北海道新幹線の起点は東北新幹線の終点である新青森駅ですね。

(新青森駅・2011年9月19日)
新青森の北側でJR東日本の車両基地への引き込み線が分岐。

(新青森付近・2010年12月4日)
ここから北海道新幹線の本線のスタートとなります。
そして中小国信号所の北側でJR北海道津軽線と合流し、津軽今別(新幹線開業で奧津軽と改称予定)を経て青函トンネルをくぐり抜けます。

(青函トンネル・2010年12月4日)
北海道側に抜け、知内を通過すると、木古内の手前で海峡線と分岐して木古内駅へ.

(知内~木古内・2010年9月10日)
そして新函館(現在の渡島大野)に至ります。

(新幹線車両基地予定地付近・2011年9月18日)
この北海道新幹線開業後に関しては解決しなければならない問題がたくさんあり、そのひとつは青函トンネル前後を新在共用区間とするか否かでした。
新在共用区間とすると、新幹線の最高速度260km/hに対して貨物列車の最高速度100km/h程度と差がありすぎるため、奥津軽と湯の里信号所に待避線を設けて貨物列車が新幹線を待避したとしても、JR北海道の試算では新幹線の30分間隔運転は不可能となるのだそうです。

(津軽今別・2010年12月4日)
そこで、JR北海道はトレイン・オン・トレインの実用化を検討しました。

(苗穂工場・2009年6月13日)
トレイン・オン・トレインは青函トンネルの前後にボーディングターミナルを設け、貨物列車を丸ごと新幹線規格の貨物列車に乗せて青函トンネルを200km/hで通過させようというもので。これによって3線軌条を解消。同時に貨物列車のスピードアップを図り、貨物列車の運転本数を維持したまま、新幹線を最短20分間隔で運転しようというものでした。

(苗穂工場・2010年6月2日)
しかし貨物列車を丸ごと水平移動させる巨大なトラバーサなど、地上設備に莫大な費用がかかるのがトレイン・オン・トレインの最大の問題点。
結局共用区間は新幹線の1,435mmと在来線の1,067mmの3線軌条として、電気方式は新幹線の交流25,000Vに決定。

(津軽今別~竜飛海底・2010年12月4日)
この共用区間を通過するためには、在来線区間の交流20,000V区間と、青函トンネル前後の新幹線在来線共用区間の交流25,000V、2種類の電圧に対応した複電圧仕様の機関車が必要となり、JR貨物がEH800-901の製造を発表しました。複電圧仕様であると同時に、新幹線の保安装置であるDS-ATC(デジタルATC)とデジタル列車無線システムを搭載した、秋に落成する予定となっています。

(JR北海道のプレスリリースより)
車体の窓やルーパーの配置はEH500と同じ。見た目の違いは白いラインとシルバーのカーブライン、そしてシングルアームパンタグラフの搭載という印象ですね。しかし前照灯の位置はEH500-1~2と同じ低い位置になっているようですが。

(EH500-1・五稜郭・2004年4月23日)
そんなEH500は1997(平成9)年から製造されている、JR貨物の交直両用電気機関車です。首都圏から北海道への直通運転の実施と、青函トンネルや東北本線の勾配区間などでのED79やED75の重連を単機牽引とすることで、機関車数や旅客会社への線路使用料を削減するために2車体永久連結のEH級車体としたのが大きな特徴です。
565kW出力のFMT4を8基搭載し、最大4,520kWまで発揮することが可能ですが、変電所容量の関係から直流区間では3,400kW、交流区間では4,000kWに制限して運用しています。
今回のEH800の性能はまだわかりませんが、現在の運用実績を考えると、性能的にはEH500の交流区間と同様になるのでは思われます。
交流20,000Vと交流25,000Vが混在するということは、当然デッドセクションが必要となります。JR北海道海峡線はJR東日本津軽線の中小国信号所から分岐しますので、会社境界的には中小国信号所付近にデッドセクションを設けるのが自然な気がします。

(ED79 60・中小国信号所・2010年12月4日)
しかし津軽線との分岐直後に高架線を駆け上がって北海道新幹線と合流することになるので、加速余地が必要な気はしますが。

(特急「スーパー白鳥」・クハ789・中小国信号所~津軽今別・2010年12月4日)
で、調べてみたら中小国信号所の設備のほとんどはJR北海道が管理しているようなので、加速余地は充分ありそうです。
逆に木古内の方は充分な余地があるので問題はないでしょう。
新在共用されることになる青函トンネルですが、問題はまだ残っています。それは260km/hで走行する新幹線の風圧ですれ違う貨物列車が脱線する可能性が指摘されていることで、現在は新幹線の速度を140km/hに規制することが予定されていますが、この速度は現在青函トンネルを通過する在来線電車特急と同じ。しかも新函館は函館駅からかなり遠いため、時間短縮効果が低くなってしまいます。
この件に関して、交通政策審議会は200km/h以上に引き上げることを検討するワーキンググループ(WG)を7月12日に開いています。このWGでは新幹線が青函トンネルを通過は貨物列車を通さないダイヤ調整が可能かなど検討して2012年度内に結論をまとめるそうなので、動向に注目したいところです。
さて、北海道新幹線が2015年度に開業するとEH500は青函トンネルには入線できなくなるため、運用範囲が東青森以南となるものと思われます。

(EH500-19・五稜郭・2005年12月30日)
1989(平成元)年にJR貨物が製造したED79 50番代は北海道新幹線開業時でも経年26年程度。

(ED79 53・五稜郭・2004年5月15日)
微妙な車齢ですが、運用できる範囲が限られているためこのまま廃車となりそうですね。
当然ながらJR北海道のED79は、元々国鉄ED75 700番代を改造していて老朽化しているため、全車廃車となるでしょう。

(特急「北斗星」ED79 17・函館・1989年8月)
一時期は北海道新幹線の開業とともに北海道へのフラッグシップを新幹線に移行して、「北斗星」「カシオペア」の廃止が真剣に検討されていたという噂があったそうなのですが、最近一転して「カシオペア」の運転継続の方向に軌道修正されたらしいとか。そうなると旅客列車牽引用の複電圧機が必要になります。そのためにJR北海道がEH800-500みたいな機関車を導入するのか? JR貨物に牽引を委託するのか? こちらも気になるところです。