この記事の解説動画はこちら↓

 

 

 

 

ナンナン
 

なんか、お茶とか牛乳に含まれるタンニンやリンが鉄の吸収を阻害するって話しじゃん・・・。

ボク、これからお茶も牛乳も一切飲まないことにするよ

 

はる かおる
 

えっ・・・それ本気で言ってるの❓❓

非ヘム鉄を多く摂るときにお茶や牛乳を避けすぎると、むしろ毒になるよ

 

ナンナン
 

そんなの嘘に決まってる❗ 鉄の吸収を阻害するから避けた方が良いって、プロならみんな知ってる常識だよ❗

 

はる かおる
 

いやいや、吸収を阻害するもの=悪者では無いんだ。 このあたり詳しく教えてあげるね

 

非ヘム鉄は、お茶やコーヒーに含まれるタンニンや、加工食品などに含まれているリン酸塩の影響を受けやすく、とても吸収率が低い鉄です。

 

鉄(Fe3+)と一緒にこれらタンニンやリンを一緒に摂ると、胃や腸で水に溶けない「不溶性鉄塩」となり、吸収されないまま便として排泄されてしまいます。

 

 

鉄(Fe3+)と不溶性鉄塩(キレート)を形成し、沈殿させてしまう物質

  • フィチン酸 (玄米や豆類、全粒粉など穀物の外皮に含まれる)
  • リン酸塩 (加工食品の添加物として使われる)
  • シュウ酸塩 (ホウレン草、タケノコなどに含まれる)
  • 炭酸塩 (中華麺やこんにゃくなどの製造に使われる)
  • タンニン (ポリフェノール類。お茶やコーヒーに多く含まれる)

 

このようなことから、鉄剤を処方されたときや、ニセ分子栄養学の情報では、お茶やコーヒー、牛乳など鉄の吸収を阻害する食べ物や飲み物は避けた方が良いと言われています。

 

ですが・・・

 

ちがう。違うんですよ

 

本当の分子栄養学は。

 

 

タンニンやリンなどは確かに鉄の吸収を阻害します。しかし、鉄の吸収を阻害する=悪者というわけではありません。

 

タンニンやリンは、鉄と結合して不溶性の鉄錯体(鉄化合物)を形成することで、むしろ腸管内での過剰な非ヘム鉄によるフェントン反応(酸化ストレス)の軽減に役立つという側面もあります。

 

つまり、タンニンやリンは一見すると鉄吸収を阻害する悪者のように見えますが、一方では消化管内で過剰となった遊離の非ヘム鉄を安全に体外に排泄させるという、いわゆる「セーフティ機能」のような大きなメリットも存在しているのです。

 

そのため、非ヘム鉄摂取時にタンニンやリンの摂取を過剰に避けてしまうと、これらによってキレートされない遊離の鉄が消化管に多く存在することになり、フェントン反応」を誘発して消化器障害が起こりやすくなってしまいます。

 

ですので、非ヘム鉄摂取時に、鉄の吸収が阻害されるからとお茶やコーヒー、牛乳などを過剰に避ける必要は全くありません。

 

 

もう少し分かりやすい例で見てみましょう。

 

「リンは鉄の吸収を阻害する」と言われていますが、鉄はリンと結合してリンの吸収を阻害し、リンは鉄と結合して鉄の吸収を阻害するという、お互いが拮抗するような関係性を持っています。

 

例えば、鉄<リンのように鉄よりもリンの摂取量が多かった場合、リンは鉄と不溶性鉄塩を形成してリンが鉄の吸収を阻害してしまいます。

 

鉄欠乏性貧血の方は鉄の摂取量が少なく、加工食品の取り過ぎなどによってリンの摂取量が多い場合があるので、タンニンやフィチン酸、リンなどはなるべく避けましょうと言われているのはこのためです。

 

これは何となく分かりますよね。

 

一方で、鉄>リンのようにリンの摂取量よりも鉄の摂取量のほうが多かった場合、今度は鉄がリンと結合して不溶性鉄塩を形成し、鉄がリンの吸収を阻害します。

 

これはつまり、お互いが吸収を阻害しあうことによって、ミネラル吸収のバランスを調節してくれる働きがあるということです。

 

 

このようなことは、病院で処方されるリオナ(クエン酸第二鉄水和物)にも応用されています。

 

リオナはもともと慢性腎臓病患者における高リン血症の改善を目的に作られたお薬です。慢性腎臓病では、腎臓の機能が低下することで体内にリンが蓄積し、高リン血症がおこります。

 

高リン血症になると、血管や関節などの石灰化により動脈硬化や関節痛などがおこりやすくなったり副甲状腺ホルモンの過剰分泌がおこって骨がもろくなったりします。

 

リオナは、このリンの過剰を防ぐために、食事に含まれているリンを吸着して排泄を促すことで、高リン血症の改善と動脈硬化や骨折などを予防するお薬です。

 

また、慢性腎臓病の場合は貧血にもなりやすいので、同時に鉄補給を行う目的としても使用されています。

 

 

ところが・・・・

 

使用しているうちに、ある事実が浮かび上がってきました。それは、

 

鉄剤使用による消化管副作用が少ない

 

ということ。

 

通常、非ヘム鉄である鉄剤を使用すると胃痛や吐き気、便秘や下痢などの消化管副作用がかなりの割合で起こるのですが、リオナではその副作用が発生しない人が多い。

 

その発現頻度は、下痢が12.4%、悪心、便秘と他の鉄剤に比べて圧倒的に少なくなっています。*1

 

硫酸鉄やフマル酸第一鉄など従来の鉄剤では、およそ30%〜45%の頻度で消化管副作用が発生していることから、いかに少ないかが分かりますよね。

 

最近の研究では、経口鉄補給による消化管副作用の頻度と重症度が強調されています。10,000人以上の患者のメタアナリシスは、フマル酸鉄(43%)、グルコン酸鉄(31%)、硫酸鉄(30%)など、さまざまな鉄製剤で高いGI副作用を報告しました[54]。10,695人の患者の別のメタアナリシスでは、硫酸第一鉄グリシンで23%、グルコン酸第一鉄で31%、硫酸第一鉄で32%、フマル酸第一鉄で47%の副作用率が分かった[12]。硫酸第一鉄やフマル酸第一鉄などの従来の鉄形態は、有害事象の30〜45%の頻度と関連していたが、キレート化鉄またはグリコール化鉄形態は、わずかに低いが、20〜30%の有意な発生率を示した[12]。予想通り、これらの影響の重症度は用量に依存する傾向があります。用量が高いほど、有病率と有害事象の重症度が高まる

 

MDPIより引用

 

このような経緯から、消化管副作用の少ない鉄剤としても注目され、鉄欠乏性貧血に対しても処方が認めらました。

 

 

では、なぜリオナはここまで消化管副作用が少ないのでしょうか?

 

これは、リオナに含まれる三価の鉄(Fe3+)が、食事に含まれているリンと結合して不溶性鉄塩を形成し、そのまま排泄されるためです。

 

 

より引用

 

 

三価の鉄がリンと結合すると、不溶性の鉄塩となって水に溶けなくなります。水に溶けなくなると、ビタミンCなどの影響も受けにくくなるため、腸管内の溶液中に遊離の鉄イオンとしてほとんど存在しなくなります。

 

もちろん全てではありませんが、このような「リン酸第二鉄」という安定した鉄塩を形成することで、フェントン反応による活性酸素の発生を抑制でき、結果的に消化管副作用も減るというわけです。

 

 

このフェントン反応とは一体何なのかというと、酸性条件下で二価の鉄イオン(Fe²⁺)と過酸化水素(H₂O₂)が反応し、非常に反応性の高いヒドロキシルラジカル(・OH)を生成する反応のことです。

 

具体的には、過酸化水素であるH₂O₂が、二価の鉄イオンと反応して三価の鉄とヒドロキシラジカル(・OH)と水酸化イオン(OH-)を生じさせます。

 

 

H₂O₂ + Fe2+ →・OH + OH- + Fe3+

 

 

病院の鉄剤などで大量の鉄分を摂取すると、吸収されなかった遊離の二価鉄が小腸や大腸に流れて蓄積し、「フェントン反応」による活性酸素(ヒドロキシラジカル)の発生を促します。

 

この活性酸素発生による酸化ストレスと腸粘膜へのダメージによって、腸粘膜バリアの低下や腸内細菌叢の乱れなど、様々な不調や状態悪化を発生する原因になってしまうのです。(詳しくは前回記事参照

 

 

ただ、このフェントン反応は、先ほどあげた例のように、リンなどと結合して不溶性の鉄塩を形成させることで発生を抑えることが出来ます。

 

鉄は酸化(Fe3+)→還元(Fe2+)を繰り返しており、鉄を主に吸収している十二指腸を通過した後に存在する余分な遊離の鉄とリンが結合すれば、その後は安全に体外で排泄できるようになります。

 

このように、タンニンやフィチン酸、リンなどにはこのような「鉄を安全に体外に排泄する」という「鉄キレート剤」のような役割がありますので、過剰に避ける必要は全くありません。

 

 

このような前提のもと、残念なことに現状では鉄剤や鉄サプリメントを摂取する際に、「空腹で飲んだ方が吸収率が良い」とか、「お茶やコーヒーなどを避けた方が良い」と言われることがよくあります。

 

これで確かに吸収率は上がるかもしれませんが、空腹で鉄剤を摂取したり、お茶やコーヒー、牛乳などを避けると、遊離の鉄が消化管内に多く残存するため、フェントン反応による活性酸素の発生も多くなります。

 

よく、空腹時に鉄剤を服用したり、ビタミンCと鉄剤を一緒に摂ると副作用の消化器症状が酷くなる場合があると言われているのはこのためです。

 

非ヘム鉄の場合、このようなリスクを負ってまで吸収率を高めたところで、吸収される鉄の量はそこまで多くなりません。空腹時などに摂取して吸収率を上げるメリットよりも、フェントン反応による活性酸素発生によるダメージや、それによる「フェロトーシス(細胞死)の方がはるかに大きなデメリットがあります。

 

例えば、鉄剤を摂取すると

 

鉄>>タンニン・フィチン酸・リン

 

のような状態になり、更にこの状態からタンニンやフィチン酸、リンなどを含む食べ物を避けてしまうと、

 

鉄>>>タンニン・フィチン酸・リン

 

のような状態になってしまいます。

 

すると、鉄と不溶性鉄塩を形成して安全に排泄できるようにしてくれる物質が少なくなるので、そのぶん遊離の鉄が腸内に発生し、フェントン反応による活性酸素発生によるダメージが大きくなります。

 

よって、吸収率が上がるからといって、空腹時に鉄剤や鉄サプリメントを飲んだり、お茶やコーヒー、牛乳などを過剰に避けるのは非推奨です。

 

吸収率の低下を気にしたり、吸収率を上げることに力を注いだりするよりも、

 

安全であることを第一優先にして下さい。

 

特に、

 

大量の非ヘム鉄 + 大量のビタミンC + 空腹 + お茶やコーヒー、牛乳などを避ける

 

が組み合わさると余計にヤバい。

 

もともと分子栄養学では非ヘム鉄の大量摂取などは非推奨ですが、一部のニセ分子栄養学ではこのようなことを平然と推奨している場合がありますのでくれぐれもご注意ください。

 

 

 

ちなみに・・・

 

ヘム鉄の場合はリンと結合しないので、お互いが吸収を阻害し合うことはありません。吸収が阻害されないのはメリットですが、逆に言えばリンの吸収を抑えてくれる働き(セーフティ)も無いということになります。

 

例えば、現代の食生活ではリンが添加された加工食品も多く、過剰摂取に注意が必要です。*2 ヘム鉄100%のサプリメントを摂取していて、リンが多く含まれているものを好き勝手食べていると、リンの摂取が過剰になる恐れがあります。

 

そのため、サプリメントで鉄分を摂るときは、ヘム鉄と非ヘム鉄の両方が含まれているものを選ぶのが正解です。

 

ヘム鉄と非ヘム鉄の両方を同時に摂取した方がより効率的に吸収され、不要な非ヘム鉄や吸収されなかった遊離の鉄は、リンなどのキレート剤としても働きます。

 

このような正しい分子栄養学を実践していれば、リンの過剰摂取を気にして加工食品などを過剰に避ける必要もありません。

 

「ヘム鉄と非ヘム鉄はどちらが最強か」などと優劣をつける意味すら無いです。

 

 

また、鉄分を摂るときは牛乳も非常に優秀な食べ物です。牛乳と鉄を一緒に摂ると吸収を阻害すると言われていることがありますが、実際にはそんな事はありません。

 

牛乳に含まれているアミノ酸やカゼインホスホペプチドは、鉄やカルシウムなどのミネラル吸収を助けてくれます。

 

特にカゼインホスホペプチドは優秀で、十二指腸で吸収しきれず小腸下部に流れた不溶性の鉄や遊離の鉄をカゼインホスホペプチドが可溶化し、ペプチド内に捕まえて安全な状態で吸収してくれます。*3

 

これはつまり、フェントン反応を抑制しつつ、更に吸収まで促進してくれるということです。

 

まさに、神がかった吸収システムですね。

 

 

そんなカゼインホスホペプチドですが、ケンビックスのヘム鉄サプリメントである「ヘム鉄 アルファ Fe8」にも配合されています。

 

 

ケンビックスのヘム鉄 アルファ Fe8は、ヘム鉄と非ヘム鉄のイースト鉄を配合し、更にカゼインホスホペプチドを配合することで、非ヘム鉄摂取時のフェントン反応の抑制と、吸収率アップが考慮されています。

 

ヘム鉄による安全な鉄吸収と、非ヘム鉄を組み合わせることでの効率的な鉄吸収、そして時には非ヘム鉄がリン酸などの吸収を調節し、カゼインホスホペプチドが吸収されなかった遊離鉄のフェントン反応を抑えながら鉄の吸収を促す。

 

鉄を安全に効率よく吸収出来るようにと何重にも考慮されたこの設計には、ほんと脱帽ものですね。

 

余談ですが、昔の、鉄瓶でお湯を沸かしてお茶を入れて飲む事は、鉄の摂取を行いつつ、タンニンによってフェントン反応によるフリーラジカルの発生や鉄過剰症のリスクを効果的に抑制する非常に理にかなった優れた手法だったんだなと感じています。

 

タンニンやフィチン酸、リンなどは「鉄の吸収を阻害する悪者」みたいに思われてしまっていますが、昔の人はこの事を知ってか知らずか、安全に効率よく鉄を吸収する手法として利用していたのかなと考えると、昔の人の知恵ってすごいなと思いますね。

 

 

ナンナン
 

うーん・・・吸収を阻害するって悪い事だと思ってたけど、良い面もあるのか💧

 

はる かおる
 

そうだね。こうやって栄養素の働きをよく理解し、生体内の分子の乱れを整えていくことが本当の分子整合栄養医学だよ。バカの1つ覚えみたいにお茶やコーヒー、牛乳なんかを避けるよう発信されている情報はニセの分子栄養学だから気をつけてね

 

 

 

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はる かおる
 

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