振り子車両E351系の後継車は車体傾斜装置付きのE353系に! | はやこま すていしょん!

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更新頻度は遅めですが、日々の出来事や趣味的なことを書いていこうかなと思っています。若干鉄分は濃い目の予定(笑

2月4日、JR東日本はE353系の開発 を発表しました。 プレスリリース によるとE353系はE351系を置き換えるための新形式で、2015年夏に量産先行車を落成させる予定。量産先行車は基本9両編成と付属3両編成の12両だとのこと。

JR東日本プレスリリース より)
伝統の継承、未来への躍動を外観コンセプトとし、前頭部の黒色と異様な縦長なランプ類、そして高い屋根が印象的。白基調で独特な形状の裾を持つアルミ車体は、最近のJR東日本特急車らしいと言えます。

内装コンセプトは南アルプスと梓川の清らかさ、ビジネスの機動性、レジャーへの高揚感。

JR東日本プレスリリース より)
全座席にコンセントや大型テーブルを配置、バリアフリー設備の改良やLED照明化、セキュリティの強化などが推し進められています。

置き換え対象となるE351系は「スーパーあずさ」に使用される、制御付き自然振り子装置を搭載する車両。

(「スーパーあずさ」クハE351-1001・上野原・2009年5月1日)
台車枠の上に振り子コロを装備し、その上に車体と直結させた円弧状の振り子はり搭載。床下機器が遠心力でカーブの外に投げ出されるの利用して、車体を最大5度まで内側に傾斜させることができます。これによって乗客に対する超過遠心力を低減し、半径400mの曲線区間で本則+25km/hで走行します。また曲線区間に進入する前に振り子シリンダーを制御して予め車体を傾斜させてたり、直線区間に戻る際に振り子シリンダーを制御して、振り子遅れや揺り戻しという乗り心地を悪化させる要素を追放しました。

しかし振り子車両には欠点があります。乗客に対する遠心力は少なくなりますが、レールに対する横圧は低減されず、むしろスピードアップによって増大し、レールへの負担も大きくなるという問題がありました。さらに構造が複雑な振り子装置を搭載するため、製造コストとメンテナンスコストも増大。

そのためE351系の製造は基本8両編成、付属4両編成各5本ずつに留まりました。
またまた制御付き自然振り子装置の振り子シリンダーを作動させるために、車両にインストールする線路データが必要で、新規投入するための初期コストも高くなるので、JR東日本の場合八王子~信濃大町間以外での振り子車両の新規投入拡大は実施されず、以後183・189系の置き換えにはE257系を投入しました。

(「かいじ」クハE256-2・上野原・2009年5月1日)
E257系はアルミ車体の採用による軽量化やクーラーの床下配置など低重心化、加速性能を向上させていますが、振り子装置を搭載していませんので曲線通過速度は本則+15km/hとなり、所要時間が伸びてしまいます。

そこでE353系には空気バネ上昇式車体傾斜装置を搭載する事にしました。これは空気バネに空気を送り込んで車体を1~2度傾斜させることで曲線通過速度を高める仕組みで、低コストでスピードアップを図ることができるのが特徴。新幹線ではN700系やE5系、E6系に採用され、在来線でもJR北海道キハ201系、キハ261系、小田急50000形VSE車、名鉄2000系に採用されているほか、今年6月以降に登場する予定のJR四国8600系にも採用されると発表されています。

JR四国プレスリリース より)
JR四国8600系も振り子式の気動車2000系を置き換えるものです。

振り子車両は国鉄381系が中央西線、紀勢本線、伯備線に投入されたのが最初でしたが、高速道路への対抗策としてJR北海道、JR東日本、JR四国、JR九州も採用しました。
しかし振り子車両の費用対効果が問題視され、JR西日本は283系を少数製造したのみで、381系の置き換え用としては非振り子車の287系を投入。JR北海道も振り子車両のキハ283系の増備を中断し、車体傾斜装置付きのキハ261系に移行しました。多少昇時間が伸びてもコスト低減を重視したわけです。そして今回JR東日本、JR四国も同じ道を歩むことになりました。
所要時間短縮による競争力アップよりもコストダウンが先決というのは趣味的には残念。もっとも、新型の方が加速力が高い場合が多いので、かつて「くろしお」に485系が投入された時のような悲惨な所要時間増大とはなっていませんが、いずれにしても振り子車両が今後増える可能性は低そうですね。