Tenは、とってもだまされやすい気質である。
エピソードが色々とあり過ぎる。比較的、幼少期から小学時代に記憶に残るエピソードが多い。
小学2年の時、三つ年上の従兄弟と共に、ハハの母(ばあちゃん)と3人で富士山周辺の観光地を巡るバスツアーに出かけたことがあった。イチゴ狩り、忍野八海、富士五湖観光を楽しむ内容だった。帰宅後、ハハの母(ばあちゃん)が言った。
「Tenは、大変な子だよ。将来、だまされやすい人になるかもしれないよ」
バスツアーの土産話の冒頭にそれかい・・・と思ったが、一日の母の労を思うと黙って傾聴することにした。
「大変な子」が何をしたのか・・・
まず、みやげもの屋で店員が人だかりの中で亀の水晶を紹介していた・・・「この亀は、水晶です。水晶には運気をあげてくれる強いパワーがあります。お財布に金でできた亀を入れておくとお金が貯まるといわれてますが、こちらは水晶なのでさらに強力ですよ」と言った。
それを聞きつけたTenが、これを土産にすると言うので、その時は『ハハ思いの子』だなと思ったそうだが・・・
その後のワイナリー見学で、大人たちがワインを試飲している中、売り子が試飲のワインがどれだけ良い品質かを説明した後に、「本日は、限定30本しかご用意がないので、お買い求めの方はお急ぎください。」と付け加えた。
直後、Tenが「買います!」と声を張り上げ右手をピンとあげたので、ばあちゃんは仰天して慌てて「違います。違います。今のは無しです」と引っ込めさせた。
バスの中でバスガイドがトイレ休憩の前に、ツアーの時間が押していることを説明していた。「時間厳守でおねがいします」の後に「遅刻をすると置いて行ってしまいますよ」と釘を刺した。Tenはハラハラした様子になり、周りに急げと促し「今、何時?」と何度も確認をする始末。
Ten達御一行は時間よりも早くバスに戻ったが、他のグループはバスガイドの釘差しも虚しくどこ吹く風、普通にゆったり戻ってきた。その様子を見ていたTenは急に具合が悪くなりだしたという。
「大変だったよ。あの子には、いろいろ気を付けてあげなさい」とハハ(私)に母コメントをのこした。自閉症であると診断されるのは、まだまだずっと先のことである。
自閉症のひとは、発せられた言葉をそのまま文面通りに受け取る傾向がある。暗黙の了解が出来ない。語られない部分を知ることが難しい。一般のひととは違う、別の知性なのだ。
Tenが診断を受けてハハ(私)が真っ先に本人に伝えたことは、「だまされやすい気質だから気を付けてね」だった。
伝え方としては誤りだったかもしれない。説明が足りないとでもいうか・・・
現在のTenは、詐欺まがいなコトや法律違反になりそうなコトに敏感になっている。もっと言うなら、人の口車にのるようなコトに怯えている。TenもSNSを利用しているので、ある程度の緊張感は必要だとは思うが・・・
『石橋を叩いて渡る』どころか『石橋を叩いて、叩き割る』ぐらい慎重で、肝心の石橋を渡れなくなることもある。ほどほどがない。
自身の楽曲の公開もこれが祟って、まだ内に秘めたまま。いずれ、巌は動くと思うがまだ機が熟さないようだ。