前回のブログで、ニューアーク空港の各ターミナルを結ぶエアトレインが故障し車中に閉じ込められた話をしました。
その時、機械の復旧のために来たエンジニアのおじさんと、狭い車内に30分近く2人だけになったのですが、その時、心温まるささやかな交流がありました。
私が乗ってた無人運転のエアトレインが急停止、微動だにしなくなりました。最初に若い担当者がやってきたものの直せなかったのか、次にもっとベテラン風のエンジニアがやって来ました。若い方の人は結構恭しく「急いでるのにすみませんね〜」みたいな感じで去っていきましたが、代わりにやってきたベテランエンジニアは一切無言で黙々と作業を始めます。私はバッテリー🪫が気になっていたので、スマホいじりはやめて、手持ち無沙汰に彼の作業を眺めていました。
10分を過ぎた頃から、どこかでに無線で話しつつも、なんとなく怒っている雰囲気。そしたら、彼、自分のスマホで音楽をかけ始めました。私、公衆で他人のスマホ・スピーカーの音楽を聞かされるのあまり好きではないので、少しイラッとしたのですが、流れてくる音楽を聞いていると、クラシック音楽でした。主にピアノ。多分ショパン。有名なノクターンが聞こえてきたところで、私も一緒に聞き入ることにしました。ショパンばかり。
空港施設内で故障で停まったエアトレイン車内で、聴くショパン。黙々と作業を続けてるおじさん。(いきなり俗っぽくなるけど)割と好みのタイプかも。筋肉質でガチむち系、元イケメン風で今もその雰囲気が残る燻し銀。ゲイの世界ではまだまだ結構需要がありそうなおじさんでした。指輪してるからきっと幸せな結婚して老後を楽しみにしてるのかな〜、ゲイではないだろうな〜、などと妄想に包まれて、彼のスマホから流れてくるショパン聞いてました。
そのうち、故障修繕の目処がついたのか、それまで無言だったのに「もう少しです」と背中を向けたまま私に言ってきました。それで私からも会話の糸口ができました。
- 私「ありがとう。ずっとこのままかと思いました」
- 彼「もう少し。書類手続き終わって、それでGo」
- 私「ところでショパン、いいですね。好きなんですか?」
- 彼「そう。よく分かりましたね。私の妻は元ピアニストなんで、何百回と聞いています。」
- 私「へえ、奥さんが弾いてる録音?」
- 彼「(笑)違うよ。でも、若い頃からずっと2人ともショパンが好きなんだ」
- 私「こんなエアトレインの車内でショパン聴けるとは思いませんでした」
- 彼「この仕事はストレスがかかるから、何かリラックスが必要なんだよ。俺はタバコも吸わないし、コーヒーも飲まないから」
- 私「Wonderful!(素晴らしいと思います)、もしかしてポーランドの出身ですか?」
- 彼「なんで?」
- 私「若い頃からショパンが好きって、アメリカ人にしては珍しいなと思ったから」
- 彼「妻も私もチェコ出身。だからニアミスだね。なんでポーランドだと思ったの?」
- 私「大学の時の留学生にワルシャワ出身の友人がいて、さっきの曲を弾いてくれたんです。もう20年以上前だけど。でもそれからはずっとショパンといえばポーランドが連想されます。」
と、話していたら、彼は無線で呼ばれ、ついにエアトレインも動き出しました。彼は前方安全確認しなくれはならず、スマホの音楽も止めて仕事モードに戻ります。その間も、「飛行機大丈夫なの?」と聞いてくれたりと、ささやかな会話がありました。こんな経験もないから写真撮っていい?と聞いたら「どうぞご自由に」とオープンでした。多分50代後半から60代前半だろうけど、なんかかっこよくて可愛いおじさんでした。偏見になってしまうけど、こういう現場で働くおじさんは、彼がいうようにタバコとかカフェインでストレスを発散してる人が多い印象。でも彼からはなんとなく違った雰囲気を感じました。チェコから移民してきた一世代だろうか。奥さんは元ピアニストで、、、彼はもしかしたら、将来を嘱望されたロケットプロジェクトのエンジニアだったけど、共産主義から逃げるようにしてアメリカにやってきた、、みたいなストーリーを想像したります。
また、上の会話に出てきた、私の学生時代、ショパンのノクターンを披露してくれたのは、ポーランドからの交換留学生。それでショパンのノクターンシリーズは今も大好きなのです。若い頃に聞いて印象に残った音楽は後々人生のお供になりますよね。
ゲイブログのお約束だけど、その交換留学生、当時もゲイ的好奇心満々で彼を見てました。東欧出身の学生と聞いて連想するような、青い瞳で金髪サラサラのイケメンというよりは、丸顔でガッチリぽっちゃり系の熊さん系でした。風貌に似合わないピアノの腕前が印象的で、お友達になりたかったけれど、あまり機会もなく記憶の彼方に。
その後一歳音信もなく今何してるかわからないけれど、今目の前にいるチェコ系のエンジニアのおじさんくらいの年齢になっているはず。同じ西スラブ民族なので、なんとなく2人が同一人物かのような錯覚に陥りながら、色々妄想し駅に着くのを待っていました。
やっと次の駅に着いたら、そこで運転は打ち切りになりました。エンジニアのおじさんにお礼の一つも言いたかったけれど、駅で待ってた別の職員がすぐにドアが開くと同時に乗ってきて話を始めたので、彼の後ろ姿を見ながら1時間近く閉じ込められたエアトレインを後にしました。このニューアーク空港の貧弱なエアトレインはいつになったら改善されるのだろうと思っていたら、35億ドルの予算がついてプロジェクトが始まるようです。
35億ドルかけて改修するそうです
と、そんなこんなで、ニューアーク空港のエアトレインの中の出来事でした。ショパンの音楽を通じて、見知らぬおじさんと何気ない会話を楽しみ、30年も前に私にショパンのピアノの美しさを教えてくれた留学生の顔がぼんやり浮かんできて、なんとなく温かい気分になった午後でした。
音楽は時の河を越えるのだなとしみじみ。
この曲も「時の河を越えて」生稲議員がセンターだった




































