
(「水上」クハ185-206・尾久~赤羽・2015年1月4日)
使用されたのは大宮総合車両センターの185系6両編成で、下り列車となる「水上91号」が12月30~31日に運転され、上り列車となる「水上90号」が1月2~4日に運転されただけでした。
首都圏から温泉地へ向かう特急列車はいずれも衰退しているものの、伊豆方面へ向かう「スーパービュー踊り子」「踊り子」と草津方面へ向かう「草津」は観光に特化したダイヤ構成で比較的安定した乗車率を誇っています。「草津」には常磐線から転用された651系を投入し、「踊り子」の185系も近い将来E257系に置き換えられるといわれています。それらと比べると「水上」の衰退ぶりは目を覆わんばかりです。
「水上」の定期運行が終了したのは2010(平成22)年12月12月4日のダイヤ改正でのこと。このダイヤ改正で運転日は土・休日となりました。

(「水上」クハ185-314・井野~新前橋・2011年1月10日)
当初は2往復運転されましたが、2011(平成23)年に発生した東日本大震災以後は1往復に減便。そして2012年3月17日のダイヤ改正後は「草津」との併結運転を止めて単独運転となり、運転日数も大幅に減少しました。

(「水上」クハ185-314・行田~熊谷・2013年1月2日)
予断ですがOM08編成は157系を模した国鉄特急色に塗り替えられています。
そんな「水上」のルーツは1957(昭和32)年から上野~石打間に運転された臨時準急「ゆけむり」です。いかにも温泉をイメージさせる名称の準急列車は水上~石打間を快速として運転。新前橋電車区の80系を使用しました。1958(昭和33)年には「ゆけむり」を増発。また上野~越後湯沢間に臨時準急「奥利根」が設定されました。「奥利根」も沿線の奥利根温泉郷を連想させる列車名ですね。
1959(昭和34)年に「ゆけむり」は「みくに」に改称されて一旦消滅。「みくに」の語源は国道17号線が越える三国峠です。1960(昭和35)年には毎日運行の臨時準急「ゆのさと」の運転が始まりました。
1961(昭和36)年、153系を使用した準急「上越いでゆ」を上野~水上間で運転開始。また「奥利根」は新宿始発、中央・八高線経由水上行きの気動車準急に改められ、従来の「奥利根」は「苗場」に改称。1962(昭和37)年に「上越いでゆ」は廃止されました。
1963(昭和38)年には新前橋電車区に165系の配置が始まり、翌1964(昭和39)年に「みなかみ」の運転が始まるとともに、「奥利根」は「みくに」に改称されています。
そして1965(昭和40)年、水上方面への列車名を「奥利根」に統一。同時に八高線経由の「みくに」は廃止されました。そして「奥利根」は1966(昭和41)年から急行に格上げされています。
1968(昭和43)年に「奥利根」を「ゆけむり」に改称。以後「ゆけむり」が水上方面への主力急行となり、上野~水上間に運転。さらに越後湯沢や石打に季節延長も行なっています。

(「ゆけむり」クモハ165・鶯谷・1982年8月)
新前橋電車区の165系は、新製当初は信越急行も受け持っており、EF63に推進されて66.7‰急勾配の碓氷峠を越えていました。その関係で重い電動車を麓側に集めるため編成全体を方向転換。奇数設計クモハ165形が偶数方向の上野側を向いていました。
1982(昭和57)年には老朽化した165系を置き換えと、東北・上越新幹線大宮開業時に上野~大宮間に運転される「新幹線リレー号」に使用するために、185系特急形電車の耐寒耐雪仕様車185系200番代が新前橋電車区に新製配置されました。そして「ゆけむり」の一部が185系200番代に置き換えられました。

(「ゆけむり」クハ185-302・上野・1982年8月)
185系200番代は165系との併結運用があったため、165系と同じように編成を方向転換し、グリーン車の位置も6号車に揃えていました。現在は本来の方向に転換されるとともに、グリーン車の連結位置を中央の4号車に移動。さらにグリーン車を抜き取った6両編成や、グリーン車2両入り10両編成も登場するなど大きく変化しています。
1982(昭和57)年11月15日の上越新幹線の開業で「ゆけむり」一部をL特急「谷川」に格上げしました。

(「谷川」クハ185-306・湯桧曽~土合・1983年11月)
当時は下り4本、上り5本が設定され、運転区間は上野~水上間で、越後湯沢と石打への季節延長もありました。またこのときは165系「ゆけむり」も3往復残されています。
1985(昭和60)年3月14日のダイヤ改正で上越新幹線上野~大宮間が開業。これによって「新幹線リレー号」は廃止され、余剰となった185系200番代によって165系を置き換えて「ゆけむり」は廃止されました。そして自由席主体の新特急「谷川」として統合。ヘッドマークにも「新特急」の文字が入りました。

(「谷川」クハ185-316・上牧・1990年)
「ゆけむり」統合した「谷川」ですが、実際の運転本数は5往復なので微増もいいところです。
1995(平成7)~1996(平成8)年に185系200番代をリニューアル改造してカラーリングを一新するとともにリクライニングシートに交換するなどサービスアップが図られました。
そして1997(平成9)年に上越新幹線に「たにがわ」が設定されたのに際して、列車名を新特急「水上」に変更。ひらがなと漢字という違いはありますが32年振りに名称が復活しました。

(「水上」クハ185-306・新町~倉賀野・2007年1月20日)
2002(平成14)年に新特急、L特急の呼称を廃止。また臨時列車として「リゾート水上」も運転されましたが、ヘッドマークはそのままでした。
そのほか臨時列車として183系を使用した列車もありました。

(「水上」クハ183-1505・水上・2006年11月5日)
183系のヘッドマークは「谷川」と共通するデザインで、個人的には好きでしたね。
しかし2004(平成16)年に1往復が臨時「リゾート水上」化されて、衰退が始まりました。温泉列車でありながら渋川~水上間の乗車率が低かったようです。もっとも水上方面の温泉需要は上越新幹線上毛高原からバスという方法があるので致し方ないのかもしれません。
いまではすっかりレアな存在となってしまった「水上」。

(「水上」クハ185-306・尾久~赤羽・2015年1月4日)
今後の動向が気になる列車のひとつです。