
ボクの部屋がキレイか汚いかぶっちゃけちゃう前に、友人のS君の部屋のこと。
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S君は学生時代、東京の文京区のアパートに住んでいました。
彼のアパートは木造の2階建てで、今となっては懐かしい、クラシックなたたずまいでした。
うらびれた路地から彼のアパートの玄関までは、伸びたら伸び放題の木々に囲まれていて、
蜘蛛やら、蚊やら、なんやらかんやらの虫がたくさん生息していて、
都会育ちのボクには、サファリパークのような場所でした。
玄関の前には、ポリ袋にいっぱいのゴミが、うずたかく詰まれています。
かすかに異臭がしますが、まぁ、10分もすれば慣れる程度のものです。
S君は3年間もそこに住んでいるので、むしろ懐かしいと、そのにおいのことを言っていました。
さて、アパートの中ですが、
何年も磨かれたことがない床。
何年も拭かれたことのないガラス窓。
何年も払われたことのない埃。
彼と同じアパートに入居した北海道出身の学生は、
すばやく動く、黒くて扁平な昆虫を見つけて、
「東京にも自然があるんだなぁ」と感動してたということです。
まぁ、人間の手が極力加わっていないという意味では、今で言うバイオトーブだったともいえるでしょう。
さて、いよいよ彼の部屋の中なのです。
小さなキッチンがついていましたが、
そのキッチンの上は、さながら主婦が1週間家事を放棄した家のようです。
1週間? たいしたことないじゃん。 と思ったあなた!
量は1週間分ですが、歴史は3年分です。
彼がそのアパートに入居してキッチンを使ったのは、最初の1週間だけだったのですから。
それから、彼の部屋には、立派なオーディオ機器と、大きな製図台がありました。
4畳半の部屋の3分の2は、それらの荷物にふさがれていました。
ボクが酔いつぶれた時に、彼は親切にも泊まらせてくれました。
そういう時には、立派なオーディオセットで、
当時流行っていた「クロスオーバー」と呼ばれる音楽を聴きながら、
といっても、薄い壁の向こうには住んでる住民のことを考えてヘッドフォンで、ですが、
製図台の下に敷かれた布団の上で、くっついて寝たものです。
製図台の下に敷かれた布団の上で、くっついて寝たものです。
翌朝、ボクはとてもかゆかった。
彼のアパートには、目に見える大きさの虫もいたけど、
目に見えないほどの小さな虫もたくさんいたんだと思う。
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さて、それに比べてボクの部屋。
完璧に整頓されていて、完璧に清潔です。
比較の対象が悪いですか?
