今月2回にわたって、仕事でマンハッタンに来ていた従兄弟のトシ君にカミングアウトをした話を書きましたが、親戚であると同時に、大学の後輩でもありビジネスマンである彼とは昨今の日米の政治や経済、社会問題の話もしました。
特に盛り上がったのは移民政策の話。というのも、トシ君が出張に来たちょっと前に、南部ジョージア州の韓国系自動車会社の工場建設現場で一斉に移民摘発が行われ、475人もの労働者が拘束された事件がありました。その中には、不法労働とされる移民だけではなく、韓国本社から出張してきていた社員や日本人の工作機器メーカーの出張社員も含まれていたとの報道もありました。よってトシ君も不安に思っていたのです。
トシ君の出張は、NY近辺の取引先を訪問して製品サービスのクライアントへの説明やシステムの使い方のトレーニング、そしてそれに関する様々な会議が目的でした。日本人ビジネスマンが出張でやってきてこういった活動をするには労働ビザは必要とされていません。90日以内であれば観光目的の日本人と同様ESTAで入国できます。これは、トシ君が勝手に判断していたわけではなくて、トシ君の会社がきちんと国際弁護士事務所に確認した上ので判断です。今回も同様の方法で入国したのですが、例の韓国系工場での社員拘束事件もあって、トシ君は、クライアント先の工場にガサ入れがあって自分も移民当局に職務質問にあって拘束されたら大変だと思っていたようです。
そんなこともあり神経質になったいたトシ君。クライアントの事業所に滞在中、技術者から製品サービスについて質問が相次ぎ、システムバグなどを解決しているうちに、技術的な話になっていき、これはもしやESTAで活動が認められている範囲を超すのではと思うようになったそうです。それで、こちらで得たジョージアでの韓国人拘束事件の話を会社にして、自分も心配だという話をしたら、アメリカ国籍を持つ社員を派遣してくれることになったそうです。たとえ今現在日本在住でも、アメリカ国籍者にはそういう活動の制限はありませんから。
それが、トシ君の滞在最終日にディナーに来た後輩君です。後輩君を最初に見たときは生粋の日本人だと思っていたのですが、聞いたら日本人のお父さんと中華系インドネシア人でアメリカのパスポートを持つお母さんがアメリカで結婚し、滞在しているときにこちらで生まれたのだそうです。よって、今も米国パスポートを持っています。その後両親が日本に来て、ずっと日本で育ったのと、お母さんはインドネシア出身とはいえ中華系なので、後輩君の見た目は日本人にしか見えません。今このブログ書いてる時に、インドネシア人の奥さんと子供がいる俳優ディーン・フジオカの離婚がニュースになっていますが、後輩君はまさにそんな環境で育ったようです。ディーン・フジオカの子供と違うのは、ジャカルタじゃなくて東京でずっと育ってほぼ日本人として育っていること。
ディーン・フジオカの離婚は国際結婚の難しさを物語る
そんなトシ君と後輩君、そして私の3人で、現在の日米の移民に対する世論の行方を憂いました。確かに度を越した不法移民の流入やビザ切れの後のオーバーステイ、また外国人の税金逃れ、社会保障のただ乗りは日米両国で問題になっています。それに加えて日本では、オーバーツーリズムや日本の文化伝統の軽視や破壊、一方アメリカでは麻薬の流入なども外国人を巡る議論の争点になっています。高市さんもトランプも当選の背景にはそんな国民の怒りの声を受けた形になっているとも言えるでしょう。
しかし、そんな民衆の怒りとは裏腹に、日米に共通して言えるのは、どちらの国も移民なしでは社会が回らなくなっていることです。日本に帰る度ごとに思うのはコンビニや飲食店での外国人店員さんの比率の増加。ずっと日本に暮らしていると気がつかないのかもしれませんが、1年に1回帰国する私には、今や東京にいても東南アジアのどこかにいるような感覚を覚えます。私が日本にいた頃からすでに、農場や工場などお客から見えないところで外国人(特に日系ブラジル人等)が多く働いていましたが、今や接客や小売などのサービス業の現場でも外国人がいないと回らなくなっているようです。
でも、それって究極的に言えば、好むか好まざるかにかかわらず、民衆が移民を必要としてるってことにもなるんですよね。
前回一時帰国した時、ある東北の老舗温泉旅館のフロントでネパール人がチェックイン業務をしてました。インバウンドが押し寄せるような有名観光地ではないので、インバウンド対応のために彼がいるのではなく、単に地元では日本人の労働者を採用できないからのようでした。でないと80過ぎたおじいさんとおばあさんぐらいしか働いてくれる人がいない。最近では、建設業界、土木業界でも外国人依存は強まっています。国家の安全保障上の観点から外国人を採用することに抵抗があるとされるインフラ関係、鉄道の保線業務にも外国人技術者に特定技能種で労働ビザを発給しようという動きもあるそうです。
移民排除しても、その後待ち受ける状況は、、、
アメリカではそれ以上に移民に頼った社会になっています。特定の業界で移民が多い、というのが難しいほど、ほぼ全ての経済活動で移民依存は常態化しています。よって、トランプ政権が移民排斥を訴えて、移民を追い出しても、後々になって経済が回らなくなってしっぺ返しをくらうのはアメリカの有権者なのです。例えば農業などはすでに大きな打撃を受けていると言われています。これまで農作物の収穫を担ってきた中南米系の移民が激減してしまったのです。だからと言って、アメリカ人の労働者を雇えばいいじゃないかとなるのかもしれません。しかし、そう単純でもないのです。移民依存の経済構造に慣れてしまっているアメリカ人、特に若者は農作物の収穫のような仕事を好まないという労働市場の不一致があります。またファーストフード店など店によっては店長以外全て正規の労働ビザを持たない移民労働者で運営されているところもあります。昨日、南部の某都市で1日に897人の検挙がありほぼ全員が強制送還になる予定だとニュースで聞きました。キッチン・接客スタッフがほぼ全員収監されたというハンバーガー店は営業できず閉店になるようです。なお、冒頭に述べた韓国系自動車工場もそうですが、きっかけは、外国人を快く思わない地元住民の密告によるものと言われています。
私のブログで扱えるような問題ではないので、従兄弟と話したことをきっかけに、アメリカの現状はこんな感じですよ、と言うレポに留めておきますが、政治的イデオロギー的に、そして感情的に移民を追い出しても、経済的には、待っているのは労働力不足による賃金の上昇、そして物価高です。アメリカでは、現在の移民排斥モードがどう社会経済に影響を与えていくのか、これからじわじわと影響が可視化されていくことでしょう。
少子高齢化の進む日本ではそもそも製品の供給が滞り、様々なサービスが受けられないと言う結果になります。それでも移民や外国人が嫌なら、経済活動の縮小をすればいいのかもしれませんが、国のレベルでそんな政策は取れないでしょう。日本の地方都市で「コンパクトシティー化」という政策がありますが、地方ならまだしも国政レベルで、国自体の衰退を連想させるような政策議論は難しいのではないかと思います。どの国も、技能の高い(=その国にとって有益となる移民)は欲しいけれど、不良外国人には入ってほしくない、というのが基本的な政策になるかと思います。しかしボリューム的には単純労働の分野においてこそ移民の需要が高いのであり、不良外国人化しやすいとされるそれほど教育レベルの高くない層が入ってくることは避けらません。
また、今の日本の状況を見るに、それこそ、今回登場した後輩君のような高スキル技術者の外国人にも居心地の悪い社会になってしまい、早晩賃金の高い国に逃げられる恐れもあります(とはいってもアメリカもヨーロッパも大して魅力的なところではないと後輩君は言ってますが、、、)。
いずれにしても、性善説に基づいたお花畑主義や、移民にはいづれ帰っていただく、と言うようなこちら側の勝手な幻想はすて、外国人が移民した先のルールを守らないと生きていけないようなきちんとした法整備が必要と思います。高市さんにもトランプにもそういったところを期待したいです。
と、久々に真面目な投稿でしたが、移民論争の行き着く先はどうなるのだろうと思う毎日です。





































