仕事から帰宅すると、玄関でうじゃうじゃとぐろを巻く白い塊がお出迎えしてくれた。

まじまじ見れば、それは1本1本我が家の延長コードであった。「こんなに沢山、あったんかいな。」その量の多さに開眼。いやいや、違う違う。

「どうして?ここに?何で?集めた?」

息子を呼ぶのだが、心なしか不思議な生き物を召喚する気合を要した。

待ち構えていたの如く、ぴゃっと姿を現し館の主人に『そうなんですよ~ご主人様~』の体で手もみをする。

「なんじゃい!これは」「今、我が家の配線はどうなってるの」

ズカズカ部屋に入り、各コンセントを見回る。

「必要、最低限のモノだけつないだ」とTen

「ウチの延長コードはすべて耐久年数を超えている」

「新調が急務だ」と、マジ顔で言う。

漏電して発火したら大事だ。と主張する。こうなってしまったら、もう譲らないのがTenだ。

ハハの不在時、延長コードからチリチリと漏れ出る電子音に気が付いてしまったために、不安になり調べまくったという。 注:Tenは聴覚過敏である

 

以前も似たようなコトがあった。冬場に重宝していたオイルヒーター、Tenは微かなニオイを感知してプラグが溶けていることを発見。オイルヒーターが大型家電扱いであって、電圧が原因だと知り。彼が住まいのコンセントの配置と家電の置くべき場所を考察した結果、「現代の暮らしにそぐわない間取りと配線だ」と、我が家をけなした。

昭和47年築の団地だよ、あたりまえじゃ!

 

Tenは心配性。

少しでも気がかりな事があると、調べつくして修正しないと不安が収まらない。

その調べる様は研究者の如くだ。研究者が常軌を逸して研究に没頭するのと同様に、Tenも一つの課題に過集中をする。

『researcher』 リサーチし続けるのであろう...。彼の生き方は。

 

そのお陰様で、我が家の安全は守られているのだけれど。

 

今回の延長コードを新調したお代、4本で約8000円。

リスクを回避したと受け取って安いのか、無駄な買い物をして高いのか。ハハ(私)には、もうよくわからんちん。

 

先週、Tenの通院日があったが、本人は学園でレッスンがあるから行きたくないとのたまう。

月に一度の通院なのだが、3回に1回はバックレる。ここのところは、マジメに自分の事だからと気持ちを入れ替えていたように見受けられたのに・・・・クソッ。 相変わらずじゃないか。

薬は必須なので、ハハ(私)が家族代診で受け取る。

(Tenは、コンサータとインチュニブを処方されている)

もう~しょうがないな・・・ハハ(私)はあきらめモードである。お世話になっている病院が、サクっと行ける近所ではない。毎回、この日の為に仕事を休む。

あ~行きたくね~のは、ハハ(私)のほうだい。

 

Tenが来るときは、本人が先に30分弱の診察を受ける。その後、ハハ(私)が呼ばれ前回の診察から心配なことは無かったかと質問がある。何もなければそのまま三人で、和やかに雑談して予約を取ってから退室するという流れなのだが・・・。

 

ハハ(私)ひとりの時は様子が違う。

ガッツリ、H先生と対面して本気モードの話になる。Ten本人がいると出来ない話が本題になる。今現在の現状と将来の話を必ずする。

高校卒業後も小児専門のH先生が引き続き主治医をしてくれているのは、今の現状がまだ大人専門の精神科に移行するには早いと判断されているから。

それでも、紹介先を選定する作業は始まってはいる。Tenにとって良い療養に繋げようと尽力してくださる。

H先生からは・・・

強烈な自我と現実を受け入れにくい幼児性のために、成人し社会人になる頃に、今よりもキツイ状態になりやすい人

と言われている。

 

H先生は本人が希望する『音楽の道』には、賛成ではない。いかに、就労させるかを考えてくれている。

この1年、本人がしようとしていることを黙認し、その後は就労支援を受けて社会参加をめざすべきとおっしゃる。どうにか社会とのつながりをとらせたいとお考えだ。

20歳を超えると、今いる友もそれぞれの社会環境が変わるので、必然的に離れていくと・・・・

そうなった時、激しい孤独感に苛まれる。耐えられない精神状態になる恐れがあるので、紹介先は入院設備もある精神科が望ましいとおっしゃる。

ハハ(私)にとっては、現実に引き戻され・・・さあ、どうするのと詰め寄られてるようで嫌な時間になるのである。

Tenが一番キツかった状態からここまで回復したのは、音楽があったからだ。

自分の事を考えると気持ちが悪いと言っていた息子が、ここまで自己肯定感を取り戻したのは音楽活動があったからだ。奪い取ってはいけないと思う。生きるために。

本人がなりたがっているものに賛成してどうしてダメなのか・・・。

本当は分かっている、ハハ(私)も社会人の端くれだから。

夢や霞を食って生きては行けない。現実的に考えればね。

だが・・・生きるを優先したいのだ。

さあ、どうしよう。

 

 

『電池が切れる』と表現するのが合ってるのかは分からないが、Tenは時々(忘れた頃に)プツンとOFF状態になる。

静かだな・・・と様子を伺うと、えっ?このタイミングで?と思うぐらいに変な時に居眠りをしている。

OFFする前には、Ten本人にとって過度なストレスがかかっていたり、過集中を長く続けたあげくスタミナが切れた。もしくは、無気力状態の時・・・あるいは、低気圧が接近しているとき。

OFF状態を発見するときは、いつも不意打ちである。

『マジっすかっ。』と毎度声に出る。そして、Tenに何のストレスがかかっていたのかを考察してみる。

Tenの限界を知るための手立てにもなっている。

糸が切れた様に眠っているので、事前に何をやっていたのかは分かりやすい。外出先でのストレスであったとしても、今のところスケジュールを把握しているので予測はつきやすい。

Tenの脳は誠に繊細だ。

目が覚めれば、訊ねてみる「疲れていたんだね。何かあった?」と、言葉に出させて共有する。しんどさを知る。とても、大切なこと。

 

 注) ハハ(私)はとても強靭だから、つい何でも「そんなの、大丈夫だよ」でかたずけてきた。

   今思えば、Tenにとっては救いが無かった。

 

妙なもので、過集中しすぎて今日は絶対OFFするぞ!と予測する日に起きていられるとかえって心配になる。

先日、学園でYouTubeのライブ配信を行った。Tenは全8曲をベース演奏をした。出来栄えも良く。かなり集中していたはずで、準備・かたずけなど含めて過重活動だった。それなのに、帰宅後一向にOFFする気配がしない。ゲームをする余裕ぶりだ。

ハハ(私)は解せない。どうしたのだ?と訊ねると、「今日で、頭の中の8曲の荷物を下せる。安堵だよ。」とTenは微笑んだ。

安堵=達成感

きっと、幸せだったのだろう。と、ハハ(私)は思う。

 

 

 

金曜の夕方、いつも通り学園での音楽活動を終えて帰宅したTenは、「疲れた~」と言いながら背負っている楽器をドサッとおろし、着ている服を脱ぎ散らかしながらハアハア~フウフウ~と呼吸を整えている。←外気から帰宅すると、いつもこんな感じ。まるで、海に潜っている人が海面から顔を出したときの息遣いのよう。

 

帰宅した直後は、廻るめく情報が走馬灯のように蘇るのか・・・何かを語るときは、その情景が聞き手に良く伝わる。今回もそうだった。

「疲れた~」と言っているのに、晴れ晴れしているような・・活気があるような。言うなれば、興奮している。

「どうしたの?」と言おうとするハハ(私)を左手で静止して、決壊したダムのようにしゃべりだした。

「いや~母さんの気持ちがよく分かったよ」

「母さんが仕事で人を教育することが難しいと、さんざん言っていたけど、今日オレはそれを体験した」と言って、ぺしっと自分の太股をたたいた。

聴くところによると、本日は音楽部の部活動があった。ベースをやってみたいと望む中等部の後輩を指導を任されていたので、自作の初心者向けのタブ譜をPCで作成し準備していた。一名を指導すればよかったので、マンツーマンならうまくいくと思っていたそうだ。

ところが、相手の反応が薄い。用意したタブ譜さえも手に取らない。

「オレ、またやちまったのか?」と焦ったが・・・やるしかない。

ひとつ、ひとつ、やってみせ。やらせてみて・・・・Tenは仕草もコミコミで、こうして~ああしてと指導の流れをハハ(私)にも示しながら、肩を震わせながら笑っていた。

「分からないんだよな~一小節に音符が何個入っているかが分からないみたいだから、説明も懇切丁寧に小学校の音楽で習うレベルまで下げたのに…何度やっても、一音、二音多い。どうしてなんだろう」

「ベースがつまらないと思ってほしくはないから、出来ているところを褒めて・・・」と言って、Tenはものすごくニヤついて・・・吹き出しながら畳み込んだ。

 

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。だよね、母さん」

 

「なんですか?そのフレーズは」 ハハ(私)は、知りませんよ。何のこと?目を白黒させるハハの為に、息子はググる。携帯画面には、軍服を着た山本五十六の姿が・・・。

「マジ。ホント難しい。人を育てるって」

Tenの言葉にあんぐりと口が開けっ放しのハハ(私)でした。

 

山本五十六の名言には続きがあって・・・

「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば人は育たず」

「やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば人は実らず」 だそうです。

 

Tenよ・・・。ハハが君を思って療育を学ぶ事を、知っててハハに一杯食わすのか・・・。

怖いぞ・・・。

 

ちなみに、Tenが新しい手習いや技術を習得するときは、PDCAサイクルを実行しているそうです。ハハ、初めて知りました。

ああ・・・そうですか。

 

PDCAサイクルについては、記述する気にもなりません。おのおのググってください。

Tenは、『将来音楽で喰っていきたい』と宣言した時、大人たちを納得させるような具体的なビジョンを説明出来ないでいた。

音楽との縁を切りたくない。音楽で繋がった縁も切りたくはない。そこは貪欲にしがみつきたいと言っていた。ほとんどの同級生が進学する中、自分自身は専門学校(音楽)で勉強することには向いていないと悟り、進学を断念した。(我が家の経済状態もあって)

だが、Tenのプランは脆弱で、楽器屋でバイトをしながらSNSで活動するというものだった。

ハハ(私)もTenの担任も一抹の不安を抱きながらも、本人が希望する事に異議は唱えなかった。Tenの人生だから、Tenの選択だから。

 

大人が全く口を出さないスタイルは、一般的ではないのかもしれない。

例えば、主治医のH先生にこの進路について話したところ、ノーグットだった。音楽で身を立てるのは苦労の道だろうし、社会との共生が難しいうえに経済力が身につかない。不安要素が多い。と、親身になって反対してくれていた。ハハ(私)もそう思う。

が、そこは自閉症の息子と向き合うと覚悟を決めたのだから・・・・。

本人が決めた進路だから、『見守っていこう』と心に一本柱を立てた。

Tenの通っていた学園も凄かった。こちらから、お願いしようと思っていたことを学園側から提案してくれた。卒業後も、音楽のコースでの活動が出来ることに融通をきかせてくれたのだ。Tenとハハ(私)にとって、渡りに船。とても、ありがたい提案だった。

 

※Tenは学園では、音楽のコースに在籍していた。現在音楽コースには、音楽業界のプロが複数人、講師として指導をしてくれている。身近に、プロミュージシャンと触れ合っている。

 

そして、卒業後は週3回学園で音楽の活動をさせてもらっている。在学生とともに講義を受け、レッスンに励んでいる。今までとの違いは、コースOBとして後輩のための練習台になったり、音楽部(中等部・高等部合同の部活動)では、はじめて楽器を触る人の指導もするらしく・・・さまざまな経験をさせてもらっている。Ten自身も必要とされることに飢えていたので、ここでの活動が本人のモチベーションを上げ続けている。

 

かつて、ハハ(私)は『フラグを立てる人』とTenに揶揄されるような母親だった。

転ばぬ先の杖を差し出す母親でした。

自分本位の子育てをしていることに気が付けなかった。ようやく今頃になって間違いを知って、なんと人を育てることは奥が深いことだと実感している。

(あと数年で、Tenは成人するっていうのに・・遅っ www)

 

『見守る』 ことは、覚悟と知恵が必要になる。そして、愛が原動力である。

 

 

不随運動・・・本人の意思とは無関係に身体に異常な運動が起きること。

 

”揺れている”と意識するようになったのは、Tenが自閉症の診断を受けてからだが、そういえば度々揺れていた。小学5,6年の頃には、チック(ビートたけしのように首と肩をピクッとさせる)もあった。

不随運動についてまだ知らなかった頃、Tenの上半身が前後にゆらゆら揺れているのを見て、「揺れているよ」と声をかけたことがある。Tenの「何もすることがないからだよ」という返答が、変なのと思っていた。

 

日々、Tenと向き合い、そして知るにつれ・・・ずるずると芋づるの根のごとく、続け様にTenの抱える一般との違いに気づかされことがある。

 

Tenにとっては、『何もすることがない』ということが、不安要素だった。Tenの脳は【知りたい脳】、情報に渇望している。そして、処理能力を超えた情報を欲しがる。なので、壁一面が白い部屋は目の置き所がなくて苦痛だという。かつて、GUの更衣室から遁走した原因のひとつが白い部屋だった。

今現在、身体が少し揺れ始めたかなと様子をうかがっていると・・・その後、すぐベースを膝に乗せ、テクニカル練習が始まる。とにかく、ベースに没頭している。Tenなりの不安解消術なのかもしれない。

 

もう一つの不随運動

かつて、Tenは手癖・手いじりもあったので、筆箱の中は分解されたシャープペン・ポールペン・コンパスが、いつもガラクタになった状態で入っていた。新しいものを買い与えるときに「もう、分解しないで」とお願いするのに、一週間後にはバラバラ状態。それでも、文具は無いと本人が困るだろうと思い、新しくしていた。コンパスは、計10個以上購入した。(100均がこの世に合ってよかった)

 

ある日、文具屋で少し高めのシャープペンの機能の素晴らしさを、実演販売士さながら饒舌に語るので・・・そんなにも欲しいのかと甘々ではあったが、「絶対に分解するな」と念押しをして購入してやった。

高めの品だし、機能の有能さを語るぐらいだ・・・大切にするだろう。と踏んで

思惑はすぐに外れた。無残にバランバラン。

構造が知りたくて分解するのかと聞けば、「それもある」と答える。だったら、「分解したら、組み立てろや」と半ギレ状態で、もっともらしい事を言ってみた。Tenは困ったのかヘラヘラしながら、「やってみたけど、ダメだった」と言い訳をした。←こんな調子なので、Tenは頻繫にハハ(私)にキレられていた。 結果、Tenの情操教育的にダメ対応だった。

 

注) 自閉症のある人の感情表現は、たまに一般的でないことがある。Tenは、突発的に困った時はヘラヘラする。(笑ったような様子になる)

 

注) 自閉症のある人は、基本・言い訳をしない。言い訳を言っているように見えるが、事実や  過程について説明しているにすぎない。

 

中学になっても、筆箱の中はガラクタ状態。

ある日、Tenがスマホ片手に「世の中には、こういう気の利いた商品がある」と言ってきた。

スマホ画面には正四面体のキューブ、その側面にはそれぞれスイッチやボタンが付いている。玩具のようだが、分からない。それは何?どう遊ぶの?とたずねると、手のひらにのせてカチカチと触る道具だと言う。

『こんなモノのどこが、気が利いているのか』

ハハ(私)への回答の中に、筆箱のガラクタ問題の答えがあった。

Tenは、授業中など長い時間じっとしていられないのだという。無意識に手で何かをいじっていないと落ち着けない時がある。その行動に意味などなく、仕草に近いものらしい。

「壊すな。分解するな」と言われていたので、残骸になったブツと見るとさすがにマズイ事になったと思っていたらしい。

このキューブは、おそらくこの問題を解決すると思うと言う。

 

「そうだったんかい~」 もっと早く、言っておくれよ~(←Tenとの間には、こういう事が多い)

 

このキューブの商品名はフィジェットキューブ。トイザらスで購入しました。その後、筆箱の中のバラバラ事件は起きていません。スゴッ!

 

そして現在は、ベースが手遊びの道具となっています。短い即興フレーズをケイタイゲームや動画を観ながら弾きます。器用だな~と感心します。

 

 

 

 

 

少し本線から、少々それて脇道に入ります。

 

Tenは現在ベーシストになるべく、自身が信じるやり方で活動しています。ベースとの出会いは、3年前の高校1年。その魅力にとりつかれ、今では”どっぷり沼にはまっている”。

彼は今時点でベースを、6本(台?)所有している。

3年で6本(台)、早くないか?多くないか?そんなにいるか?と、林立するベース群を見るたびハハ(私)は、腕組をする。

だがだが、一本一本に、短い期間ではあるが彼なりの思い入れがあり(曰くあり)で、それぞれのベースに、Ten本人の言い分があって面白いことになっている。

 

【一代目】  初号機

        YAMAHA 4弦・ハムバッカー・アクティブベース

        はじめの一本。決め手は、見た目とハムバッカーでアクティブベースであること

        (Ten談) 初心者向け・ピックアップに厚みがあり親指と支える窪みがある

               ノイズに強い

        代表演奏曲:DECO*27 『弱虫モンブラン』

【二代目】  初・5弦ベース

        Ibanez SR505B-SAT 5弦・ハムバッカー・アクティブベース

        決め手はボディデザイン

        (Ten談) ドスンと重い低音域が出せる・技量が無くても、迫力ある重低音を表現

              が可能 「あと一音足りない」を解消した5弦目

        代表演奏曲:LINKIN PARK 『Numb』 /Green Day 『Basket Case』

【三代目】  初・王道

        Fender 4弦・ジャズベース 3カラーサンバースト・中古

        (Ten談) ツブだった音の表現やスラップ奏法に目覚めた頃、

              先生の改造Fenderの音色に魅了された。中古で初イジリを体験                         

        代表演奏曲: Red Hot Chili Peppers 『Dani California』 『Californication』 

                             『Can't Stop』 『By The Way』 『Dosed』 

【四代目】  めざせ!スラップ王

        ATELIER Z  4弦・ジャズベース  黒 中重

        (Ten談)音抜けが良い・ピックガードの高さと低めの弦高がスラップ向け

             パツパツとした音が好み

        代表演奏曲:スキマスイッチ 『奏』/和田幸司 『butterflly』                                  

                Suspended 4th『ストラトキャスター・シーサイド』

 

【五代目】  初・ボディがラッカー仕上げ

        momose  MJ-Five2-ACT/M     かなり重い

        (Ten談)やはり、最近の曲には5弦で対応 理想の音色のベース

                      パツパツとした音が好み

                 代表演奏曲:キタニタツヤ 『悪魔の踊り方』/ヨルシカ 『春泥棒』・『風を食む』

        大原櫻子 『瞳』/レミオロメン 『3月9日』 /鶴『バタフライ』

        

【六代目】  記念樹              

        momose   MJ-five-EWC/AC'20WSE   重い

        (Ten談)最近の曲には5弦で対応・モダンな音色で5弦

 

 

                                               閑話休題

 

Tenはアナログ民族の属性をもつ。

一般的な人が無意識のうちにナチュラルに処理する感覚的なことを、一つ一つ意識にのぼらせて見たり聞いたりしている。なので、労力が伴い疲れやすい。

 

その反面、ハハ(私)には出来ないことで凄いなと思うのだが、手や足が自由に自分の意志で動かせる。

皆さんも、利き手ではない方の手が思い通りに動かせないと感じることはないでしょうか? たとえば、ピアノなどの鍵盤を両手で演奏しようとするとき、ケガをしたなどで利き手ではない方の手を使ってハサミで紙を切るときなど・・・訓練をつまなくてはこなせないでしょう。

それが、アナログ民族は私たち一般とは違うようです。

 

右手も、左手も、足指さえも一つ一つ意識に上らせているので、同様に動く。

Tenは、床に落としたペンや紙やタオルなどを足指で拾う。(行儀はなっていない)

基本、左利きなのだが、ベースやギターなどの右左がある楽器はレフティーは使用しない。普通モデルで演奏する。キーボードを演奏するときは、初見で戸惑いもなく両手がなめらかに動く。  当たり前に見えて、当たり前ではない。だが、それがTenにとってのナチュラル。

 

Tenはカラオケをあまり好まない。友人に誘われても、行きたくないと断る。

「みんなカラオケをよくそんなに好きになれるのがスゴイな。あんな忙しくて、しんどい作業はオレにはムリ。楽しむ余裕がない」と言う。 行程が多くて大変らしい。

「まずカラオケの曲が流れると、メロディーラインを雑音を含めた複数の音から探しだし、画面の歌詞を読みながら、声のボリュームが合っているのかを考えながら歌う。マルチタスクな処理を秒以下の限られた時間で行うことが、脳のCPUを大量に消費するから疲れる。だから、行かない」と言う。

そんな時のTenは、『カラオケには行かない』という選択肢を選ぶ自由を、声を強めて主張する。

風呂場では、あんなに気持ち良さそうに歌うのに、同じ歌うでもそんなに違うのかと改めてアナログ民族は大変だと感じた。

そんなTenでも、ベースを弾きながらコーラスを入れることが必須になることがあった時、苦手なマルチタスクを受け入れ、訓練するという努力で乗り切った。

LINKIN PARK『Numb』と キタニ タツヤ『悪魔の踊り方』  両方とも、うまくコーラスが入ったとハハ(私)は思ったが、本人は満足しなかった。歌部門でTenが満足する日はいつなのか・・・

 

 

 Tenは、とってもだまされやすい気質である。

エピソードが色々とあり過ぎる。比較的、幼少期から小学時代に記憶に残るエピソードが多い。

小学2年の時、三つ年上の従兄弟と共に、ハハの母(ばあちゃん)と3人で富士山周辺の観光地を巡るバスツアーに出かけたことがあった。イチゴ狩り、忍野八海、富士五湖観光を楽しむ内容だった。帰宅後、ハハの母(ばあちゃん)が言った。

「Tenは、大変な子だよ。将来、だまされやすい人になるかもしれないよ」

バスツアーの土産話の冒頭にそれかい・・・と思ったが、一日の母の労を思うと黙って傾聴することにした。

「大変な子」が何をしたのか・・・

まず、みやげもの屋で店員が人だかりの中で亀の水晶を紹介していた・・・「この亀は、水晶です。水晶には運気をあげてくれる強いパワーがあります。お財布に金でできた亀を入れておくとお金が貯まるといわれてますが、こちらは水晶なのでさらに強力ですよ」と言った。

それを聞きつけたTenが、これを土産にすると言うので、その時は『ハハ思いの子』だなと思ったそうだが・・・

その後のワイナリー見学で、大人たちがワインを試飲している中、売り子が試飲のワインがどれだけ良い品質かを説明した後に、「本日は、限定30本しかご用意がないので、お買い求めの方はお急ぎください。」と付け加えた。

直後、Tenが「買います!」と声を張り上げ右手をピンとあげたので、ばあちゃんは仰天して慌てて「違います。違います。今のは無しです」と引っ込めさせた。

バスの中でバスガイドがトイレ休憩の前に、ツアーの時間が押していることを説明していた。「時間厳守でおねがいします」の後に「遅刻をすると置いて行ってしまいますよ」と釘を刺した。Tenはハラハラした様子になり、周りに急げと促し「今、何時?」と何度も確認をする始末。

Ten達御一行は時間よりも早くバスに戻ったが、他のグループはバスガイドの釘差しも虚しくどこ吹く風、普通にゆったり戻ってきた。その様子を見ていたTenは急に具合が悪くなりだしたという。

「大変だったよ。あの子には、いろいろ気を付けてあげなさい」とハハ(私)に母コメントをのこした。自閉症であると診断されるのは、まだまだずっと先のことである。

 

自閉症のひとは、発せられた言葉をそのまま文面通りに受け取る傾向がある。暗黙の了解が出来ない。語られない部分を知ることが難しい。一般のひととは違う、別の知性なのだ。

Tenが診断を受けてハハ(私)が真っ先に本人に伝えたことは、「だまされやすい気質だから気を付けてね」だった。

伝え方としては誤りだったかもしれない。説明が足りないとでもいうか・・・

現在のTenは、詐欺まがいなコトや法律違反になりそうなコトに敏感になっている。もっと言うなら、人の口車にのるようなコトに怯えている。TenもSNSを利用しているので、ある程度の緊張感は必要だとは思うが・・・

『石橋を叩いて渡る』どころか『石橋を叩いて、叩き割る』ぐらい慎重で、肝心の石橋を渡れなくなることもある。ほどほどがない。

自身の楽曲の公開もこれが祟って、まだ内に秘めたまま。いずれ、巌は動くと思うがまだ機が熟さないようだ。

 

 

発達障害のある人の中に、感覚過敏でお困りの方は多いのではないでしょうか?

Tenも、もれなくそれでして・・・視覚・聴覚ともに、かなり過敏であります。(本人の精神的状況にも左右されているようにも見える)

 

掃除機の排気音がダメなので、どうにかTenの留守中に掃除機がけをしようと配慮するのだが、留守がちなのは私の方で籠っているのはTenの方。家に居ない隙を探すのが大変なので、ヤツが入浴中に掃除機かけをするようになった。Tenも辛抱しているようだが、時々ブツブツ文句を言っている。

 

外出も音だらけで大変。通学や通院時に鉄道を利用するが、これがまた音だらけで大変。電車そのものから出る走行音、ホーム・車中のアナウンス。券売機・改札まで機械音声でしゃべる。アナウンスはエンドレス。何度も同じ案内を言語を変えてまで繰り返す。そうそう、近頃はトイレまでしゃべる。

外国の方が日本の鉄道はうるさい。過剰なサポートだと図星をつくが、ハハ(私)も同感である。過剰なサポート=子供扱いをしていると気づいて欲しい。視覚障害者のためならば、なぜ黄色い点字ブロックはホームの外側にあるのか・・・。

人間社会は多種多様な人々が共生している。過剰なサポートがより良いサービスではない。

ヨーロッパの国ではquiet timeを設ける商業施設もあるらしい。感覚が過敏な人を考慮した合理的な配慮だと思う。

鉄道会社の方、騒音公害で困る利用客もいることを分かってください。

 

Tenは、これまで感覚過敏による音問題を解消すべく、様々な耳穴のための小道具を試してきた。

耳栓にはじまり、KING JIM デジタル耳せん、3M OPTIME105 イヤーマフ、重低音強化のイヤホン(音楽でごまかすために使用した)、ノイズキャンセリング・イヤホン。

耳の穴のために、そうそうたるラインナップである。

ベスト小道具は、SONY WF-1000XM3 ワイヤレスノイキャンイヤホン。

(発売当初 KING GNUがCMに登用されていた。ハハ、ファンための購入も好意的。ムフッ)

ノイキャンにおいては最高水準。Tenは、このイヤフォンの実力に感動。あまりに着用しすぎて、外耳炎になってしまった。治療中は耳穴に装着できないので、こんどは骨伝導イヤホンまで揃えた。耳、復活後はまたSONY WF-1000XM3を使用している。

集中する時や生活音が煩わしいとき、音楽を流さないでノイキャン機能をONにして装着している。かなり、本人は快適らしい。

たまに、おまえ感じ悪いぞと思うぐらい、ハハ(私)の気配さえもカットされる。ムカつくので、わざと視界に入るところをウロチョロしてやる。

 

現代人の皆様、耳・・・疲れていませんか?