ルーキー | SFショートショート集

SFショートショート集

SFショート作品それぞれのエピソードに関連性はありません。未来社会に対するブラックユーモア、警告と解釈していただいたりと、読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。長編小説にも挑戦しています。その他のテーマもよろしく!!

本編は「特異体質」・・・続編です。

 

 シャリーの返信を聞いていたルスラン博士はつぶやいた。

「変身能力といえば・・・確かヒュームのテクノロジーにも資料があった。そのテクノロジーは生身の人間に使うものとは違う。あくまでも人工の生命体に搭載するものだったと思う。詳しく調べてみよう」

 サリームメンバーが一斉にルスラン博士に注目した。

ウィン博士が、

「カーラとメグに変身したラクサム人が悪さをするとややこしくなるな。これからはカーラとメグをまとめて”スーパーツインズ”と呼ぶことにしたいが・・・皆、良いかな?」

博士はメンバーを見渡して意見を求めた。

デビットが

「大賛成!スカイ・フォーとスーパーツインズ・・・響きがいいね!カーラとメグさんも賛成してくれるよね?」

メグが、

「もちろんよ、スーパーツインズいいわね!」

ウィン博士は本題に入った。

「それはさておき一つ厄介な問題が起きそうだな。スーパーツインズに変身したラクサム人が何をしでかすかだ。本物と見分けがつかないぞ。何か事件が起きたときのために、二人には皆の目が届くところにいてもらう必要がありそうだな。偽物から二人を守るためでもある。それから、スーパーツインズ にお願いしたいことがある。いつでもパワーを発揮できるように常にテクノスーツを纏っていてほしい。これは私の推測だが・・・」

 

 その後、3日間は何事もなかったかのように思われた。

 

 ウィン博士が突然、メンバーを招集した。

「皆に集まってもらったのはほかでもない、ヒュームのテクノロジーについてだ」

そして、ルスラン博士はメンバーの表情をうかがいながら、少し間をおいて、

「人工生命体に搭載できる変身パワーに関する情報だ。私が調べたところによると、サイボーグに搭載可能と判断した」

ラウロが

「クアンタムにはムリなんだね?」

「ムリかどうかはまだ分からないが、少なくともサイボーグに比べて量子コンピューターをベースとしたクアンタムはサイボーグよりも複雑なんだよ。それに、自我意識にどのような影響が出るのか出ないのか分からない。そもそもヒュームのテクノロジーにクアンタムは含まれていない。まずはサイボーグを想定して進めようと思うのだが・・・」

ミニョンが

「メンバーにサイボーグなんていませんよ」

ルスラン博士はラウロを一瞥して、

「ラウロには兄がいることは知っていると思うが・・・」

博士はスクール・ドローンの事故で、二人の我が子が予想外の人生を歩むことになった経緯を語った。

クリスチーヌが、

「お兄さんがレスキューサイボーグとは思ってもみなかったです。ずっとユリウスにいたと思っていました。知らなくてごめんなさい」

「いや、いいんだ・・・すでにサイモンには事情を伝えてある。快く承諾してくれた。さらにもうひとり仲間が増えるかもしれない」

「えっ・・・」

一同は顔を見合わせた。

「リリーというお嬢さんだが、サイモンの同僚だよ」

 

 

 サイモンとリリーは今ではレスキューサイボーグの中軸を担う程に成長していた。リリーは人間として生きていた時は、筋萎縮性側索硬化症という病気を患っていた。医学が発達した今日でも、筋萎縮性側索硬化症の原因はまだはっきりと分かっていない。進行を遅らせる効果が期待できる内服薬や点滴薬はあるが、いまだに根治的治療法はない。推奨されている唯一の方法はサイボーグへの転身だった。海中都市にサイモンが遊びに行った時、病気でうつ状態になっていたリリーを諭してサイボーグへの道を勧めたのだ。その時からリリーはレスキューサイボーグとしてサイモンとともに働いていた。

 ルスラン博士はサイモンにヒュームのテクノロジーについての話を聞かせたところ、リリーも一緒ならという条件つきで承諾してくれたのである。

 

 実験準備が最終段階になったとき、サイモンとリリーははるばる日本からやって来た。

 

 ルスラン博士は二人をメンバーに紹介した。

「こちらがリリー・セトウチ

 黒髪の小柄な女性だ・・・、もちろん今日はレスキューボディではない。人間として生きていた時のイメージを再現した休日用ボディである。

 

 二人は実験が成功した暁にはサリームの新メンバーとして加わる手筈が整っていた。

 

 そしてその頃、ラクサム人のサラとニナは核ミサイルを手中に収めようと計画を着々と実行していた。短時間で発射準備が整うミサイルを多数蓄えた核ミサイルの配備施設を持つ某国に潜入しようとしていたのである。核ミサイルとは空中を動力飛行して核攻撃を加える無人兵器だ。誘導装置があればミサイルと呼ばれ、無ければロケット弾と呼ばれる。大気圏外を弾道飛行する弾道ミサイルと、大気圏内を飛行する有翼の巡航ミサイルに大きく分けられる。ミサイル技術の拡散とともに新しい弾道ミサイルが各国で開発され、それらの国々の中には核兵器の開発に成功した国もある。こうした国々では核ミサイルが運用されていた。

 

 マリコフは変身することでスーパーツインズが持っているパワー、タイプツーのテレポートを使用すれば簡単に核ミサイルを地球の周回軌道に待機させたマリコフの輸送船に転送できることを知った。スーパーツインズに変身する目的はこれだったのである。マリコフはリビア危機の際に、スーパーツインズが核ミサイルを安全に転送処理をした経緯をすでに把握していたのだ。

 

…続く