翌1965(昭和40)年10月1日には特急「ひばり」(上野~仙台)用として50Hz仕様の483系が登場。そして1968(昭和43)年には50/60Hz両対応の485系に発展しました。3形式の違いは主変圧器の対応周波数の違いだけで、付随車は共通となっています。

(特急「雷鳥」・クハ481-21・谷浜・1989年8月)
485系は新性能電車第2世代の頂点とも言える存在。ということでまず485系グループの概要を考察してみようと思います。
485系の車体の基本寸法と接客設備は151系、161系(後に181系に改造、以下181系)を基本としていますが、相違点はかなりあります。こちらは181系100番代中間車の車体。

(モハ180-114・小出)
全長(連結面間長)20500mm、全幅2949.2mm、屋根高さ3350mm、床面から窓までの高さ855mm、普通車の窓寸法1435×645mm、窓柱385mm、一等車(現グリーン車)の窓寸法975×645mm、窓柱185mmとなっています。また屋根上にAU12ユニットクーラーを6基搭載し、2基ひと組できのこ形のカバーに納めているのが基本スタイルです。
この点は485系も踏襲しています。唯一屋根高さが181系より125mm高い3470mmとなっています。その理由は主変圧器を搭載しているからなのですが、詳しくは後述します。

(モハ485-81・新大阪・2010年1月29日)
車端部に700mm幅の乗降扉とデッキ、便洗面所が設置されていますが、181系は偶数側、485系は奇数側車端部にあるのが大きな違い。また交流電化区間の電車客車共用ホーム高さ920mmに対応させるため、481系の乗降扉はステップ付きです。
さらに国鉄形電車として初めて電動行き先方向幕(登場当時18コマ、現在は40コマ)が設置されました。
車体断面寸法も同じ。床面から823mmの部分を最大幅2949.2mmとして、裾をカーブで絞り、側窓を2°傾斜させたスタイルとなっています。異なるのは車端ダンパの位置で181系は右側。

(クハ181-45・鉄道博物館・2009年5月13日)
一方485系の車端ダンパは左に変更されているのが大きな違いです。

(モハ484-61・鉄道博物館・2009年5月13日)
理由はわかりませんが、もしかするとM’車の引き通し線が右側にあることと関係しているのでしょうか?
181系ではM車にパンタグラフ、主制御器、主抵抗器を集中配置していました。485系ではM車に主制御器、主抵抗器を搭載し、M'車には主変圧器、主整流器などとともにパンタグラフを搭載しました。

(モハ484-71・新大阪・2010年1月22日)
また屋根上のスペースの都合上には交流機器を搭載するスペースを確保するため、AU12を3基に半減し、不足分を補うため、床上にAU41クーラーを3基搭載しています。
前述の通り、M'車の床下に搭載された主変圧器の関係で485系の床面高さは181系よりも125mm高くなっています。この結果、181系と485系を混結するとこのような凸凹が生じます。

(サロ181-1101・小出)
写真は上越新幹線開業後にサロ48が1500番代に改造することを前提に新製されたサロ181形1100番代で、181系でありながら485系と同仕様で製造されたため、このように125mmの段差が付いていました。
先頭車であるクハ481は、クハ151・161同様のボンネットスタイルを採用しました。ボンネット内部に150kVA容量のMH93-DM44電動発電機(MG)と3000L/min容量のMH92-C3000空気圧縮機(CP)が搭載されているのも同様です

(クハ181-1・川崎重工業・2009年10月11日)
クハ151・161は全長21600mm、全幅2949.2mm、運転台屋根高さ3880mm。屋上に前照灯1灯とウインカーランプ、腰部左右に前照灯と尾灯を配置。腰部の前照灯はレール面高さ1800mm、尾灯は1475mm、左右2100mm間隔で配置されていますが、
クハ481もボンネット部分の寸法はまったく同じです。

(クハ481-34・日暮里)
しかしウインカーランプは省略。また481系は床面高さと客室屋根高さが125mm高いため、尾灯と裾の寸法が125mm細くなっているほか、ライト部分の赤帯と窓部の赤帯が繋がっていないのがわかると思います。
その他クハ151
やクハ161との区別や50/60Hzの周波数仕様を区別するため、眉が装備されたり、スカートが塗装されたりしていましたが、そのお話しは次回にて。
また交流区間で、交流電流を検知するための逆L字型の検電アンテナが運転台上に設置されているのも特徴的です。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
子供の頃はこんなアンテナで架線の交流をどうやって検知するのかと不思議に思っていたのですが、架線からの絶縁距離300mm以内に配置してあれば検知できるようです。
続いて485系のメカニズムを考察してみようと思います。
485系に限らず、交直両用電車の走行メカニズムは直流電車と変わりません。つまり直流1500Vを電源として運転するわけですが、交流電化区間を走行する際に集電した交流25000Vを直流に変換するための装備が追加されていて、スイッチで切り換えて使用する構造になっています。
そのスイッチがこの交直切換器です。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
写真右手前の碍子上に回転スライド式のスイッチがあり、直流回路と交流回路を切り換えますが、写真は直流モード。
交流モードの場合は写真奧にある主ヒューズにスイッチが差し込まれます。なお交流モードのまま直流電化区間に誤進入すると、主ヒューズが溶けて交流機器を保護する役割を果たしています。
逆に直流モードで交流電化区間に突入すると左の直流避雷器が動作するのですが、これを隣接する変流器が検知して、直流回路の保護装置を動作させます。
交流25000Vは主変圧器で交流1500Vに電圧をさげます。481系は60Hz用のTM10、483系は50Hz用のTM9を搭載していましたが、485系では両周波数対応のTM14になりました。これが3形式最大の違いです。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
降圧された交流電流は主整流器で直流1500Vに変換されます。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
そして平滑リアクトルと交直転換器までは交流回路となり、そこから先は直流回路と同様です。
主制御器はノッチ戻し制御と抑速発電ブレーキを装備したCS15を搭載。

台車はインダイレクトマウント構造のDT32/TR69。主電動機は120kW出力のMT54を搭載しています。

まさに485系は新性能電車第2世代としての基本システムを備えた、万能型電車と言えます。それ故に長期にわたって様々なバリエーションが登場したと言えるでしょう。