鉄道の車両限界(新幹線編) | はやこま すていしょん!

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更新頻度は遅めですが、日々の出来事や趣味的なことを書いていこうかなと思っています。若干鉄分は濃い目の予定(笑

前回は在来線の車両限界 について書きましたが、今回は新幹線です。

(小山新幹線車両センター・2012年5月19日)
新幹線電車は在来線との直通運転を考慮せず、しかも大量輸送を図っていたため、国鉄は新幹線電車の車両限界と建築限界に関しては在来線の枠組みにとらわれず、まったく新しいルールで設定しました。
大量輸送を行なうために車体の断面積もかなり大きめに設定し、車両限界は最大幅3,400mm×最大高さ4,600mmとなりました。これは在来線の最大幅3,000mm×最大高さ4,100mmよりも一回り大きい寸法です。
その結果0系、100系、200系、300系、500系、700系、800系、E1系、E2系、E4系の全幅は3,380mmで揃っています。

(222-1510・小山新幹線車両センター・2012年5月19日)
在来線は非電化からスタートしたので、屋根まわりの限界ラインはカーブしていましたが、新幹線は最初から電車運転で計画されたので、最大高さまでそのままの幅となりって、断面の形状はほぼ四角くくなりました。従って2階建て車両も屋根まで最大幅で作ることができます。

(E444-6・小山新幹線車両センター・2012年5月19日)
2階建て車両の全高は、100系で4,490mm、200系が4,470mm、そしてE1系、E4系が4,485mmとなっていて、さすがに車両限界いっぱいの高さにはなっていないようです。

なお、屋根高さについては高速化に伴う車体断面積の縮小と低重心化ともない年々低くなっています。200系の全高は4,000mmでしたが、300系以降の平屋タイプの新幹線電車はだいたい3,650mmぐらいの高さになりました。

(323-37・浜松工場・2009年7月26日)
このあたりが、頭上空間の快適性を確保するための限界ラインと言えそうです。

N700系16両編成は車体傾斜装置を搭載し、車体を最大1度傾けるので、その分全幅を少し狭めた3,360mmとなりました。

(783-22・浜松工場・2010年7月25日)
N700系8両編成は車体傾斜装置を搭載していませんが、16両編成同様3,360mmで揃えられました。
1.5度車体を傾斜させるE5系の全幅は3,350mmとなっています。

(E514-1・小山新幹線車両センター・2012年5月19日)
全幅はE2系よりも狭くなりましたが、内装材を工夫して客室幅はE2系よりもちょっと広くなっています。
なおE7系は車体傾斜装置を搭載していないので全幅は3,380mmに戻りました。

ちなみに中間車の基本寸法は車体長24,500mm、台車中心間距離17,500mm、前後オーバーハング3,500mmで揃えられています。

(25-7210・新下関・2008年10月24日)
これらの寸法はカーブやポイント区間を通過する際に建築限界に支障しないように決められたものです。
先頭車については先頭部の長さによって全長が変わってきます。車体長が一番長いのは700系、800系、N700系の27,150mm。

(822-3・新鳥栖・2013年4月27日)
先頭部長が8.7~10.7m程度なので気付きませんでした。なお地上施設の関係で東海道新幹線16両編成の編成長はこれが限界なのだそうです。
ちなみに先頭部が一番長い15mを誇る500系の車体長は26,750mm。

(「こだま」522-7004・東広島・2008年12月1日)
同じく先頭部長15mのE5系はもっと短くて25,750mmです。

(「なすの」E523-21・那須塩原・2013年4月13日)
先頭部は窄まっているので、建築限界に抵触する心配はありませんが、併結などを考慮すると、ある程度の限界値はあると思います。

また車両限界が四角なので、大型パンタグラフカバーやパンタグラフ遮音板(JR東海は二面側壁)の設置が可能と なり、パンタグラフの騒音低減を有利にすることができました。

(上野~大宮・2011年11月12日)

(788-7005・博多総合車両所岡山支所・2010年11月7日)
新幹線開発当初にパンタグラフカバーや遮音板の設置は想定していなかったと思いますが、新幹線独自の車両限界のお陰で、270km/h以上の高速運転時の騒音低減が容易になったのは事実ですね。


一方、在来線に直通するミニ新幹線は、当然ながら直通先の在来線の車両限界と建築限界が適用されています。400系は全幅2,947mm×全高4,070mm、E3系やE925形East-iは全幅2,950mm×全高4,070mmとなっています。

(E926-6・小山新幹線車両センター・2012年5月19日)
車体長も在来線サイズで中間車は20,000mmとなっています。

(426-203・新庄・2009年12月6日)
全幅が狭いため、新幹線区間の駅ではホームとの隙間を埋める可動式ステップを使用します。

(「やまびこ」E322-1・東京・2010年9月18日)
床下面積が狭いので、400系とE3系は天井上に空調を設置していましたが、E6系では重心を下げるために床下空調として、全高を3,650mmとしています。

(E621-1・小山新幹線車両センター・2012年5月19日)
E6系はE5系同様車体傾斜装置を備えていますが、在来線区間では使用しないので全幅は2,945mmとなっています。

ミニ新幹線の課題は在来線の建築限界に抵触するために、大型パンタグラフカバーや遮音板を設置できないということです。
400 系の先行車やE3系先行車、E955形FASTECH360Zでは、可動式のカバーや遮音板装備して在来線区間ではカバーや遮音板を格納する方式を試しました。しかし、万が一可動装置が故障して格納できなくなってしまうと在来線の建築限界に抵触するため、在来線区間での運転継続できません。またカバーや遮音板がセットできなくなると、新幹線区間での騒音基準を満たせなくなります。そのため、可動機構は実用化されていません。
400系は小型のスロープをパンタグラフの前後に設置して240km/h運転時の騒音レベルをクリアしました。

(新庄・2009年12月6日)
E3系は低騒音形シングルアームパンタグラフを開発し、小型の碍子カバーと組み合わせて275km/h運転を可能としました。

(上野~大宮・2011年11月12日)
そしてE6系は改良された低騒音形シングルアームパンタグラフと、車両限界内に納められたパンタグラフ遮音板で320km/h運転時の騒音レベルをクリアしました。

(大宮・2011年11月20日)
同じ320km/h運転をするE5系は巨大なパンタグラフ遮音板を搭載していますが、実は320km/h運転時の騒音レベルに余裕があると言うことを意味していますね。

(仙台・2010年11月25日)
その一方でE6系の車体断面積はE5系より小さいので、先頭部長さが13mでも十分な環境性能を確保しています。

フル規格新幹線は車両限界の余裕が大きいのが幸いして、居住性を悪化させることなく300km/hや320km/h運転をしています。これが新幹線の凄いところだと言えますね。