伝説の村田英次郎vsルペ・ピントールを見て思ったこと | 城島充の物書き的日常

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先日、「あしたのジョー」の試写会にお邪魔したとき、

楽屋裏で今や日本で指折りの名優で、ボクシングマニアとして知られる

香川照之さんが村田英次郎さんを

「ピントール戦は僕の一番の思い出の世界タイトルマッチです」

と、本人を前にしておっしゃているのを聞いて

僕も久しぶりにユーチューブで村田さんが

メキシコのピントールに挑戦した世界バンタム級タイトルマッチをみました。


村田さん、若い…(当たり前ですが)

それにさすがにピントールはチャンピオンの風格があります。


村田英次郎といえば、ボクシングファンには

一撃必殺の右カウンターのイメージが強いと思うのですが、

改めて試合映像をみると、

あのピントールを相手に

すっとさしこむ左ボディも秀逸です。


その動きをみると、世界チャンピオンになれなかったのは

悲運としかいいようがありませんが、

改めて映像を見て、僕自身も昔の感動を思い出しました。


僕の中学、高校時代、

日本にやってくる世界チャンピオンは

そのほとんどが卓越した力を誇っており、

高い壁に挑む日本人ボクサーの戦いを

それこそ、テレビの前で正座をして見入った記憶があります。

強いチャンピオンに玉砕覚悟で向かっていく挑戦者に

なんともいえない感動を覚えたのです。


それに比べ、今の日本で行われる世界戦は、

あの当時の緊張感や興奮とは比べようもありません。

(長谷川VSモンティエル戦は別ですが)


それは、僕が単に年齢を重ねたからだけではないと思います。


もし、中学生だった僕が

先日の亀田興毅対ムニョス戦、あるいは亀田大毅対●●(名前も忘れました)

をプロボクシングの世界タイトルマッチとして見ていたら、

ボクシングファンにはならなかったと思います。


村田ーピントール戦で別の角度からみて印象的だったのは、テレビの実況です。

亀田をあおりにあおってボクシングに致命的なダメージを与えている

TBSが試合を中継しているのですが、

アナウンサーの実況は冷静で中立、

解説陣も村田さんが追い込まれたときはしっかりとそのことを説明しており、

15ラウンドを戦い終えたあとの採点も、

ボクシング評論家して有名な郡司信夫さんは「村田選手の勝ち」

そしてもう一人、日本人初の世界チャンピオン、白井義男さんは

「ピントールの勝ち」と、極めて正直な評価をテレビの前の人たちに伝えているのでした。


今、亀田の中継を担当しているアナウンサー、そして

解説をしている鬼塚さんや佐藤さんという元世界チャンピオン、

そしてなにより、TBSでボクシングを担当しているスタッフたちは

一度、この映像と実況を見てほしい。


僕は現役時代の鬼塚選手を応援していましたが、

亀田戦の解説を聞くたび、がっかりしています。

彼は「リングに立ったことのない人間が、努力している亀田兄弟を批判するな」

というかもしれませんが、

ボクシングはそのレベルでの議論が成立しないほど、崇高なものだと僕は思っています。


ほんまもんの世界戦しか、ボクシングの魅力は伝わらない。


だからこそ、僕は高山勝成というボクサーを近い距離で見続けているのかもしれません。


ローマン・ゴンサレス、そして、ヌコシナティ・ジョイ…。


そのときどきで最強のチャンピオンに挑戦する。


その気概に胸をうたれるのです。


ちなみに…。


試写会のあと、あこがれの村田さんと朝まで一緒でした。


お酒がはいると、伝説のボクサーとは思えないほど

ふにゃふにゃになる村田さんに、


「これは全国のボクシングファンを代表しての気持ちです」


と断りながら、


あのピントールやチャンドラーが殴った頭を

しばいてしまいました.


その3発目だったでしょうが、

村田さんがすっと体を倒して打ってきた左のボディ。

至福の痛みでした(笑)