
寝る時の格好ですか?
仰向きか、横向きです。
あ、あぁ、寝るときに着る服ですか?
特にセクシーな服は着てませんけど、なにか?
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ボクの場合、
上は、Tシャツ。下は、短パン(夏季)かスウェット(冬季)。
もう、このスタイルで、30年は暮らしているかな。
パジャマだとか何だとか、寝るとき用の服を着ることはなかった。中学生の時以来ずっとね。
ボクのまわりは、男女を問わずこんな感じだったから、
女性が寝るときに着る(と言われていた)ネグリジェってのに、
いまひとつリアリティを感じられない。
今でも、ネグリジェってあるのだろうか。

こういうヤツ。
でも、過去に1度だけ、ネグリジェを着た女性が、同じ部屋に居たことがあった。
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それは、ボクがまだ若くてイケメン(ぷっ)だった学生時代のある日のこと。
ボクはいつもの通り家庭教師のバイトのためにJ君の家に行ったんだ。
家のチャイムを鳴らすと、いつもはJ君のお母さんが出てくるのだけれど、
その時はJ君が1人で出てきたんだよね。
あれ?お母さんはいないの?
ママは、電話中。
ってな感じで、2人で彼の部屋に入って、
じゃぁ今日はこの勉強をしようかって決めて教科書を開いて説明を始めた、
まさにその時...
大きな嗚咽と共にに階段を駆け上がる音が聞こえる。
あ、J君の部屋は2階にあるのね。
そして、部屋の扉をためらわず開ける音の後にボクの目の前に現れたのは、
ネグリジェ姿のJ君のお母さんだった。
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J君のお母さん。
これが華やかで、キレイな人なんだよね。
もともと、芸能界に居た人だからね。
そのお母さんが、
ボクがJ君に教えている勉強机の横の、J君のベッドに腰をかけて、
ネグリジェ姿で声をあげて泣いている。
肩を揺らして泣いている。
理由は... まったく分からない。
どうする? 学生になりたてのボク。
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小声で、
「J君さ、お母さん大丈夫?どうする?」
「分からないよ、先生。何とかしてよ」
何かしらアクションを起こさなくちゃならない。
そういう緊迫感を、一瞬にして彼と共有したね。
そして、彼はまだ中学生。ボクは一応年上の大学生。
何かアクションを起こして、その場を正常な状態にしなくちゃいけない責任は、
ど~~~んとボクの肩にかかってるよね。やっぱり。
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で、あんなこんな経緯があって、なんとか事態が収拾した後、
(どういった経緯だかは、言わないけれどさ)
「先生、ごめん。ウチのママ激しいから」
って、J君に謝られたりしちゃったりして。
(ん? え、えっと...
そんなんより、お母さんのネグリジェ姿にドギマギしちゃって、こっちこそごめん)
という気持ちを隠して、
「人生にはいろいろあるさ。大人になれよ。来週までの宿題ちゃんとやっておけよ」
と、さわやかに言い残して帰るボク。
人生経験も、まだほとんど無かったも同然なのにな。
