「新幹線なるほど発見デー」でいろいろ発見! | はやこま すていしょん!

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更新頻度は遅めですが、日々の出来事や趣味的なことを書いていこうかなと思っています。若干鉄分は濃い目の予定(笑

JR東海浜松工場毎年恒例の一般公開イベント「新幹線なるほど発見デー」が今年も7月21~22日に開催され、7月22日に行って来ました。自分は2008(平成20)~2010(平成22)年まで足を運び、今年は4回目の訪問となります。
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まずは検修庫内に入ります。ここではイベント開催期間中にたまたま入場している編成がそのまま展示車となりますが、今年は700系C27編成とN700形Z55編成が全検中でした。
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余談ですが、2009(平成21)年はN700系9000番代Z0編成が全検を受けていたこともあり、意外と目が離せなかったりします。

700形C27編成のM'車の床下にはTTM3形主変圧器が搭載されていました。
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3M1Tユニットとなる700系では1ユニットあたり1台の主変圧器を使用し、集電した交流25,000V/60Hzの電力を3両の電動車用に降圧して給電します。

庫内では点検のために車体から降ろされた機器類も展示されていました。これらの機器類は毎年違うものが展示されることがあるので、浜松に行く時の楽しみのひとつとなっています。
まずはN700系用の空調装置TAU37。N700系の空調は1両当たり2箇所搭載されますが、前位空調装置と写真のように換気装置内蔵型の後位空調装置があります。
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全熱交換器を採用して外気取り入れによる熱負荷を低減。その結果圧縮機の台数を削減して省エネ化する共にシステムを軽量化。軽量化にはアルミ筐体採用も寄与。さらに防振構造を最適化して低振動化と低騒音化を実現しました。

N700系の東海道新幹線区間所要時間短縮の要が、空気バネストローク式車体傾斜システム。これはカーブ区間で外軌側の台車空気バネを上昇させて、車体を1°傾斜させるものです。そのための制御装置が各車両に搭載されています。
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N700系の空気ブレーキを制御するのがTC9形ブレーキ制御装置。
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でもN700系は基本的に電動車14両分の回生ブレーキが減速力を負担し、空気ブレーキは停止時と非常用にしか使いません。
ちなみに、この制御装置はN700形Z55編成16号車に搭載されるもののようですね。

N700系で必要な圧縮空気を作り出すのがこの電動空気圧縮機(CP)で、16両編成に8台搭載しています。
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CPはスクロール式を採用して低騒音化しました。

集電した交流25,000Vの電力を扱いやすい電圧まで降圧するのが主変圧器。N700形は3M1Tのユニットと4Mのユニットで主変圧器の容量が異なります。写真のTTM5形は3M用で容量は4,350kVAとなっています。
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ちなみに4M用のTTM4形は5,600kVAという大容量を誇りますが今回は展示されていませんでした。

モーターを制御するVVVFインバータ制御装置は主変換装置と呼ばれていますが、N700系用は2種類存在します。これは強制風冷沸騰冷却式のTCI3形
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グリーン車を含む車両には騒音が小さい走行風冷却方式のTCI100形が搭載されていますが、こちらも今回は展示されていませんでした。

こちらはN700系の真空シャ断機。
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これはN700系のTPS303形パンタグラフです。
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騒音源となる関節部分を下枠毎風防カバーに収めた下枠短縮形シングルアームパンタグラフという構造を採用しています。また上枠が上下する溝にはシャッターが設けられ、走行風が風防の中に入り込まないような構造になっているのも特徴となっています。

700系のシングルアームパンタグラフTPS302形と比べても上枠と下枠の長さの違いがわかると思います。
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N700系と700系の台車展示も名物となっています。
N700系用の動力台車はTDT205形、付随台車はTTR7003形となります。いずれも軽量ボルスタレス台車で、アンチヨーダンパ付き。外軌側上昇の空気バネストローク式車体傾斜システムを搭載しています。
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N700系のモーターは305kW出力のTMT7形、TMT8形、TMT9形で、いずれも駆動方式は平行カルダン駆動ですが、普通車はWN継ぎ手、グリーン車は静粛性に優れたTD継ぎ手を採用しています。
軸箱支持装置は円筒ゴム式で、ウイングバネ式とも呼ばれています。

700系用の台車はTDT204とTTR7003。
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車体傾斜システムは持っていませんが、基本構造はN700系用台車のベースとなっているため結構似ていますね。

TTR7003には渦電流ディスクブレーキという、電磁石の磁力を利用した非接触型ディスクブレーキが装備されています。
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国鉄100系、JR東海300系で採用されたこのブレーキですが、装置が重いため700系では1軸辺り1組に削減し、N700系では廃止されました。

700系、N700系の基礎ブレーキはキャリパブレーキを採用。車輪一体型のブレーキディスクをブレーキライニングで挟み込んで減速します。
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キャリパブレーキでは、ブレーキライニングがブレーキキャリパにフローティング支持された構造となっています。ブレーキ制御器から送り込まれた空気圧を増圧シリンダーに送り込むと、ここで油圧に変換してブレーキピストンを作動させます。

このイベントはこのようなカットモデルもたくさん展示してあります。
700系の駆動装置のカットモデルでは、WN継ぎ手の構造もわかるようになっています。
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写真左側にあるのがWN継ぎ手です。

700系の軸箱のカットボディ。
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軸受は円錐コロ軸受を採用していますが、コロ式のベアリングが斜めに配置されているのがわかると思います。これによって上下左右方向の力をベアリングが受け止めて、従来必要だったツバを廃止しました。

700系のTMT6形モーターのカットボディもありました。
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700系はTMT6形とTMT7形が使用されていますが、工場の人の話によるとTMT7は2号車と15号車に使用されていて重量がちょっと重くなっているとのこと。
これらのモーターは275kW出力を発揮します。

屋外にはドクターイエローが展示されていました。
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相変わらず大人気のドクターイエローです。

その他運転台の見学なども恒例となっています。
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今年は新たに屋根上の見学もできるようになり、こちらも人気を博していました。

そしてこのイベント最大の目玉は、新幹線のつり上げ実演「空飛ぶ新幹線」です。
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もともとSLを修繕していた浜松工場は、設備は国鉄の古い工場からの流用もあるため、日本で唯一新幹線をつり上げるクレーンが備わっています。ちなみに他の工場はジャッキ式。
今年はN700系Z24編成の先頭車、783-24が空中散歩していました。

すると、床下にセミアクティブサスペンションを発見!
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セミアクティブサスペンションは車体の左右動揺を検知するとバルブが開閉して、左右動を緩和させるものです。N700系には全車に装備されているのですが、台車と切り離した際には車体側に残るのを初めて知りました。
これはいい収穫でした。

たっぷり見終わったあとは浜松駅に戻って新幹線の撮影を少々。
ここは半径2,500mの急カーブで、700系は250km/hに速度制限されるのですが、N700系は車体傾斜システムで1°傾けることによって270km/hのまま通過していきます。
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300系亡き今「こだま」には700系が充当されていますが、つい先日まで「のぞみ」でエースを張っていたのにあっというまの凋落。
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700系を抜き去るN700系ですが、すでにマイナーチェンジ形のN700系1000番代「N700A(Advanced)」の搬入が始まっていて、JR東海の世代交代の速さを感じさせますね。
そんな東海道新幹線三昧な一日でした。