友人ゲイカップルが投稿したソーシャルメディアの投稿がきっかけで、数年ぶりに連絡してきた日本人キラキラゲイXさん。どうやら、アメリカに移住後は思い描いていたようなゲイ生活が送れていないようです。日本にいたときは私など眼中になかったのに、今度ぜひ会いましょうとお誘いをいただきました。

自分が誘ってきてるのに、場所とか時間とか注文が多くてかったるいので、zoom会議にしましょうと逆提案しました。その後紆余曲折を経て、数日前ついにzoomでXさんとのリモート再会が実現しました。画面の背景から映る様子はマンハッタン在住ではないような感じ。郊外の某都市名だけ言ってましたが、電車でマンハッタンから1時間半くらいで、さらに週末は通勤電車がマンハッタン直通してないようなところ。別に今更マウント返ししたいわけではないけれど、マンハッタンに住みそうな雰囲気で日本を出てきた手前、プライド高いからどこに住んでるかとか積極的には発信してなかったのでしょうかね。予想通りあちらは私にどこに住んでるんですか?と聞いてきましたが、こちらの話は極力せずに、Xさんに会話の主導権を渡し聞き役に徹しました。こういう話術テクニック、詮索好きな日本人の知り合い程度の人達の「結婚は?お子様は?」の質問攻勢を避けるために身に付けてきたのでお手の物です。


聞くところ、会社の駐在員としてアメリカに渡ってきたものの、勤務する場所は、マンハッタンからは遠いし、今は車も持っていないので、ゲイ活動はアプリのみ、というような愚痴でした。日本にいるときに知り合って今はこちらにいるアメリカ人ゲイ友もは何人かいるみたいだけど、あまりあてにならないようです。基本アメリカ人って、生涯の友みたいな契りは期待できないですし、いい男はこの歳になると皆パートナー持ちになります。また東京にいる時は「ガイジン効果」で輝いて見えても、自国に戻ると結構フツーのおっさんだったりします。(普通のアメリカ人おっさんの代表格である旦那Dも、東京駐在の数年間が人生最大のモテ期だったと証言してます。)

 

Xさんのフェイスブック見返したら、赴任前に盛大にイケメン風ゲイたちから送別会開いてもらっている写真とか、日系航空会社のビジネスクラスに乗って意気揚々と赴任してきた時の写真が満載でしたが、その日あたりを境に、投稿がめっきり減っています。アメリカ人の友人たちが頼りにならないので、こちらの生活長い日本人を辿っているうちに、私にも白羽の矢が立った様子。週末何してるのとか、どんな仲間とつるんでるのとか、色々聞いてきて、多分手を差し伸べて欲しいんだろうな〜と感じつつも、適当にスルー。Xさんがもう少しまともな人だったら、Dと私が他のゲイ友に会うときに誘ってあげたりもできるんです。でもうちの旦那や友達を見下しそうなのが怖いです。それにそもそも私はどっぷり現地化して地味〜な生活を送っていて、夜のマンハッタンのゲイシーンには行かないし、Xさんのお目にかなうような華やかなタイプの友人たちと毎週パーティやってるわけではありません。結局「ニューヨークのゲイも色々なので、自分の興味分野でグーグルすると色々ゲイイベント出てきますよ〜」など無難な応答しておきました。思いっきり落胆してましたけどね。それに、これはゲイだけじゃなく移住者皆に共通することですが、異国に来てすぐに、現地で自分が望むような人間関係を構築できるわけではないことを知っておくことも大切ですよね。多分こういう寂しい時って1年ぐらいは続くと思います。その間に努力して友達作って、自分が属するコミュニティーを見つけて居心地良くできる人は移住成功します。一方勇んで永住覚悟とか言って来た人でも、それができない人は諦めて帰国します。アメリカ生活も長くなると、そうして帰っていった人を何人も見てきました。

 

Xさんはこういうグループに入りたんだと思います

 

結局、予想通り話は全く盛り上がらずzoomの会議の終了時間とともにさよなら。印象的だったのは「アメリカにいる間に結婚して子供を持ちたい」と壮大な計画を語っていたことです。彼氏もいないのに、結婚してさらには子供を持つプランとは気が遠くなるような気がしますが、それがXさんの目指す理想のゲイ像なのだと思いました。このブログでも書いたことのある、俳優マット・ボマーのようなタイプの旦那と最低子供2人持つのが目標のようです。どうぞご勝手にですが、マット・ボマーみたいな旦那を見つけるのはとても難しいでしょう。Xさんは決してブサイクではないと思いますし、日本ではチヤホヤされてモテてたんでしょうけど、アメリカでモテるタイプではないんです。というか、自分を蔑むようで忍び難いのですが残念ながらアジア人自体あまりモテないのです。Xさんがその昔私に吐いた暴言「モテないと思うからデブかハゲをターゲットにしたら?」と言ってやりたいくらいでした。

 

写真はイメージです(過去投稿から)

 

Xさんの文句を散々吐き出してしまいましたが、Xさんみたいに形だったり他人との比較から入るとニューヨークではゲイとしてなかなか幸せになれないと思います。ゲイの世界でも、アメリカの一般社会同様に、白人がカースト上位にいます。特にゲイの中では、顔が良くて、売れるようないいカラダしていて、収入が高い白人男がその頂点。そういう男は自分と似たような男が好きなので、アジア人がそこに割り込んでいくのは至難の業です。ジャニーズみたいな系統がアメリカでもモテると勘違いしている日本人がたまにいますが、そういう系はフェチなゲイ以外からはモテません、特にゲイ界隈では。また日本人男性に多いフェミニンな感じの髪型もモテない要素です。よく人種差別という人がいますが、私はそうは思いません。同性愛者が異性に性的関心を抱けないのと同じで、ゲイの中でも自分のタイプ外には性的に惹かれない人が多いので、それは人種差別とは違うのです。ゲイの中では男らしさがモテ要素なので、小柄な人が多いアジア人は元々不利なのですが体鍛えてガタイが良い人は結構食い込んでいる気がします。それと、友好関係を広めるには英語でガンガンコミュニケーションできることも必須です。

 

知人のアジア人インフルエンサー(右端)のSNS

 

ちなみに、アジア人の男だけに性的興味を示す白人ゲイもいて、彼らを「ライスクイーン(米好き)」と呼びます。元々少数派で、さらにその中でイケメンとなると希少価値です。当然、恋愛マーケット内での彼らの相対的価値は上がり、その希少種をめぐってアジア人ゲイ同士で競争が始まります。私の知ってる50歳くらいの白人ライスクィーンは今も現役バリバリで常に2-3股くらいかけてます。若い時はジャパニーズからコリアン、チャイニーズ、タイ、フィリピーノ、カンボジア、、とまるで食事を選ぶかのような感じヤリ友選んでたと豪語してて、ドン引きしたことはありますが。ぶっちゃけいうと、イケおじ風でガタイもいいし、彼と寝たいと思わせるセクシーさはありますが、彼には若いアジア人の子たちが寄っていくので私やXさんなど中年は眼中にないでしょう。Xさんみたいな人は、多分こういう現地男を通してアジア人を取り巻くニューヨーク界隈のゲイコミュニティーの洗礼を受けることになるかもしれません。

 

話はとんでもない方向に向かってしまいましたが、それでも私のような平凡なゲイでもニューヨークで比較的幸せに生活を送っています。それは、ゲイの中にも色々なコミュニティーが存在し、また日本よりもずっと価値観が多様化しているからです。確かに華やかな場面では白人男性を頂点とした見た目カーストは厳然と存在するのは事実ですし、マット・ボマーをはじめとしたゲイセレブのように子供を2−3人持つことに憧れる人もいますが、LGBTがメインストリームしていく中で、幸せを感じる価値観や尺度もいろいろなので、自分にとって何が幸せなのかという軸を確立をすれば、見た目や外から見たイメージ、そして所有物に惑わされる生活をしなくて済むのです。

 

こういう感じの男がニューヨークのゲイナイトシーンの頂点に君臨

 

航空会社のプレミアシートのゲイ向け広告。モデルは正統派イケメン。明確なターゲット戦略ですね

 

私は社会学者ではないので、うまく伝えれれないもどかしさがありますが、Xさんが当地でゲイとして幸せを掴みたいと思うなら、選択肢は2つで、一つは自分が属したいコミュニティーでのモテ筋に自分を似せていくことが必要です。Xさんが自分がいるべきと思う「イケてる」ゲイのカテゴリーでは白人優位でしょうが、自分の人種は変えられないので、その中で孤軍奮闘して頑張ってるアジア人がどんな感じなのか研究して自分もそれに近づくことが必要です。上にも書きましたが、男らしい容姿が必須。ユーモアとか頭の良さも必要。意外にも自分の努力で身につけられるものです。でもその途上でメンタルになったりしないように気をつけてもらいたいです。そして、もう一つは価値観を転換して、容姿や身につけてるブランドとかで人をジャッジしないことです。今までそういう尺度で40年以上生きてきた人には酷な話かもしれませんが、Xさんにとって、今回のアメリカ赴任はそういう意味で価値観の転換を図る人生最後のチャンスかもしれません。

 

最後に、Xさんが羨望しているようなゲイカップル・一家の写真を過去投稿から集めてみました。あんなに意地悪されたのに、彼の今後待ち受けるであろう葛藤を予想するに、同情はもとより、応援したい気分さえ芽生えています。この感覚、武士の情けなんでしょうか。彼の健闘を祈りたいものです。そしていつか「ニューヨークセレブ男性と同性婚した日本人ゲイXさん」とメディアで取り上げられる日を心待ちにしています。

 

こちらは本物のマット・ボマー家族。Xさんが理想とするゲイの形らしい

 

リッキー・マーティン夫夫と子ら。マット・ボマーの子供らと同じ顔に見えるのは気のせい?

 

アメリカ人ではないけれど、このカップルもゲイセレブ