
(「うなづき」モハ16013・浦山・2014年1月26日)
西武5000系は1969年10月14日の西武秩父線開通と同時に運行を開始した池袋~西武秩父間有料特急用車両です。車体は特急車らしいデッキ付き2扉で、車内には回転クロスシートを配置。また西武鉄道初の冷房車としてFTUR-375-203A形集中冷房装置を搭載。
そしてクリームに赤いラインのカラーリングから「レッドアロー」という愛称がつけられていました。

(「ちちぶ」クハ5500・西武秩父・1982年)
1970年までに4両編成の5501、5503、5505、5507編成の4本が製造されました。
編成構成は
飯能・西武新宿←クハ5500(奇数)+モハ5000(奇数)+モハ5000(偶数)+クハ5500(偶数)→池袋・西武秩父
シートモケットは各号車で異なり、飯能向きから順に若草色、エンジ色、金茶、青となっていました。
また飯能向き先頭車クハ5500形(奇数)の車端部には循環式汚物処理装置付きのトイレと車販準備室を設置。
斬新な車体に対して駆動装置は通勤車の西武101系と歯車比に至るまで共通で、性能も同一なため併結も可能でした。台車も101系と同じダイレクトマウント式空気バネ台車で、動力台車はFS372形、付随台車がFS072形を装着。
1974年製造の5509編成は6両編成化され、シートも簡易リクライニングシート化さされるとともにモケット色もオレンジに統一されました。また4両編成も1976年までに5509編成と同仕様の中間車を連結した6両編成化。この時一時的に6両+4両の10両編成も実現しています。
なお編成は以下の通り。
飯能・西武新宿←クハ5500(奇数)+モハ5000(奇数)+モハ5000(偶数)+モハ5050(奇数)+モハ5050(偶数)+クハ5500(偶数)→池袋・西武秩父
1978年製造の5511編成は電照式愛称表示器を装備したほかシートをフリーストップ式のリクライニングシート化され、モケット色もエンジ色に変更。また冷房装置も改良型のFTUR-375-203C形となりました。
後に5501~5509編成も電照式愛称表示器を設置し、シートモケット色もエンジ色に変更されました。
1987~1988年に内装の更新修繕工事を実施。シートを5511編成仕様に統一するとともに、モケット色の変更、自動販売機の設置などの様々な改善が施されましたが、老朽化が進んだため後継の10000系に置き換えられ、1994年から廃車が始まりました。その際5000系の走行機器は10000系に流用され、1995年に全車廃車となりました。
廃車された5000系のうちクハ5503を横瀬車両基地で保存。またクハ5504の前頭部も保存されています。

(クハ5503・横瀬車両基地・2007年10月5日)
クハ5503は電照式愛称表示器を撤去し、電気連結器を装備するなど前面は登場時の姿に戻されました。
一方富山地方鉄道では非冷房車4両を置き換えて冷房化率100%を図るため5000系を調査して6両の購入を決定しました。しかし前述の通り走行機器は10000系に流用されるため、3両編成2本分の車体を購入して、機器の搭載工事を実施し16010形となりました。
この時譲渡された車体は
クハ5501+モハ5052+クハ5502
クハ5507+モハ5058+クハ5508
このうち、クハ5501とクハ5507を電装して
モハ16011+モハ16012+クハ111
モハ16013+モハ16014+クハ112
としています。
車体や塗装は基本的に西武5000系のままですが、電装されたクハ5501とクハ5507にはパンタグラフを搭載。主制御器と主電動機はJR九州485系の廃車発生品であるCS15F形とMT54形、台車も元485系のインダイレクトマウント式空気バネ台車のDT32形とTR69形を流用。ただし主抵抗器は新造しました。電動空気圧縮機は都営5000形のものを流用。なお電動発電機は西武5000系のものです。

(浦山・2014年1月26日)
歯車比は第1編成が485系のままの3.50でしたが、第2編成は4.82に変更され、後に統一。
またクハ5501のトイレと車販準備室は使用停止措置ととりましたが、クハ5507は窓とつり革を設置して立席スペース化。第1編成も後に改造されました。
ブレーキ装置は営団3000系の廃車発生品。主幹制御器は京浜急行1000形の流用です。

(宇奈月温泉・2014年1月26日)
その関係で抑速ブレーキは使用できません。
2005~2006年にワンマン化と2両編成化を実施。モハ16012形とクハ111形の機器を入れ換えて形式も変更されました。
モハ16011(+クハ111)+モハ16012
モハ16013(+クハ112)+モハ16014

(モハ16012・稲荷町・2014年1月26日)
車内はデッキ仕切り扉の撤去と仕切り壁の縮小、ワンマン機器の設置を実施しています。
改造中間車の形式はサハ111形とならずにクハ111形となりました。そして通常は稲荷町に留置されていました。

(クハ112・稲荷町・2011年1月22日)
手前が第2編成のクハ112で奧が第1編成のクハ111です。
2011年12月、第2編成を改造した観光列車「アルプスエキスプレス」が登場しました。手がけたのはドーンデザイン研究所を主宰する水戸岡鋭治氏。JR九州や各地方私鉄でお馴染みの水戸岡テイストが存分に盛り込まれました。
(続く)