
ども!
何回もくどい様に言うけれど、はっきり言ってビジネス音痴「なつむぎ」です。
ボクはナチュラル・ボーン・ビジネス音痴に加えて、さらに確信犯的だからね。そう、ワザと音程を外す。
と、そんな風にうそぶきながら数十年仕事をして参りました。
最近、ちょっとはビジネスについて勉強しなくちゃならない事情があって、えぇ、いろいろ事情があるんだな。でね、この1年間いろんな講演なんかを聞いたわけです。ビジネス系の。
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ついこの前のこと……
2時間半の講演の最初の1時間半をなんとか我慢して聞いていたんだけど、どうにもこうにもとうとう我慢ができなくなって、机を(心の中で)蹴り倒して、「あ~、つまんねぇ、つまんねぇ」と(心の中で)叫んで、会場を飛び出した講演会があったのね。
講師は「ヒット商品企画研究所所長(仮名)」ってな肩書きを持った人物で、それを知った時点で既にボクの妖怪アンテナは立ちっぱなしだったよ。
ボクの妖怪アンテナは「うさん臭さ」にはめっぽう敏感なんだ。
講演が始まると彼は、「皆さん、きっと仕事でお疲れで頭の回転が悪くなっているでしょうから、まずは発想力を発揮できるように頭を動かしてみましょう」と言って、こんなエピソードを話し出したんだ。
あっ、彼の話は「要領を得ない」上に「長くて」「つまらない」から、だから要約しちゃうね。
1 現在の米軍の最大の敵とはいったい何だと思いますか? と聴衆に問いかける。
2 「アルカイダ」「中国」「増大する軍事費」とかとか、聴衆から答えが出る。
3 なるほどそれもありますね。でも、それと同じ理由からディズニーランドのイッツアスモールワールドが長期間閉鎖されて改修工事をしたという事実があるんですよ。と説明を加え、さて皆さんに答えがわかりますかな? 的なオーラを出しまくる。
4 誰も答えられずにいる。というより「さっさと結論を言えよ!」ってなムードが色濃くなった頃、「それは肥満です」との種明かし。太った人間が多くなったせいで、イッツアスモールワールドのゴンドラが水路の底をする様になったんだそうだ。
5 「このように意外なところで物事は繋がっているもの。そういうことにアンテナを張ってないとビジネスでは勝ち残れないのです」
なぜ?
あるいはこんなエピソードも。
1 皆さんも良くご存じの磯野波平の年齢は、いくつだと思いますか? と聴衆に問いかける。
2 60歳だ、70歳だ、なんて意見の中で、さざえさんマニアの聴衆から54歳との正解が出る。
3 そうです。正解です。でも皆さん。皆さんの中にはその位の年齢の方もいらっしゃると見受けますが、波平の方が老けてますよね。どうしてだと思いますか? と畳み込む。
4 さざえさんが描かれた当時の50代ってのは今よりも老けてたんじゃないの? 禿げてるからじゃないの? なんて聴衆がざわざわしている中……
5 「それはつまり、常にビジネスマインドを持って頭を動かしてないから、前頭葉が萎縮していることが考えられます。ビジネスと大脳生理学は、とても関係が深いんです」
どして?
ま、こんなエピソードを延々と語られたワケですな。
酒の席でのプチ知識みたいなエピソードの合間に、「ビジネス心理学」が大切だとか、「自分力」をつけなさいだとか、「メディアトレーニング」が必要だとか。
ボクは、すっごくまいったよ。きっとすごくうんざりとした顔をしてたんだと思う。
芸がヘタだから客いじりに走っちゃう芸人みたいに、彼はやたらと聴衆に質問をするんだけど、ボクの前は通り過ぎて行ったもの。
きっとボクはこんな顔をしていた。

そんなこんなで、我慢すること1時間半。
ちょっとした頭の体操をするハズだったのに、講演時間の6割も与太話をしたあげくに、休憩の前に彼はこう言ったのね。
「人間は最初の3分で印象を持たれる」
だから、いかにしたら好印象を持たれるか、自分の言葉に説得力があるかについて、常に意識して自分を磨いていなくてはならない、と。
ボクはさぁ、3分どころか90分も一生懸命聞いていたけどいい印象は持てなかった。
だからこれは、もう帰ってもいいよって言われた気がしたんだよね。
で、机を(心の中で)蹴り倒して、「あ~、つまんねぇ、つまんねぇ」と(心の中で)叫んで、出てきちゃったってワケ。
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自分は音痴であったとしても、歌が嫌いじゃないんだ。
上手に歌える人のことは尊敬してるよ。それに羨ましいって思う。
つまり、決してビジネスをバカにしているワケじゃない。ビジネスに長けた人の長所には学ばなくちゃならないって思ってるんだ。
でも、言わせろよな!
つまらないエピソードと精神論の安っぽい組み合わせでビジネスを語るのはやめて欲しい。
ボクは頑張るからさぁ。たとえ音痴でも人前で歌うように努力するからさぁ。だから……
どうか、ビジネス嫌いにさせないで!

----- おやおや旦那さま、またご立腹でございますな。
あぁ、セバスチャン。この歳になっても、まだ世の中は理解できない価値観で満ちあふれているよ。
----- まぁそうカリカリなさらずに。
旦那さまは、ブルボン家の末裔として苦労なくお育ちになったのでございますよ。だから、苦労して成功した方々が自分の苦労こそが成功の源だと思い込む、その心の動きに少し鈍感なのでございますよ。
いろいろ役に立つことを教えられた講演もございましたでしょうに。それなのに1回気に入らない講義にあたったからと言って、ビジネス嫌いにさせないで! は、子供っぽ過ぎます。美味しいと言われる店に入っても、時にははずれの料理もあるのでございます。
あぁ、いつもの事だけど…… やっぱり、セバスチャンの言う通りだな。
----- ところで、旦那さまは金返せと要求したんでございますか?
いや、そんな要求はしないさ。
----- おや、怒った割には遠慮深いのでございますね。
当然だろ? セバスチャン。
もともと無料の講演だったんだから。