は90年代特集
表紙はあのマイケル・ジョーダンです。
僕は辰吉丈一郎の写真につけた文章と、
ラグビーの神戸製鋼の連覇がとだえた試合を
堀越さん、永友さんという両チームの主将で
スクラムハーフの二人から聞き取った
あの試合の勝敗の綾について書いています。
ご笑読いただければ幸いです。
今年も東京で取材してきました。
福原愛選手、初優勝までの苦難の道のりを考えると、
今年連覇したことは本当に凄いことやと思います。
ロンドン五輪後に右肘にメスをいれ、
万全のコンディションではなかったはずなのですが、
やはり、去年の優勝でさまざまな呪縛から解き放たれ、
ロンドンのメダル獲得で得た自信と
自らの歩んできた人生への確信が
連覇につながったのでしょうか。
卓球は、相手の心を折るスポーツやと改めて思いました。
男子はNumberで補助剤問題を一緒に提起した水谷隼選手が
孤高の戦いを挑んで決勝まで進みましたが、
最後は丹羽孝希の逆襲の前に敗れました。
所属チームもなく、全日本でもベンチコーチがいない状況でしたが、
決勝まで勝ち進んだのは、彼の底力やと思います。
今日は丹羽選手のインタビューもしてきましたが、
紙一重で勝敗がいれかわる心理戦の背後には
いろいろな要素がある―と改めて思いました。
ボクシングのように相手の肉体にダメージを与えるスポーツではありませんが、
相手の心を削っていく瞬時の駆け引きは
ボクシングとはまったく違った意味で胸を熱くさせてくれるものでした。
個人的な思い入れとしては
水谷隼という俊才が、これからどんな形で卓球と、
つまり自分自身と向き合っていくのか
そのことに興味があります。
いつも御世話になっている先輩から
古いボクシングの映像を見せていただきました。
笠原優選手が、韓国の洪秀煥に挑んだJフェザー級の世界タイトルマッチです。
この試合をテレビ観戦していた記憶があるのですが、
小学生だった僕の脳裡にやきついているのは
スピードで圧倒した笠原選手が攻め込んだかと思うと
洪選手のパンチでダウンを喫し、
それでもすくっと立ち上がって反撃、試合の主導権を握ったかとおもうと
またカウンターをくらって倒される…。
グラスジョー
あごが弱いことを示す言葉を覚えたのは、
この試合のあとだったかさきさったかは忘れましたが、
いつからか、僕の記憶には笠原選手=グラスジョーという
イメージが固まっていました。
いや、しかし、30数年ぶりにこの試合を観てみると…。
確かに、笠原選手は打たれると脆い。
しかし、反撃に転じる姿にダメージは感じられないのです。
結局、5度のダウンを喫した笠原選手は判定負けで
世界に届きませんでした。
アマエリートから無敗の進撃をつづけての
世界初挑戦。
敗れましたが、ボクシング史に残る好試合でした。
そして…。
少年時代の僕は当然、笠原選手を応援していたので
攻めては倒され…の記憶がすべてだったのですが、
今、みると、チャンピオンの洪選手のボクシングにも目をひかれます。
ボクシングはスピードと技術が重要ですが、
それだけを争う競技ではない。
この前の試合で4度のダウンをはねかえして
世界王者になった洪選手の勝負強さが
新しい記憶として刻まれました。
一瞬のすきをつく勝負強さ