
ボクは街が好きです。
ときどき自然の中で過ごすのは良いと思うけど、基本は街に暮らしたい。
街暮らしには街暮らしのストレスがあるかもしれないけれど、でも、街ゆえの安らぎもあると思う。
ボクが暮らしたい街は、どんな街かというと...
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その街には、港があって、川が流れてて、運河がめぐらされていて、
道は細く、複雑な迷路の様で、
そんな入り組んだ街路のあちこちに、
ひっそりと古本屋や、雑貨屋や、レストランが店を開いている。
そんな通りをさまよっていると、急に開けた広場に出くわすことがあって、
広場は陽にあふれ、子供たちの歓声につつまれていて、
広場に面する建物の窓からは洗濯物が差し出されている。
街で一番大きな広場には、鉄道の駅舎が面している。
そして駅に長距離列車が静かに到着すると、
トランクを持った旅人があふれ出す。
駅の裏には、安宿と、いかがわしいバーとがあって、
見たこともないフルーツを売る屋台の隣にある店の入り口近くには、
仏頂面や、笑い泣き顔の、厚化粧の女たちが座り込んでいる。
気がつくと、部屋の窓からは、夜風に乗ってどこか遠くから陽気な音楽が流れてきて、
夜が深まっても、街は全部眠ってしまってなくて、
ボクらと同じく、どこかでなにかが息づいていることがわかる。
夜が明けて、朝になり、港の方が騒がしくなってくるころ、
街のあちこちに隠れるように建っている小さな寺院が扉を開き、
鐘の音や、お香とささげものの花のにおいにむせかえる境内には、
静かに修行する僧侶たちがいて、そして参拝者が朝のお参りにやってくる。
寺院の隣では、たった今港から運ばれて来た魚や、
路地の奥の工房で作られた工芸品や、
色とりどりの服であふれた市場があって、
ボクはそんな市場の隣のカフェで、
1杯のお茶を飲みながら、これから始まる一日について思いをめぐらすことができる。
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ボクが理想とする街は、きっとどこかにある。
分散された形でかもしれないけどね。きっとどこかに。
そういう街に、ボクは暮らして行きたいです。
