金曜の夕方、いつも通り学園での音楽活動を終えて帰宅したTenは、「疲れた~」と言いながら背負っている楽器をドサッとおろし、着ている服を脱ぎ散らかしながらハアハア~フウフウ~と呼吸を整えている。←外気から帰宅すると、いつもこんな感じ。まるで、海に潜っている人が海面から顔を出したときの息遣いのよう。
帰宅した直後は、廻るめく情報が走馬灯のように蘇るのか・・・何かを語るときは、その情景が聞き手に良く伝わる。今回もそうだった。
「疲れた~」と言っているのに、晴れ晴れしているような・・活気があるような。言うなれば、興奮している。
「どうしたの?」と言おうとするハハ(私)を左手で静止して、決壊したダムのようにしゃべりだした。
「いや~母さんの気持ちがよく分かったよ」
「母さんが仕事で人を教育することが難しいと、さんざん言っていたけど、今日オレはそれを体験した」と言って、ぺしっと自分の太股をたたいた。
聴くところによると、本日は音楽部の部活動があった。ベースをやってみたいと望む中等部の後輩を指導を任されていたので、自作の初心者向けのタブ譜をPCで作成し準備していた。一名を指導すればよかったので、マンツーマンならうまくいくと思っていたそうだ。
ところが、相手の反応が薄い。用意したタブ譜さえも手に取らない。
「オレ、またやちまったのか?」と焦ったが・・・やるしかない。
ひとつ、ひとつ、やってみせ。やらせてみて・・・・Tenは仕草もコミコミで、こうして~ああしてと指導の流れをハハ(私)にも示しながら、肩を震わせながら笑っていた。
「分からないんだよな~一小節に音符が何個入っているかが分からないみたいだから、説明も懇切丁寧に小学校の音楽で習うレベルまで下げたのに…何度やっても、一音、二音多い。どうしてなんだろう」
「ベースがつまらないと思ってほしくはないから、出来ているところを褒めて・・・」と言って、Tenはものすごくニヤついて・・・吹き出しながら畳み込んだ。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。だよね、母さん」
「なんですか?そのフレーズは」 ハハ(私)は、知りませんよ。何のこと?目を白黒させるハハの為に、息子はググる。携帯画面には、軍服を着た山本五十六の姿が・・・。
「マジ。ホント難しい。人を育てるって」
Tenの言葉にあんぐりと口が開けっ放しのハハ(私)でした。
山本五十六の名言には続きがあって・・・
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば人は育たず」
「やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば人は実らず」 だそうです。
Tenよ・・・。ハハが君を思って療育を学ぶ事を、知っててハハに一杯食わすのか・・・。
怖いぞ・・・。
ちなみに、Tenが新しい手習いや技術を習得するときは、PDCAサイクルを実行しているそうです。ハハ、初めて知りました。
ああ・・・そうですか。
PDCAサイクルについては、記述する気にもなりません。おのおのググってください。