
口の周りがぐちゅぐちゅになるから、水蜜桃。
とは書いたものの、水蜜桃なんて名前、最近聞かないな。
それに最後に食べたのも中学生の頃だったんじゃないだろうか。
夏の山歩きの途中の店屋の前の「水蜜桃」と書かれたのぼりの下には金だらいがあって、
その中には、水道の水を流しっぱなしにしていくつかの桃が冷やしてあった。
手に取ると、どんなに柔らかに触ったつもりでも指の部分が桃にめり込んで、
皮は、ナイフを使わなくてもプルプルと剥くことができる。
かじりつかなくても、皮をむいたはしから果汁がにじみでて来るくらい。
冷たくて、甘くて、ジューシーで、
東京じゃぁ、こんな美味しい桃は食べられないな、って思った。
去年の夏、山間の桃園で桃をもいで食べた。
木になったままやわらかく熟れた桃は、確かに美味しいのだけれど...
記憶の中の桃は、もっと甘くて、もっとやわらかくて、もっと幸福な味がしたんだな。
ああ言う美味しい桃は、どこにいっちゃったんだろうか?
