なんです。この人のために思いっきりハッピーバースデーを明るく歌ってあげてください。」と言って皆にハッピーバースデーを歌われながら 外に明里は一人取り残されます。
うまく要約できたかどうか分かりませんけど、雰囲気はこんな感じの戯曲ですよね。
思いっきり壊れた人間、それについて描こうとしたのでしょう。
本作は岸田賞受賞作品です。
この作品にも本谷さんの味は出てるのでしょうけど、読後感が面白さよりも???が多く残ってしまうような気がしました。