今やJR唯一の定期夜行列車となった「サンライズ瀬戸」と「サンライズ出雲」。
(「サンライズ瀬戸」クハネ285・茅ヶ崎〜平塚・2005年3月1日)
乗車率の低下と車両の老朽化で次々と夜行列車が廃止される中、ブルートレイン時代から乗車率が高かった「瀬戸」と「出雲1/4号」に寝台電車285系を導入して「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」に発展しました。
そんな285系「サンライズエクスプレス」について考えてみました。
考察1
なぜ285系が登場したのか
(「サンライズ出雲」クハネ285-2・岡山・2008年7月18日)
夜行列車が廃止された理由として挙げられるのが、利用客の減少と車両の老朽化です。車両の老朽化については新車を投入すれば良いだけの話ですが、利用客が減少しているため費用対効果を考えると新車導入よりも廃止の方が合理的ということで、次々と夜行列車が廃止されました。
ではなぜ、利用客が減少したのか? それはライバルに乗客を奪われたためです。
ライバルは所要時間的に有利な航空機、料金的に有利な高速バスが挙げられます。また区間によっては新幹線に乗客が移行したケースもあります。
そんななか「瀬戸」「出雲」は航空機の最終便よりも遅く東京を出発し、航空機の初便よりも早く現地に到着できるという強みがありました。JR西日本はここに賭けたわけです。
こうして、時代を反映させた個室主体の寝台電車、285系が1997(平成9)年に開発されました。ちなみに駆動システムは223系をベースとして、開発コストを抑えています。
考察2
285系はJR東海も持っているのはなぜ?
(「サンライズ瀬戸」クハネ285-3003・高松・2009年4月6日)
285系は5編成製造されました。
JR西日本が開発した285系ですが、5編成中3編成がJR西日本所有の0番代、2編成がJR東海所有の3000番代となっています。
そう、あのJR東海は285系を所有しているんです。285系の製造費と維持費を出しているんです。
実際にはJR西日本後藤総合車両所出雲支所に常駐し、検査も同所に委託しています。
なぜあのJR東海が「サンライズエクスプレス」に投資したのでしょう?
それは「サンライズエクスプレス」がJR東海にとっても悪い話ではないということです。
複数のJR旅客会社にまたがる旅客列車の運行では、各社の間で運賃収入や車両の使用料、線路の使用料を精算しています。
「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」の場合、基本的には以下のような関係になると思います。あくまで推測なのですが。
JR東日本(東京〜熱海)
(「サンライズ瀬戸」クハネ285-3・早川〜根府川・2016年7月1日)
収入
運賃・料金
線路使用料(東京〜熱海)
支出
車両使用料(JR西日本3:JR東海2)
人件費
JR東海
(「サンライズ瀬戸」クハネ285-3001・岡山・2008年9月4日)
収入
運賃・料金
線路使用料(熱海〜米原・JR西日本車)
支出
線路使用料(JR東日本・JR西日本・JR四国)
車両使用料(JR西日本)
自社車両維持費
人件費
JR西日本
(「サンライズ瀬戸」クハネ285・三石〜吉永・2005年9月18日)
収入
運賃・料金
線路使用料(米原〜岡山〜児島・出雲市・JR東海車)
JR東海車両維持受託料金
支出
線路使用料(JR東日本・JR東海・JR四国)
車両使用料(JR東海)
自社車両維持費
人件費
JR四国
(「サンライズ瀬戸」クハネ285-3004・高松・2009年4月5日)
運賃・料金
線路使用料(児島〜高松)
支出
車両使用料(JR西日本3:JR東海2)
人件費
JR各社の間で複雑な料金のやりとりが発生するわけですが、実際には極力相殺する事にしているそうです。
またJR東海の場合、運賃収入は多く見込めないので、車両を所有して車両使用料を受け取った方が得策だと判断したものと思います。
またJR西日本と共同所有とすることで、お互いの使用料をかなり相殺できているものと思われます。
逆にJR東日本やJR四国は走行区間の距離が短いことと運賃収入が多く見込めるので、車両を所有しない方が得策だと考えられます。特にJR東日本の運賃収入はかなり多いのではないかと思われます。
そのほかいろいろなメリットがあるから「サンライズエクスプレス」が維持できているのだと思います。
とは言えデビューから20年近く経過した現在、リニューアルされるのか、後継車が登場するのか……。今後の動きを見守りたいと思います。