準備工事 | はやこま すていしょん!

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更新頻度は遅めですが、日々の出来事や趣味的なことを書いていこうかなと思っています。若干鉄分は濃い目の予定(笑

鉄道車両の中には将来の転用などを考慮して、機器や設備の設置を容易にできるよう考慮した設計をしたものがあります。いわゆる準備工事というものです。

(「サンダーバード」クロ683-4508・津幡~倶利伽羅・2015年2月12日)
ひとくちに準備工事と言っても大なり小なり多種多彩です。ここではそんな準備工事の一例を挙げてみましょう。

貫通扉

(「サンダーバード」クロ683-4505・富山・2009年6月25日)
683系4000番代クロ683形4500番代や287系クモロハ286形は、ほかの先頭車と同様の先頭部形状をしていますが、基本的に連結する運用がないため準備工事として落成しました。だから貫通扉部分は塞がれていて、連結しても通り抜けはできません。

乗降扉

(サハ789-105・函館運輸所・2007年6月16日)
海峡線「スーパー白鳥」に投入された789系は、北海道新幹線開業後に札幌圏に転属することが考慮されています。その際に乗降扉を増設するための準備工事が施されています。

パンタグラフ

(モハ223・網干総合車両所・2015年11月3日)
JR西日本は223系に始まる1M方式電車で極力設計の共通化を図っています。直流電車の電動車については寒冷地に転属した際に霜取り用のパンタグラフを増設することができるよう、準備工事をしています。321系に始まる0.5M方式電車でもパンタグラフ搭載車にはこのような準備工事がされています。
なお床下の補機類についても、非搭載車両には準備工事されています。

自動分割併合装置

(「あさま」E224-18・東京・2010年9月3日)
E2系J編成の盛岡方先頭車E224形100番代は、E3系と併結するため自動分割併合装置を搭載していますが、E2系N編成の長野方先頭車E224形0番代にも自動分割併合装置の準備工事が施されています。ただし先行車N1編成は除きます。
またJ7編成以降の東京方先頭車E223形0番代にも自動分割併合装置の準備工事をしています。

(「はやて」E223-24・福島・2011年5月7日)
現在J編成は10両編成となっていますが0番代登場時は8両編成でした。もし実装されれば2編成連結した16両編成運転をしていたかも知れません。
ちなみにE2系1000番代先行車J51編成の東京方先頭車E223形1100番代だけは自動分割併合装置を実装しています。

車体傾斜装置

(781-7001・博多総合車両所岡山支所・2016年5月22日)
N700系16両編成は東海道新幹線のカーブ区間の通過速度を向上するために車体を1度傾斜させる装置を搭載していますが、山陽・九州新幹線のN700系8両編成では車体を傾斜させる必要がないので、準備工事に留めています。
また車体傾斜装置の使用を停止したJR北海道では、キハ261系1000番代の増備車には装置の搭載をしていません。これも準備工事と言えるかな?

冷房装置

(キハ56 204・五稜郭車両所・2002年8月7日)
優等列車の冷房化の過渡期に製造された国鉄急行形車両や、国鉄時代末期に地方線区向けに製造された近郊形電車の一部は冷房準備工事車として落成しました。
製造時期によって冷房装置の形式は異なりそれぞれに合わせた設計をしていましたが、違う形式の冷房装置を搭載した車両もあります。
また急行形気動車では最後まで冷房化されなかった車両も多数あります。

ATC装置

(クハ103・鶯谷・1982年)
山手線と京浜東北線をATC化するため、ATC装置搭載対応のクハ103形が大量に製造されましたが、初期の車両はATC装置搭載準備車として落成しました。その後ATC装置を搭載して両線のATC化を実施しています。

横軽装備

(「あずさ」クハ183-1017・高尾~相模湖・1983年)
183系1000番代は豪雪で181系の故障が相次いだ上越線向けに登場しましたが、そのベースは同時期に設計中だった横軽協調運転仕様の189系でした。またこの頃は上越新幹線の建設も進んでいたので、183系1000番代を各地に転用する際に横軽協調運転用の装備を加えて189系化することも考慮されていました。実際に189系に改造された183系1000番代が存在しました。

電装

(クハ100-12・関東鉄道学園・1985年)
101系は全電動車方式で設計されましたが、変電所の容量が追いつかないまま、大量増備の必要が生じました。そこで、将来電動車化することを考慮した電装準備車としてクハ100形、クハ101形、サハ100形、サハ101形が登場しています。
しかし、実際に電装されることはありませんでした。

実装されるかどうかはともかく、準備工事している部分が興味深い車両って結構いて、見ていて楽しいと思うのは自分だけではないはずです(笑