
(「SL銀河」キハ143-701・陸中大橋・2014年5月18日)
機関車牽引列車の最後尾に運転台や前照灯がついていることに違和感を感じる人もいるかも知れませんが、実は客車に運転台や前照灯がついている例もあります。もっとも客車の場合は機関車が最後尾から押す推進運転用なので、この編成とは成り立ちが全然異なりますが。
なお「SL銀河」ですが、見る角度によっては気動車であることをまったく感じさせず、普通の客車列車に見えます。

(「SL銀河」C58 239・土沢・2014年5月18日)
それもそのはず、このキハ141系700番代のベースとなったJR北海道キハ141系は50系51形客車を改造した気動車なのです。
50系51形は国鉄50系客車の北海道仕様として1978~1982年に製造されました。

(オハフ51・白石・1979年1月)
50系51形は中間車のオハ51形が62両、緩急車のオハフ51形が68両製造されました。しかし客車列車の減少に伴い活躍の場を狭められていきました。その結果1990~1995年にかけてオハフ51形44両を気動車化したのがキハ141系です。

(キハ141-12・桑園~札幌・2010年5月6日)
種車がオハフ51だけなのは、乗務員室のスペースをそのまま運転台や機器室に転用することができたことと、トイレを備えていたのがオハフ51形だけだったことで、改造コストを抑えて気動車化しました。
しかし活躍の場だった学園都市線が電化されたため活躍の場を失いました。余剰となった車両は室蘭本線へ転用されたり、ミャンマーへ譲渡されたりしましたが、そんな余剰車のうち4両をJR東日本が購入したわけです。では各車両をみてみましょう。
1号車
キハ142-701

(キハ142-701・釜石・2014年5月17日)
外装のシンボルはさそり座です。種車のキハ142-201は250ps出力のDMF13HS形エンジンを2基搭載する車両で、動力システムはそのまま流用しています。また非冷房でしたが、今回の改造で冷房装置を搭載しました。
車内は「銀河鉄道の夜」の作者である宮沢賢治の世界観をイメージしたものとなっています。

正座を意識したパーテーションを設け、荷棚部分にはステンドグラスの装飾も施しています。このコンセプトは各車共通です。また花巻寄りにはプラネタリウムを設置しています。
2号車
キサハ144-702

(キサハ144-702・土沢・2014年5月18日)
外装のシンボルは射手座。
フリースペースは「銀河鉄道の夜」に関連する資料を展示するギャラリーになっています。

またトイレも設置されています。
3号車
キサハ144-701

(キサハ144-701・陸中大橋・2014年5月18日)
わし座を外装のシンボルとし、車内にはイーハトーブと宮沢賢治に関する資料が展示されています。

2、3号車の種車となるのはキサハ144-101、103。両車ともオハフ51形を改造した付随車で動力は持ちません。種車時代から冷房装置を発電機を搭載しています。
4号車
キハ143-701

(キハ143-701・陸中大橋・2014年5月18日)
はくちょう座がシンボルとなっています。種車はキハ143-155。JR北海道キハ150形のシステムを用いて450ps出力のDMF13HZ形エンジンを搭載し、空気バネ付ボルスタレス台車を装着。そのため、乗り心地はほかの車両と異なりますが、コイルバネ車よりも前後衝動が大きい気がしました。
車内の花巻寄りはバリアフリースペースも含めた指定席。

また車内の大部分はフリースペースです。

売店もあり、各種グッズや飲食品の販売を行なっています。

トイレはバリアフリー対応。

向かい側は沿線縁のものを展示するギャラリーになっています。
これが「SL銀河」編成ですが、種車の室内は通勤輸送を考慮したものでした。

ここから大きく変わったものです。
「SL銀河」に限った話ではありませんが、現代の観光列車は創意工夫がいろいろ見る事ができて楽しいですね。

(キハ142-701・釜石・2014年5月17日)