東京メトロ千代田線は代々木上原〜綾瀬間の本線と綾瀬〜北綾瀬間の支線を持ち、JR東日本常磐線、小田急電鉄と相互乗り入れをしています。今回はそんな千代田線を走る車両の歴史を見てみましょう。
(16007・梅ヶ丘・2016年4月9日)
1969(昭和44)年12月20日東京メトロの前身である営団地下鉄が千代田線大手町〜北千住間を開業させました。
千代田線の車両といえば6000系。しかし世界初の電機子チョッパ制御車である6000系の第1次試作車が製造されたのは1968(昭和43)年4月でした。
(6000-1・綾瀬・2012年11月16日)
第1次試作車では2種類の電機子チョッパ制御と超多段式抵抗制御を東西線で比較試験しました。その結果を踏まえて第2次試作車が1969(昭和44)年8月に製造されました。
(6101・代々木上原・1982年)
この時点で千代田線開業までわずか4ヶ月で、千代田線開業に6000系は到底間に合いません。
そこで本来は東西線用の5000系3両編成10本を千代田線用に製造しました。
(代々木上原・1978年)
なお千代田線の車両基地は開業時から綾瀬検車区で、北千住〜綾瀬間は国鉄常磐線を走行していました。もっとも同区間は本来千代田線の線路で、国鉄が常磐線の高架複々線化工事で営団から貸与されていました。
その後5000系は5両編成化されています。
1971(昭和46)年3月20日に霞ヶ関〜大手町間が開業。6000系の営業運転が始まるとともに、10両編成化されました。
(6013・表参道・1982年)
同時に5000系は5両編成を2本連結して10両編成5本体制となりました。
1971(昭和46)年4月20日には北千住〜綾瀬間が開業し、国鉄常磐線の我孫子まで相互乗り入れを開始しました。営団からは5000系、6000系が常磐線に直通。
国鉄が用意した車両は103系1000番代で、10両編成16本160両が製造されました。
(クハ103-1031・表参道・1982年)
地下鉄乗り入れのためA-A基準を満たし、前面に非常扉を設置しました。また起動加速度3.3km/h/sを確保するために8M2Tと電動車比率を高くし、超多段式抵抗制御を採用しています。
しかし抵抗制御と発電ブレーキのため、電機子チョッパ制御と回生ブレーキを備える6000系と比べて消費電力と発熱量が多いという問題が発生しました。
もっとも営団にも少ないながら抵抗制御と発電ブレーキの5000系がまだいたわけですが。
1972(昭和47)年10月20日に代々木公園〜霞ヶ関間が開業。そして1978(昭和53)年3月31日に代々木上原〜代々木公園間が開業して、小田急電鉄本厚木までの相互乗り入れが始まりました。
小田急電鉄は9000形6+4両編成を9編成用意しました。
(9001・海老名)
9000形は小田急初の界磁チョッパ制御車です。また2600形以来の回生ブレーキを搭載しています。
回生ブレーキを使えるという点では103系1000番代よりも有能ですが、界磁チョッパ制御は力行時の弱め界磁制御と回生ブレーキ使用時に半導体を使う制御方式で、低中速域では抵抗制御と変わらず発熱する問題がありました。なお10両編成時の電動車比率を8M2Tとして起動加速度3.3km/h/sを確保しています。
当初小田急と千代田線の相互乗り入れは平日の朝夕と限定的なものでした。また小田急の車両は綾瀬までの乗り入れで、国鉄常磐線に乗り入れしませんでした。
逆に103系1000番代は代々木上原まで小田急には乗り入れていません。3者直通運転をするのは営団6000系の量産車(第2編成以降)のみで、営団5000系は小田急に入線せず、また6000系1次試作車は車体の裾が小田急のホームに抵触することと、中間に付随車を4両連結することから、小田急への乗り入れは行なわれませんでした。
1979(昭和54)年12月20日、綾瀬検車区への引き込み線を旅客化して北綾瀬支線綾瀬〜北綾瀬間が開業。
試験以来綾瀬検車区で保管されていた6000系第1次試作車、通称6000ハイフンを抵抗制御車として整備して導入しました。
(6000-3・北綾瀬・2012年11月23日)
しかし6000ハイフン1編成だけでは運用に支障をきたしますので、5000系中間車を3両製造して、5+5両編成1本を10両貫通化することによって、3両編成1本を捻出。
さらにのこる4本を7+3両編成化して、3両編成を北綾瀬支線の予備車としてやり繰り可能としています。
1981(昭和56)年に東西線の輸送力を増強するため5000系を転出させることになりました。そこで6000系第22〜28編成を増備して5000系を置き換えています。
(6123・北小金〜南柏・2002年10月6日)
第22編成以降は冷房準備車となり、窓も大型の1段下降窓となるなど、内外装が変化しています。
5000系は北綾瀬支線用の3両編成2本のみが残留しました。
1982(昭和57)年11月15日から常磐線取手まで乗り入れ区間を延長しました。
これに合わせて国鉄は203系を投入しています。
(クハ203-1・表参道・1982年)
203系はアルミ車体に201系の電機子チョッパ制御を搭載した車両。これでようやく国鉄も6000系に肩を並べることができました。
1982(昭和57)年に投入された量産先行車に続き、103系1000番代を置き換えるために1984(昭和59)年に量産1次車を製造。
(クハ203-2・新松戸・1984年)
1985(昭和60)〜1986(昭和61)年には量産2次車となる100番代が製造されました。
(クハ202-102・北松戸〜馬橋・2011年2月5日)
100番代ではボルスタレス台車が採用されたほか、軽量化とコストダウンが実施されています。203系の増備によって103系1000番代は1986(昭和61)年3月千代田線から撤退しました。
国鉄時代末期の1986(昭和61)年11月1日のダイヤ改正で、使用車両数が増加することとなりましたが、203系ではなく新形式の207系900番代が投入されました。
(クハ207-901・代々木上原・1986年)
車体は205系以来の軽量ステンレスとなりましたが、最大の特徴は国鉄最初で最後のVVVFインバータ制御車だということです。
国鉄では以前からVVVFインバータ制御の研究をしてきましたが、実用試験の段階に入り製造されたのが207系900番代でした。しかし1987(昭和62)年に国鉄は分割民営化されJR東日本が発足。結局207系の量産車が登場することはありませんでした。
1988(昭和63)年には小田急がVVVFインバータ制御車の1000形を開発し、1990(平成2)年から千代田線への乗り入れを開始しました。
(クハ1156・相模大野)
1000形の投入で9000形は千代田線乗り入れから撤退しました。
なお営団も1990(平成2)年に6000系第35編成でVVVFインバータ制御を採用しています。
1991(平成3)年3月16日には小田急への乗り入れを休日まで拡大しました。
1993(平成5)年3月に千代田線の輸送力を増強することとなり、営団は06系1編成を製造しました。
(06 001・北松戸〜馬橋・2011年2月5日)
06系はわずか1編成の存在でしたが、2015(平成27)年9月に廃車され消滅しています。
1999(平成11)年11月27日に千代田線の保安装置がCS-ATCに更新されました。
これにともなって列車本数が増加したため、JR東日本は209系1000番代を2編成製造しました。
(クハ208-1001・北松戸〜馬橋・2011年2月5日)
また、これを機に北綾瀬支線の5000系を置き換えることとし、東西線からアルミ試作車が転入しました。
(5951・綾瀬・2014年5月19日)
転入に合わせてワンマン対応とし、ATOも装備されています。
2000(平成12)年から小田急への乗り入れが大増発されました。そして乗り入れ先も多摩線唐木田も加わりました。
2004(平成16)年に帝都高速度交通営団が民営化され東京メトロが発足。
2007(平成19)年、小田急4000形の直通運転が始まりました。
(クハ4563・向ヶ丘遊園〜生田・2016年8月2日)
4000形の導入で1000形は2011(平成23)年までに千代田線直通から撤退しました。
徐々に世代交代が続く千代田線ですが、その中での最大の出来事が起きたの2008(平成20)年3月15日です。
この日から小田急ロマンスカー60000形MSE車の乗り入れが始まりました。
(「メトロはこね」クハ60001・町田・2011年)
千代田線からの通勤、箱根観光という新しい運用を確立しました。一時は有楽町にも直通しました。
2008(平成20)年9〜11月までメトロ07系が暫定的に運用していました。
2009(平成21)年9月9日からJR東日本E233系2000番代が投入されました。
(クハE232-2005・向ヶ丘遊園〜生田・2016年8月2日)
E233系2000番代の投入で、203系、207系900番代が引退しました。
2010(平成22)年11月4日からは東京メトロ16000系の営業運転がはじまりました。
(16117・向ヶ丘遊園〜生田・2016年8月2日)
16000系の投入によって6000系の置き換えが始まりました。同時に06系も置き換えられてしまいました。
2014(平成26)年4月28日に、北綾瀬支線用に東西線から05系が転入しました。
(05 006・北綾瀬・2014年5月19日)
05系の転入で北綾瀬支線の5000系、6000系が引退。なお北綾瀬支線は今後本線との直通運転が予定されていますので、05系の動向も気になるところ。
そして2016(平成28)年3月26日のダイヤ改正でJR東日本E233系2000番代と小田急4000形の3者乗り入れが始まりました。
現時点ではJR東日本209系1000番代と小田急60000形MSE車だけが、3者乗り入れを実施していませんが、小田急60000形の常磐線乗り入れにはちょっと期待しています(笑