ボア・ノイチ!
はい、今日はポルトガル語でコンバンワです。
ポルトガル語の発音って、柔らかくてとてもきれいだと思います。ボクの感覚からすると、スペイン語+鼻母音+濁音=ポルトガル語です。 ちょっとちがうかな?
以前紹介した、「bossa antigua
」が、米国におけるジャズとブラジルの融合の例なら、ブラジルにおけるジャズとブラジルの融合の例は、どんなでしょうか。そして、それを何と呼ぶのでしょうか。
Jazz Samba でしょうか、Brazilian Jazz でしょうか・・・
SAMBLUES / Sambalanço Trio
Jazz Samba ってのは、モダンジャズが演奏され始めた当時のブラジル(50年代のことです)で、サンバのリズムで育ったドラマーやベーシストが、自分のリズム感でジャズを演奏することによって作り上げていったものなのだそうです。
日本人がイエローサブマリンを歌うとき、どんなに頑張っても金沢明子から逃れることがでいないように、ブラジル人がジャズをやると、どうしてもサンバの呪縛から逃れられない。
民族の血の持つリズム感にはあらがえないのです。
「だって僕たち、ブラジル人だもの」
そう、それが、Jazz Samba なのです。
そしてその代表選手がサンバランソ・トリオ。60年代の中頃、サンパウロを中心に活躍していたピアノトリオです。
サンバランソ(sambalanço)って、サンバ(samba)とバランソ(balanço)の合体した言葉ですね。
「バランソ」というのはサンバ独特のノリ、ジャズで言えば「スイング」のことです。
このトリオは、サンバのノリとジャズのスイング感とを合体させているってわけ。まさにサンバランソ!
(そして、アルバムタイトルの「サンブルース」も、サンバとブルース(blues)の組み合わせでしょう。)
ドラムのアイルト・モレイラ(Airto Moreira)は、むしろジャズの世界で有名です。
ピアノのセサル・カマルゴ・マリアーノは、エリス・レジーナの(2番目の)夫。
以前、渡辺貞夫のアルバム、「VIAJANDO」をプロデュースしたりしてましたね。
どうですか?
一聴してブラジルだってわかるジャズ。これが、Jazz Samba です。
どうですか? スイングしてますか?
そう、スイングしている。でも、そのスイング感はブラジルですね。
いい感じです。
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じゃあ、Brazilian Jazz というのは何?
きっと、Jazz に力点を置いた言い方なんだと思います。ボクらのやっている音楽は本当に「Jazz」なんだよ、ブラジル生まれだけど、と。
ところが、サンバのリズムで育った彼らブラジル人がジャズをやるとなると、自分のリズム感でやるものだから、一聴してブラジルだってわかるジャズになっちゃう。
「だって僕たち、やっぱりブラジル人だもの」
あれれ? Jazz Samba といっしょってワケ? どうも、おかしなことになってきてしまいました。
とりあえず、1枚紹介しておきましょう。
Brasilian Jazz の一押しとして紹介するのは、ブラジルを代表するドラマーの1人、吉本ばなな、じゃなくて、東京ばなな、でもなくて、ミルトン・バナナです。
以前ちょっと話題にしたアルバム、ゲッツ=ジルベルト でドラムをたたいていたのが、ミルトン・バナナ。
ミルトンは、ボサノバの全盛期の60年代の初頭に、Brazilian "Jazz" であることを前面に打ち出して活躍し、62年には、CD化もされているカーネギーホールでのコンサート、翌63年には、前述のゲッツ=ジルベルトと続き、このアルバムは、トリオとしての第1作目(65年)にあたります。
とてもタイトなリズム感、いいですねぇ。
スルド、タンボリン、ガンザといったサンバのパーカッションを、彼1人がドラムセットで実現しているかのようですよ。素敵ですねぇ。
このアルバムでもう一つのちょっとした聴き所は、ピアノのワルター・ワンダレーでありましょう。
ワンダレーというと、例のブッカブカしたオルガンの音を思い浮かべる人が多い(というより、ほぼ全員)でしょうが、ここでは、ハードな音を聞かせています。驚きです。
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さて、2枚を聴き比べていただいたら、もう、Jazz Samba と Brazilian Jazz の違いがよくわかった事と思います。
え?わからない?
う~ん、音楽のジャンル分けってのは、難しいものです。
説明しているボクも、実はよくわからない。
つまりこういうことではないでしょうか・・・
「サンバ」ってのは、「ブラジルの」という意味に使われていると。
イタリア製の西部劇を「マカロニ」ウエスタン、インド製の映画を「マサラ」ムービーって言うようにね。
