並行時空の世界!? | SFショートショート集

SFショートショート集

SFショート作品それぞれのエピソードに関連性はありません。未来社会に対するブラックユーモア、警告と解釈していただいたりと、読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。長編小説にも挑戦しています。その他のテーマもよろしく!!

本編は「次元ポータル」・・・続編です。

 

 サリームたちは次々と並行時空に吸い込まれていった。アーチの向こうに見えていた穏やかに晴れた緑あふれる景色が広がる大地はどこまでも快晴であった。異世界とは思えないまるで地球のどこか別の場所にテレポートしたと勘違いするほどの光景であった。


 

 この世界とは別に、もう1つの世界が存在する・・・と言われているのがパラレルワールドだ。ビッグバンの過程において、この宇宙以外にも他の宇宙が無数に泡のように生じている。多世界解釈においては、パラレルワールドを我々が観測することは不可能でありその存在を否定することも肯定することも出来ないとされている。

 インフレーション宇宙論の予測の1つに、インフレーションはずっと続いており、無数の宇宙を泡のように無限に作り出すというものがある。泡宇宙の性質はどれも同じであるとは限らない。我々の宇宙とは物理定数が異なる宇宙もあれば、我々の宇宙にそっくりな宇宙もあるかもしれない。いずれにせよ、これらは我々が直接観測できる領域を超えたところにあると言われていた。


 

 サリームと一緒に吸い込まれてしまったサラが、辺りを見回して、

「みんな大丈夫かい!・・・まるで地球だね!普通に呼吸できる」

カーラは意識が戻ると、

「大丈夫みたい。ここが地球じゃないなら何処なの?」

 すでに二人は化身を解いていた。それを見たスーパーツインズも防護スーツから本来のスーパーツインズの姿に戻った。二人の後方では、スカイ・フォー、ファンタスティック・スリーたちは全員立ち上がってお互いの無事を確かめ合っていた。


 

 サラとニナにはここが異世界だとわかっていた。以前マリコフの下、サーク第5惑星での核の転送に待ったをかけてきた介入者数名をマリコフが次元ポータルに送り込んだ時のことだ。状況はよく似ていた。マリコフの鞭の一振りで介入者たちは次元ポータルに吸い込まれてしまったのである。マリコフがどのようにしてこの次元ポータルを手に入れたのかは知らない。現在、この銀河系宇宙のテクノロジーで知りえる限りでは実現されていない技術だ。つまるところマリコフの専売特許のようなものだ。銀河宇宙艦隊でさえマリコフの次元ポータルには恐れをなしている。そして、このポータルに入って戻ってきた者はいないと言われている。周囲に自由に亜空間断層を発生させることが可能なテクノロジーが転送ポータルだ。これによって時空の裂け目を作ることはできる。しかし、これは転送直前の一瞬だけである。この時空の裂け目のひとつが並行時空の異世界につながると指摘する研究者たちもいるが確認されたわけではない。

 

 

 ラウロが遠方に向けて指さした。 

「見てみろ!・・・」

ラウロが指さした方角をサリームメンバーは凝視した。緑の生い茂る樹木の隙間のその先にはドームが聳え立っていたのだ。日の光を反射して眩しく輝いていた。よく見るとドームは一つだけではなかった。いくつかのドームが立ち上がっていた。末広がりの足場が半球状のドームを支えていた。まさにドームが立ち上がっているように見える。地球や月、火星上で見るドーム都市とは形状が明らかに違っていた。

 デビットが

「一番近いドームまでテレポートで行ってみないか?とにかくここから脱出する手がかりを見つけないと・・・」


 

「何処へ脱出するんですか?」

突然頭の中で声が聞こえた。テレパスである。サリームたちは周辺を見渡し声の主を探した。


 

 ドームを背にした方角に一人の人物が立っていた。


 


 

…続く