と、思わずタイトルを繰り返してしまいました。
もうそろそろ、自分が「じじぃ」と呼ばれてもいい歳の「なつむぎ」です。
今日の午前中、計画停電になる前に振り込みを終えてしまおうといつものATMコーナーに行ってみると、節電のため店舗外のATMは稼働停止とのことで、わざわざ待機している行員の方に丁寧にお詫びを言われてしまった。
いえいえ、大丈夫。だったら店舗の方に行きますよ。と、歩いて3分程の店舗に行って中のATMの列に並んでいるとね……
ボクの10人ほど前に並んでいる、若いころからさんざんいい飯を食って来たのか、体格が良くて声が太くてでかいボクより20歳くらい上の男が、列に並ぶ客に応対している若い女性行員に対して文句を付けていた。
20代半ばの女性行員は、ただただ丁寧に謝っていてね。なんか可愛そうだったな。
その後、彼女は他の客の応対のために一度彼から離れたんだけど、その男(これから軽蔑の意味を込めて「ソイツ」と呼ぶ)は再び彼女を呼びつけまた文句を言い始めたんだ。
ソイツは要するに、ATMが混んでいるのが不満らしくて、
----- こういう事態になるのは想定できただろう。だったら何故、対応策を取らない。市民が利用しているってことを分かっているのか?
そんな事を言うために孫ほど年齢の離れた女性を呼びつけて、
相手が謝ることしか出来ないのを良いことにますます増長して文句をつけてる。
イラっと来たね。
あんた何言ってんの? って言ってやろうと思ったね。
でもさ、そんなこと言ったらその女性行員は対応にますます苦慮することになるだろうって思って、
グッと腹に飲み込んだよ。
あぁ、腹が立った。
*****
----- おや。旦那さま、随分ご立腹でございますね。
セバスチャンじゃないか。いったい、ここしばらくどこに行ってたんだ。セバスチャンが居ないおかげで、確定申告を全部ボクがやらなくちゃならなかったじゃないか。
----- 八つ当たりはご勘弁下さいまし。お忘れですか? 旦那さまがヨーロッパから帰国されたら、私もしばらく休暇を取らせていただくことになってましたでしょ? セバスチャンも、たまには郷里に戻って母親に会いとうございすよ。
それより、ご立腹の原因はなんなのでございますか?
上に書いた通りだよ。随分と身勝手なヤツも居るんだなって思ってね。
年齢を重ねるにしたがって、より穏やかでより知的になるものだと、ボクは思っていたんだけどな。
----- 人それぞれでございますな。その方は、それでも若い頃よりは穏やかになったという可能性もございますよ。
なにがその方だよ。あんなじじぃはソイツで十分!
----- それにしても旦那さま。よく実際に「ソイツ」に文句を言わずに腹に飲み込みましたね。若い頃の旦那さまだったら、言ってしまっていましたでしょうに。成長なされたのですね。
まぁな。そりゃ、若い頃よりは穏やかになったさ。
----- で、その後「ソイツ」は何かしでかしましたので?
女性行員がちゃんと謝っているのに、「ただ、謝るだけで対応しないならダメだろ」とぬかした。
----- それで?
女性行員が「お客様の大切なご意見として、本社の方にご報告させていただきます。貴重なご意見ありがとうございました」って言うと、してやったり顔で「ちゃんとそうしなさいよ」とぬかしおった。
----- それから?
満足そうに列に並んで、用事を済まして帰った。
----- その後は?
ボクが銀行を出てみると、ソイツは値段の張りそうなカメラで街の写真を撮りながら散歩さ。
----- ほう。
ついまた、イラっと来てさ。こう言ったよ。「くたばれ、じじぃ!」ってね。
----- 心の中ででございますか?
いや、声に出してだ。
----- おや、まぁ。で「ソイツ」はどんな反応を?
何の反応も示してなかったな。聞こえなかったようだな。耳が遠いんだな。だから大声なんだろう。
----- なるほどそうでございましたか。旦那さまのイライラがそれで収まったのなら、まぁ良いとしましょう。でも少々子供じみていらっしゃいましたね。まだまだ、成長の余地がございますな。
そうかな。うん、確かにセバスチャンの言う通りだな。
人間、年を重ねたからって言って、そんな簡単に人格者になれるってワケじゃないんだな。

声に出して言ったのはホントだよ。
でも実は、かなり小声で言った。
セバスチャンには内緒。