
(クハ89・自動車学校前~さぎの宮・2015年1月25日)
モハ30形は1958(昭和33)~1980(昭和55)年にかけて28両が製造されました。そのうち制御電動車のモハ30形が16両、制御車のクハ80形が12両となっているため、モハ同士を連結した編成が2編成存在しました。
車号も複雑で、製造順に並べると制御電動車がモハ31~39、30、29、28、27、26、25、51、制御車がクハ81~89、80、79、61となります。
共通しているのは2扉ロングシートの車体と、自動空気ブレーキを装備していること。
しかし乗降扉の形態は2タイプあり、モハ31~39、クハ81~89は片開き扉で、それ以降の車両は両開き扉とな前面スタイルはいわゆる湘南スタイルですが、最終増備車のモハ51+クハ61のデザインは連続2枚窓と大きく異なります。貫通路の幅もこの編成だけ狭幅で、ほかの編成はキノコ形の広幅貫通路となっています。
また前面行き先方向幕があるものとないもの、側面行き先表示が差し込み式のものと幕式のもの、運転台が半室式と全室式、前面車番が右側と左側、さらに分散クーラーを搭載した新製冷房車と集中式クーラーを搭載した冷房改造車、非冷房車があるため、バリエーションが複雑です。
駆動方式については吊りかけ駆動が基本でしたが、モハ51だけはカルダン駆動です。
またモハ30~35、25~28は吊りかけ駆動ながら発電ブレーキを搭載しており、減速時にも吊りかけ駆動のサウンドが響きます。台車はトーションバー式を採用していましたが、モハ25+クハ85ではインダイレクトマウント空気ばね台車に変更。さらにモハ51+クハ61はダイレクトマウント空気ばね台車に変更されています。
なおモハ36~39、29、クハ86~89、79は旧型車の機器流用車で、発電ブレーキを装備せず、台車もイコライザー式を流用していました。後年冷房改造された車両は台車をインダイレクトマウント空気ばね台車に交換したようです。
さて、今回勇退する編成の制御電動車はモハ27形。

(モハ27・新浜松・2015年1月25日)
モハ27形は1974(昭和49)年8月に新製されました。両開き扉を備えた車体に、集中式クーラーの搭載改造をしています。車号は前面左側、前面と側面に行き先方向幕を備えています。運転台は全室式となっています。
吊りかけ駆動で発電ブレーキ付きです。
台車はトーションバー式のND-507D形。

(モハ27・新浜松・2015年1月25日)
これはスイスのSIG社と技術提携した日本車輌製造が開発した台車で、枕ばねがトーションバーになっています。そのため、一般的によく見られるコイルばねや空気ばねが台車中央部に見当たりません。
トーションバーはねじれ方向に対する復元力をばねの力として使うもので、台車ではアンチローリング装置に採用例がみられますが、枕ばねは珍しいのではないでしょうか。
コンビを組んでいたクハ89形は1963(昭和38)年12月に新製されましたが、機器類は旧型車のものを流用しています。現在の遠州鉄道所属車では最古参です。

(クハ89・新浜松・2015年1月25日)
乗降扉は片開きで、運転台は半室式。前面と側面に行き先方向幕を備えています。前面の車号は右側に配置。こちらも冷房改造車です。
クハ89は機器流用車だったため、当初はイコライザー台車を履いていましたが、後にインダイレクトマウントのND-306AT(もしくはND-306BT)に交換されました。

(クハ89・新浜松・2015年1月25日)
国鉄などで見られるインダイレクトマウント台車は台形心皿で車体を支持しますが、この台車はイコライザー台車時代の側受をそのまま使っているようで、ボルスタの上に側受が見えます。
そのほか軸箱支持装置は軸箱守式ですし、両抱踏面ブレーキを採用しているなど、国鉄のインダイレクトマウント台車は細部がかなり異なり、興味深いですね。
今回がラストランということで、沿線には大勢のファンが駆けつけていて地元の人がびっくりしていました(笑

(モハ27・自動車学校前~さぎの宮・2015年1月25日)
見れば見るほど面白い30形。子供の頃、初めて遠州鉄道を知ったときは、まったく区別がつかなくて、同じタイプの車両で統一されていてつまらないと勝手に思っていたので、足を運ぶことはなかったのですが、あのときにしっかり記録しておけば良かったとちょっと後悔しちゃいました。