ブログの更新が1週間も空いたのは久しぶり。というのも、大統領選挙でトランプが再び返り咲いてしまい、旦那と私ほぼ鬱寸前の状態でこの1週間を過ごしてきました。

 

大袈裟と思われてしまうかもしれませんが、アメリカ社会は、だれが大統領になるか、そしてどちらの党が政権を担当するかが大きく市民生活に影響します。これは、実際にアメリカに腰を落ち着けて住んでみないとわからないことです。私はアメリカ移住後5回目の大統領選挙を経験してきています。最初の1-2回は自分がアメリカにこんなに長居するとは思わなかったので傍観者的でそれほど興味はありませんでした。それが、留学後もアメリカで就職し、ローン組んで家を買い、結婚し、転職し、州をまたいだ引越しを経験する、、とほぼアメリカ人と変わらない生活を送るようになるとやはり自分の思想や生活に寄り添った政治家に政権を担ってもらいたいと思うようになるものです。現時点で私に参政権はなくとも、永住権を持ってアメリカ人と結婚している私のようなものにとっては、選挙の結果によっては死活問題を抱えることになります。特にトランプが表舞台に登場してからその傾向がはっきりしてきました。例えば、同性婚をしている私にとっては反LGBTを掲げ、セクシャルマイノリティーの権利を制限してきたトランプ率いる共和党は脅威で、そのトランプ共和党が政権を握るということは不安しかないのです。今回再びトランプが選ばれてしまったことで、これから4年間、低く暗い雲が立ち込めた空の下で生活するような気分で過ごすと思うとうんざりします。

 

今週は月曜が退役軍人の日の祝日で時間に余裕があり、少しずつ憂鬱な状況から立ち直りつつあるので、癒しの意味も込めて今の気分を整理してみたいと思います。幸い私がブログで繋がっている方々はリベラルでマイノリティーの権利などにも関心のある方が多いのでブログとして公開しますが、基本自己回顧の備忘録そして自分の気持ちを整理するために書いてます。よって保守的志向の方や共和党支持者と議論を戦わせるつもりで書いていませんし、トランプ大好きさんも読まずにスルーしてください。

 

近所のハロウィーンの装飾にも大統領選

 

 

結果に対する感想と考察

 

結果から言うと、騒がれていたよりもあっさりとトランプに決まってしまいました。事前の世論調査は、大接戦で2020年の選挙のように結果が出るまで数日かかるのではという予想もありました。前回の大統領選挙はバイデン有利が明らかになるにつれて暴動なども発生しましたが、今回は選挙翌日にはカマラが負けを認めたのでそういう点では社会不安の様な状況にはなりませんでした。うちの会社の近くでは略奪にあわないようにバリケードを施しているお店もありましたが、今のところそういった騒擾は起きていません。

 

トランプの勝因、カマラの敗因については、いろいろな分析があります。勝てば官軍、とばかりにトランプ礼賛をする人も多いですが、所詮結果論。私は物価高と不法移民問題に対する国民の不安が渦巻く中でトランプが上手く有権者の心をつかんだが最大の要因と思います。選挙の常ですが、現政権への不満は挑戦者への大きな原動力になります。煽動はトランプの十八番で、現在の物価高はすべてカマラ率いる民主党の責任だとのメッセージを展開し彼はそれに乗っかったと言えます。私的には、民主党だろうが共和党だろうが、あまり関係なく有権者は政権を変えることで不満を解消するという、ガラポンが今回の選挙だったと思います。トランプ陣営は物価高を批判はしましたが、現政権叩きに終始し実効的な解決策は示していないです。関税を引き上げると言っている時点で矛盾しているし、つい4年前まで政権にいたのでトランプ在任時の政策自体が今の物価高の一因を招いたのも確かです。最近になって物価の上がり具合が緩和されていますが、これはここ1-2年の民主党政権の対策成果でもあります。ここでまたトランプが公約通り関税を上げて輸入品の価格が上がり、加工品の物価も上昇基調に逆戻りするというシナリオも予想されます。きっとそれはバイデンのせいにするんでしょうが、結局そのツケはトランプの言葉を信じた有権者自身に跳ね返っていくでしょう。一方移民問題に関しては、歴史的に民主党のほうが寛容であることは事実です。NYに流入する移民を実際に見た立場から言うと、受け入れキャパを超えているので政策は変わらざるを得ないでしょう。いつまでも移民寛容政策を続けるとニューヨークまで共和党支持になってしまうかもしれません。トランプは不法移民をもう入れない、そして今アメリカにいる不法も強制退去させると言っていますが、どのくらい実効性があるかは未知数です。

 

そして、もう一つ選挙結果について見逃してはいけないのは、カマラが有色人種の女性だったという事実です。今回の投票行動の分析によれば、白人男女、そしてラテン系男性の投票傾向の変化がトランプ当選を後押ししたそうです。これが女性政治家のガラスの天井議論や人種差別意識を証明したことになるとは誰も言わないでしょうけど、もし、民主党の候補者が白人の男性だったら結果は大きく違っていたと私は信じます。私は、カマラ陣営のソーシャルメディアをフォローしていました。コメント欄は罵詈雑言、差別用語などであふれて、カマラに対する性的なジョークも含まれており、アメリカ社会の闇を見たように思います。彼女への応援メッセージの場の筈なのに、汚い罵り言葉に圧倒されていました。カマラのソーシャルメディアページが、ここまで罵詈雑言に埋め尽くされているとは、AIなどの不法介入による世論操作を疑いたくもなります。有力ソーシャルメディアプラットフォームXのオーナーであるイーロンマスク自身があれだけ派手にトランプ支持してましたから、もうソーシャルメディアにはモラルも何も期待できませんがね。

 

 

本当に「圧勝」なのか?

 

メディアで言われているような「トランプ圧勝」という表現には違和感を覚えますし、アメリカ国民の8-9割がトランプを支持しているようなニュアンスも事実とは異なります。アメリカの大統領選挙制度は直接投票のように見えて実は選挙代表人を介した間接方式です。各州の住民による直接投票で多数決で勝ったほうがその州に振り分けられた選挙人を総どりする仕組みです。そして全米の結果で選挙人の数が過半数の270人を獲得した政党の候補者が大統領指名を得ることになります。ということはトランプが激戦州すべてを制したからと言って、国民ほぼすべてがトランプに熱狂している、というような状況ではありません。上にも述べましたが総どり方式なので各州の有権者投票で1%でも勝ったほうが、その州の全ての選挙人を獲得します。事実、激戦州ですべてトランプが勝利と言っても中身はたいてい52%トランプ、48%カマラのような構図です。今回は総得票でもトランプが勝ちましたが、それでもカマラの支持者は半数近くいるわけで、トランプ圧勝とかすべての国民の総意を得たとは程遠い状況です。ですので分断の構図は続くでしょうし、トランプに投票した人も就任後の政権運営に失望すると、次の中間選挙で民主党に乗り換えるでしょう。それと、根強いトランプ嫌いな層の中には、今回の再選でますます嫌悪や不信の念が増幅された人も多いです。そのうねりがどういう形で表出してくるかはある意味楽しみです。

 

 

ヒトラーのような独裁者を目指すという懸念への追及はうやむやにして逃げ切った。有権者は監視を緩めてはいけない

 

 

2016年のヒラリー敗退時、2020年のバイデン当選時、そして今回〜NYでの受け止め方

 

2016年の大統領選挙時は、誰もがヒラリーの勝利を信じて疑わなかったので、トランプが勝ったと判明した時はまさにお通夜状態でした。8年前のあの日、オフィスに行ったら女性の同僚たちがハグし合いながら泣いていたのを鮮明に覚えています。今思えば、隠れトランピストもいたのでしょうが、少なくともマンハッタンの住民はほぼヒラリー推しで、ヒラリーが敗北宣言をした後しばらくは街全体が意気消沈したようでした。誰とでもあいさつ代わりにトランプ政権への不安を語っていたように思います。2020年バイデン対トランプの時はNYCはじめリベラル派の街では、トランプをなんとしてもホワイトハウスから追い出すというパワーがみなぎっていたように思います。また、アメリカでのコロナ蔓延はトランプの失政だと受け止められていたので、結果バイデン率いる民主党が政権を奪取する結果に結び付きました。そして今回。今までと違うなと確信したのは、ここマンハッタンでもトランプ支持者が隠れることなくその支持を表明していたことです。数はそれほど多くありませんでしたが、白人男性にその傾向はあったと思います。ご存じかどうか、マディソンスクエアで行われたトランプ集会は大盛り上がりで、あの日街中でMAGAの帽子やTシャツに身を包んだ人々を多く見ました。MAGAとはMake America Great Againという意味で、トランプ陣営のスローガン。彼の応援に他の州から来た人もいたのでしょうけど、かなりのニューヨーカーもいたと思います。今の会社では、なんとオフィスの机にMAGAの赤い帽子を置いてトランプ支持を表明している同僚まで登場。30代の白人の男です。前回2回の選挙ではこんな光景は見かけませんでした。ちなみに、このトランプ支持の同僚は、ボストン出身で普通の育ちのよさげな男性です。以前のガールフレンドがアジア系だったとかで、人種差別主義者でもないと思います。実は、普段から彼の隣のオフィスの女性同僚はBlack Live Matterのポスターとレインボーフラッグを置いて多様性への支持を示してました。彼のMAGA帽子は彼女への対抗なのか?選挙前二人とも表面上は普通に挨拶していましたが、女性の同僚のほうは選挙以降ずっと在宅勤務していてまだ会えていません。トランプ支持の同僚からすれば、職場でレインボーフラッグを掲げる自由があるならMAGAのスローガンを振りかざす自由もある、ということだと思います。トランプが勝った今、二人がどう対峙するか見ものではあります。

 

Make America Great Again (MAGA)

 

今の私の心境

 

選挙結果のさらなる分析やトランプの政権の要職指名が明らかになっていますが、今は彼や取り巻きの顔を見るだけでも憂鬱になるのでニュースは遠ざけています。カマラの敗北宣言時のスピーチは感動的なものでしたが、それにすら醜いコメントをする人々もいました。そういう人間はできるだけ遠ざけ、ソーシャルメディアにもできるだけ触れないようにしています。もちろんイーロンマスクの影がチラつくのでXはアカウント自体削除しました。今何をもがいても大してできることはないので、だったらしばらく嫌なニュースは見聞きしないほうがいいと思っています。そして、癒しの一環として、本当に仲のいい友達とだけ連絡をとっています。結局は傷の舐めあいですが、やはり同じ気持ちを共有する同志がいることには勇気づけられます。このブログで紹介したことのある元在デンマーク・米大使で今回の民主党の選挙対策委員でもあるルフス・ギフォード氏が支持者へのメッセージで、「今はTVを消してツイッターから退会して、体を動かそうと思う。勝利よりも失敗から学ぶことのほうが多いのは常。きっと今回も、もう少ししたらいろいろ言えることも出てくるだろう。それまで元気で」と言っていて前向きな気持ちにさせてくれました。

 

わんことイケオジは癒し。選対委員のルフス・ギフォード氏

 

カマラさん、お疲れ様でした

 

そして最後に、カマラ・ハリス氏にはお疲れ様でした、と言いたいです。バイデンが選挙戦撤退を表明したのは選挙のおよそ3か月前。寝てる暇はあったのかと思うほどあちこち飛び回っていました。トランプ時代の失政も含めバイデン政権の負の遺産、さらには今日のアメリカ社会が抱える問題のすべてが彼女のせいであるような言われ方をしてましたが、何とか応えようという姿勢には感動しました。トランプのように、「そんなの俺の責任ではない」と言ったら叩かれてしまうのはやはり女性だからなのかなと思ったりもします。データとして顕れていますが、カマラには女性のアンチも多かったです。そしてあちこちで副大統領として実績を執拗に攻撃されてましたが、副大統領としては政権と違った路線を打ち立てることはできないですし何か目立つことをすれば出しゃばるなと言われる立場。トランプの副大統領だったマイク・ペンスなんてもっと何もしてなかったと思います。COVID対策責任者に指名されたにも関わらず、政権の公衆衛生アドバイザー・ドクター・ファウチ氏攻撃に終始してた姿しか記憶に残っていないので、そんなのに比べるとカマラは良くやったほうだと思います。トランプ側が、カマラを陥れるためのセンセーショナルンなスキャンダルを血眼になって探していましたが、結局バイデンの息子やヒラリーの職権公私混同のようなスキャンダルは出てきませんでした。それでもカマラへの女性蔑視の罵詈雑言は、白人であるヒラリーに対してにも増して執拗でしたので、カマラは敗者ではなく、トランプを選んでしまったアメリカこそ敗者なのではと思います。

 

カマラ・ハリス氏にはお疲れ様と言いたいです

 

と、以上数日かけて書いていたら、今回のアメリカ大統領選挙に関して、あるウエブマガジンのエッセイの下書き依頼が来ました。以前このブログを読んでくださっている方から、ある雑誌のコラムの文体や意見に見覚えがあるのでもしかして?と聞かれてしまったので、カミングアウトしましたが、私は、日本のメディアや知識人があたかも自分でマンハッタンで見聞きしたかのように書く経済文化記事を提供しています。いわゆるゴーストライター業です。今回お願いされているテーマは、大統領選挙結果の在米日本人への影響や日本社会への影響、そして2国間の外交の展望。外交一つとっても安全保障から、核問題、科学技術、関税貿易、地政学的アプローチとあまりに広すぎて、依頼者の無経験ぶりを示す雑な依頼だと思い保留してます(その割に期限だけはタイトな、下請け発注的な居丈高な態度は日本のメディア人らしい)。まあフワッとした媒体用の記事なので、それほどデータ検証や分析は求められてないんでしょうけど。日本語で入ってくる大統領選挙関連の情報には誤りも多いのも事実なので、私なりに貢献したいとは思っています。以前、ある媒体に提供してボツになった「マンハッタンの大人遊びスポット」の記事をこのブログで披露させていただきましたが、大統領選挙のコラムも何か進展があったら裏話を共有させていただきます。

 

 

ということで、こうして書いて想いを吐き出すことで癒しになったように思えます。週末はそれこそマンハッタンのピアノ・バーにでも行ってみようかとも思います。長くなりましたが、お読みいただきありがとうございます。