
(秩父鉄道 広瀬川原車庫・2009年5月16日)
MT46は直流直巻整流子電動機で、定格出力は100kWとなっています。また中空軸平行カルダン駆動方式を採用しているため、モーターは台車枠に枕木方向に架装され、モーターの重さは台車枠が全て支えます。

(鉄道博物館・2010年2月5日)
モーターは台車枠に固定されているわけですが、車輪に回転力を伝える歯車(ギヤ)は車軸についていて、この車軸は線路からの衝撃などを緩和するために上下に動きます。これを車軸の変位といいますが、この変位がモーターに伝わらないようにしないといけません。
そのため、写真中央にある、MT46の回転軸を中空構造(中空軸)として、モーター左側の出力軸にたわみ板を取り付けます。このたわみ板にはねじり棒が取り付けられていますが、このねじり棒はMT46の中空軸内を貫通して、反対側にもたわみ板が取り付けられ、ここに歯車が取り付けられて駆動力を伝達すると共に、車軸の変位を吸収します。

(東京総合車両センター・2009年8月22日)
なお写真は103系用のMT55モーターですが、構造は同じ。国鉄ではVVVFインバータ車の207系900番代と新幹線を除いた全ての新性能電車が、この中空軸平行カルダン駆動方式を採用しました。
カルダン駆動方式は線路からの衝撃はモーターに伝わらないため、無駄に強度を上げる必要がなく軽量化することができます。MT46の重さは約660kgで、これは80系に使用されていた吊り掛け駆動方式のMT40の1/3という軽さです。
また、歯車比は通勤、近郊形が1:560、急行形が1:4.21、特急形が1:3.50となっていましたが、MT46のパワーでは歯車比1:3.50で上越線の連続20‰勾配を上ることができなかったため、161系は特急形でありながら急行形と同じ1:4.21とされました。
MT46は直流モーターですので回転制御は電圧の変化させることによって行ないます。その電圧を変える方法は抵抗制御方式と呼ばれるもので、これは旧型国電を含めて、古くから存在する方式です。
抵抗の役割を簡単にいうと電気を熱変換することで電圧を下げるもので、この抵抗回路を全て通電させている状態から段階的に抵抗回路をバイパス回路に切り替えることによって、モーターへの電圧を高めていきます。
この抵抗回路をバイパスさせたりするスイッチはカム軸によってオンオフさせるのですが、このカム軸を制御するのが主制御器で、101系から471系までは電動カム軸式のCS12が搭載されています。

(秩父鉄道 明戸・2009年5月16日)

(鉄道博物館・2009年5月13日)
CS12はひとつの主制御器(コントローラー=C)で8個のモーター(M)を制御する1C8M方式を採用していますが、この方式は一部の例外を除いて国鉄新性能電車のスタンダードとなっています。
抵抗制御はモーターを8個直列につないだ直列全界磁段が13段、モーター4個を直列につないだ回路を並列させた並列全界磁段が11段。そして高速回転時の妨げとなる界磁(モーターの電磁石)が作り出す磁界を弱めるための並列弱め界磁段が4段設定されています。
またブレーキ時はモーターを発電機代わりとして使用し、発電した電気を主抵抗器で熱変換する発電ブレーキも備わっており、こちらは直列13段と並列11段で設定。
また連続下り勾配線区間を運転する157系と161系は、速度を一定に保ったまま坂を下るための抑速発電ブレーキも備えていました。
MT46はこの1C8Mを前提に設計し、4個永久直列の回路を2組備えています。そのためMT46の端子電圧は1500Vの1/4である375Vとなっています。
新性能電車は発電ブレーキを装備しているため、主抵抗器は力行時だけではなく減速時も放熱するため、主抵抗器は2分割して配置し、その間に電動送風機を備えて冷却風を送り込む強制風冷式が採用されました。この電動送風機は電車の制御電源を作り出す電動発電機(MG)も兼ねているのが特徴です。

(秩父鉄道 石原・2009年5月16日)
ただし特急形電車の151系、161系では騒音対策の観点から主抵抗器を自然通風式として、MGは先頭車のボンネット内に収めています。
1C8M制御を採用したため、新性能電車が電動車2両分、8個のモーターを一括制御するMM’方式となっています。これによって主制御器、主抵抗器、パンタグラフを2両ひと組として電動車の軽量化と合理化、製造コストダウンなどを狙ったものです。

(鎌倉総合車両センター・2005年9月10日)
基本的にはM車と呼ばれる奇数形式車に主制御器、主抵抗器、電動発電機(MG)、搭載し、M’車と呼ばれる偶数形式車にパンタグラフと電動空気圧縮機(CP)を搭載して重量バランスの平均化を図っています。
また181系の前身となる151系は、M車にパンタグラフが搭載されていますが、おそらく151系最初のM’車がビュフェ車の関係で屋上の冷房装置の配置が特殊になっていたため、パンタグラフをM車に搭載したものと思われます。また高速運転時の離線対策からパンタグラフを2基搭載としましたが、これは185系と781系を除く国鉄特急型電車に継承されました。

(小出・1980年8月)
なお181系は動力システム的には第2世代に相当する形式ですが、第1世代の151系、161系を改造したグループと第2世代として新造された100番代にまたがるため、ここでは第1世代車としても紹介しました。ちなみに第2世代車は現存していません。
交直両用電車の401系、421系はM’車に主変圧器、主整流器などの交流機器を搭載する関係で床下艤装空間が不足したため、CPを先頭車に搭載しています。

(高萩・2005年9月4日)
また屋上にも交流機器が搭載されていますが、架線との絶縁距離300mm以上を確保するため、パンタグラフ部分は低屋根構造となりました。

(高萩・2005年9月4日)
写真は403系ですが、基本的に同じ構造です。
台車はスイングハンガー(揺れ枕吊り式)のDT21系が基本となります。

(秩父鉄道 石原・2009年5月16日)
DT21系は近距離電車用で、電動台車がDT21、電装準備工事された付随台車DT21T、付随台車TR62、TR64がありますが、TR64以外はまだ現役ですね。
特急用のDT23系はDT23とTR58があります。

(大阪交通科学博物館・20011年6月2日)
TR58は鉄道博物館と川崎重工に保存されているクハ181が装着していますが、DT23は大阪交通科学博物館の151系モックアップが装着しているDT23Zが唯一の保存例です。
急行用のDT24系はDT24、TR59となりますが、DT24は鉄道博物館に保存されています。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
またTR59を装着したクロ157がまだ車籍を残していますが、果たして今後見る機会が得られるのでしょうか?
揺れ枕(ボルスタ)は上揺れ枕と下揺れ枕に分かれ、台車枠からは揺れ枕吊りによって下揺れ枕が吊り下げられています。この揺れ枕吊りは車体の左右動を台車枠に伝えないように吸収する役割も持っています。この下揺れ枕の上に枕バネとオイルダンパが載り、その上に上揺れ枕が載ります。DT21系の枕バネは2本の金属バネとオイルダンパを使用しています。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
車体は上揺れ枕の心皿と側受の3点で支持します。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
特急・急行用のDT23系、DT24系はベローズ式空気バネとオイルダンパを採用しています。写真はTR58です。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
牽引力は台車枠の揺れ枕守から下揺れ枕、心皿を介して車体に伝達するのが基本です。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
写真は103系用TR212台車の揺れ枕守。
空気バネを採用したDT23系、DT24系はボルスタアンカによって台車枠と上揺れ枕が連結されていて、ここからも牽引力を伝達します。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
台車の蛇行動の抑制には、側受の摩擦力を利用しています。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
軸箱支持装置はペデスタルウイング式を採用しています。

(秩父鉄道 広瀬川原車庫・2009年5月16日)
台車枠に設けられたペデスタル(軸箱守)はスパナのような形をしていて、軸箱が前後移動しないよう保持すると共に、牽引力を伝達します。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
写真は103系用TR212台車の軸箱守。
線路からの振動を緩和する軸バネは軸箱の前後に配置されていますが、このバネを載せる部分が、軸箱前後に羽のように開いていることからウイングバネと呼ばれています。軸箱支持装置部分の仕様は各台車とも共通です。

(秩父鉄道 広瀬川原車庫・2009年5月16日)
基礎ブレーキ装置にいては、電動台車では両輪前後にブレーキシューを配置した両抱き式踏面ブレーキを採用しているため台車の全長が3790mmと長いのが特徴です。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
たブレーキシリンダーを1台車に4つ搭載し、ブレーキシューとの距離を縮めて応答性を向上。この構造はDT23、DT24も同様となっています。

(大阪交通科学博物館・20011年6月2日)
付随台車は、最初に登場したTR58がディスクブレーキを採用したため電動台車と外観がかなり異なります。

(川崎重工・2009年10月11日)
これはクハ111-1が装着するTR62のディスクブレーキですが、輪軸に2枚のブレーキディスクローターを配置し、台車枠に搭載されたブレーキ装置に取り付けられているブレーキライニング(パッド)がディスクを挟み込むことでブレーキ力を得るもので、ブレーキ力が強く、また高速からの制動時の車輪の熱変形を防ぐメリットがあります。

(佐久間レールパーク・2009年6月7日)
TR58、TR59、TR62はディスクブレーキを採用したため、踏面ブレーキが装備されておらず。その分台車の全長も短くなっています。

(佐久間レールパーク・2009年6月7日)
なお401系、421系用に製造したTR64はディスクブレーキではありませんが、片押し式踏面ブレーキのため、台車の寸法は基本的に変わりません。いずれの台車もブレーキシリンダーを2基搭載していますが、外からは見えません。
空気ブレーキは電磁直通空気ブレーキを採用しました。直通空気ブレーキ(Straight air brake)は、直通管(SAP管)空気を送り込むことでブレーキシューやライニングを車輪やディスクに押し付けるものです。ブレーキ管を減圧させて、逆比例式ブレーキ弁を細動させる自動空気ブレーキよりも応答性が高いのですが、長編成に向かないという弱点がありました。そこで電磁給排弁(Electromagnetic)を使用して各車両へブレーキ指示に電気信号を併用して応答性を向上させ、また発電ブレーキ(Dynamic brake)の併用が基本となりましたが、クモユ141と711系のみは発電ブレーキを装備していません。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
近距離電車や急行形電車は定員の変化に対応した応荷重装置(Flexible Load)と備え、それぞれの頭文字を使ってSELDとも呼ばれています。また特急形は応荷重装置を持たないためSEDと呼ばれていましたが、381系以降は応荷重装置が装備されSELDとなりました。
ブレーキ弁はセルフラップ式となり、ブレーキレバーの操作にブレーキ力がリアルタイムに反応します。

(大阪交通科学博物館・20011年6月2日)
なお電磁直通空気ブレーキはSAP管が破損するとブレーキがかからなくなるので、非常用として自動空気ブレーキも搭載しています。
その他では151系、161系ではAU11、AU12クーラーと複層二重窓ガラスによる空調完備。

(川崎重工・2009年10月11日)
また回転クロスシートを採用して特急形車両の居住性が向上しました。

(鉄道博物館・2009年5月13日)
この回転クロスシートを改良したシートが準急形の157系に採用されたは有名な話ですね。また特急形電車は前述したとおりCPとMGを先頭車に集中搭載するなどの独自システムを構築しました。
これら新性能電車第1世代のシステムのうち、MT46モーターと空気バネ台車以外は第2世代以降に受け継がれました。そして1963(昭和38)年からMT54モーターとDT32系台車を中心とした新性能電車第2世代に発展していきます。