EH800-901を見て複電圧仕様について考えてみた | はやこま すていしょん!

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更新頻度は遅めですが、日々の出来事や趣味的なことを書いていこうかなと思っています。若干鉄分は濃い目の予定(笑

東芝府中工場で製造されたEH800-901。
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在来線は交流20,000Vで電化されているのですが、新幹線は交流25,000Vで電化されていて電圧が異なります。そして北海道新幹線の開業と同時に青函トンネル区間も交流25,000Vに昇圧されます。その結果、新幹線の1,435mm軌間と在来線の1,067mm軌間が共用される同区間を通過する在来線の車両は20,000Vと25,000Vの両方の電圧に対応させる必要があります。そこで複電圧仕様のEH800-901が開発されたわけです。
ところで交流電化区間では20,000~25,000Vという高圧電流を流していますが、実際に運転する際に必要な電圧は直流と同じ1,500Vぐらいです。そのため主変圧器で電圧を下げて使用しています。
主変圧器の構造は簡単に言えば鉄心を挟んで入力側の1次コイルと出力側の2次コイルが配置されているのですが、1次コイルと2次コイルの巻数の差が電圧の差となります。乱暴な表現をすれば25,000回巻いた1次コイルと1,500回巻いた2次コイルを配置すれば25,000Vを1,500Vに降圧できるわけです。
そして1次巻コイル側の入力を20,000Vと25,000Vで切り換えれば簡単に複電圧仕様にすることができます。まぁ実際にEH800がどのような構造を採用したのかはまだわかりませんが。

さて、同じように交流25,000Vと20,000Vを行き来する例は他にもあります。それは言うまでもなく山形新幹線と秋田新幹線です。
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山形新幹線と秋田新幹線は厳密には新幹線ではなく、在来線である奥羽本線と田沢湖線を1,435mm軌間に改軌したものです。そのため交流20,000V電化で、車両限界も在来線規格のままとなっています。
そして両線で使用されるE3系とE926形East-i、そして次期秋田新幹線の主力E6系などは複電圧仕様なのですが、こちらは新幹線区間と在来線区間で求められる性能差が大きいため、25,000V仕様のまま20,000V区間に入線しても許容できる性能を持っているのだそうです。

もちろん、直流電車にも複電圧仕様車はあります。しかし現在も複電圧仕様を活かしているのは箱根登山鉄道の電車のみとなりました。
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箱根登山鉄道は元々直流750Vで電化されていましたが、小田急が箱根湯本に乗り入れる際に小田原~箱根湯本間を1,500Vに昇圧しました。そのため箱根湯本駅構内には直流750Vと1,500Vのデッドセクションがあります。
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電圧だけでなく軌間も異なり、箱根登山鉄道は1,435mmなのに対して小田急は1,067mm。そのため小田原~箱根湯本間は3線軌道となっていました。
現在小田原~箱根湯本間は小田急車のみの営業運転となり3線軌道も廃止されましたが、箱根登山鉄道の車庫は箱根湯本駅のとなりにある入生田のため、入生田~箱根湯本間のみ3線軌道が存知され、出入庫するために複電圧機能を使用しています。

かつては名鉄の美濃町線は鉄道線への直通運転を行ない、直流600Vと1,500Vの複電圧車が存在しましたが、廃線となっています。
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和歌山電鐵の前身である南海貴志川線は直流600Vだったため、検査入場で南海本線を走行するために1,500Vにも対応する複電圧車となっていました。
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これも2012(平成24)年に和歌山電鐵が1,500Vに昇圧されて、無用の装備となりました。

その他にも直流600V~1,500Vの複電圧車の例はあったのですが、すべて消滅しています。
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交流と違って、集電した電圧を使い切る直流電車は電圧の変化に対して抵抗を入れたり、モーターのつなぎ方を変えたりして対処する必要があり、効率はあまり良くなかったようです。

複電圧車って結構大変なことだったんですね。