予定メディア 実写短編映画
形態 プロット
走る女の子
ぼーっと歩いている僕
正面から猛烈な勢いで走ってくる女の子
すごい風圧て顔が歪む
その時僕は恋をした
僕は追いかけようか迷って アアアァ言いながら少し右往左往してから追いかけはじめた
さらにその後ろからおじさんとおばさんと男の子が追いかけてきた
おじさんとおばさんがチアキー と叫んでいる どうやら千晶という名前らしい
男の子がお姉ちゃんーと叫んでいる
どうやら千晶さんのご家族らしい
走る走るダッシュで走る
なのに追いつかない
千晶さんは速すぎる
ご家族の方々もけっこう後ろだ
このまままっすぐ行くと行き止まりだ
冊があって その下は電車が走っている
千晶さんが冊を乗り越えようとしている
その間に僕は追いつく
「待って!」僕は力の限り叫んだ
千晶さんが振り返る
さあどうしよう
何か言わないと
よし 好きだとか叫んでしまおう そういうストレートな言葉がうまく行くんだよ
よし
「ワン!」
ワン? あれ?
「ワン!」
ワンしか言えない
なんだこれ
「ボンゴ!」
千晶さんがそう叫んでこっちに走ってくる
僕もしっぽを振って千晶さんに駆け寄る
しっぽ?
あれ?
僕は犬になっていた
それとももともと犬だったっけ
僕は千晶さんの胸に飛び込む
家族の方々が追いついてくる
「お母さん ボンゴだよ やっぱりボンゴ死んでなかったんだ」
千晶さんが泣きながらしゃべっている
なんだか今までたまっていたものを吐き出すように一気にまくし立てている
「よかったよボンゴ生きてたんだね あの時刺しちゃったのは別の犬だったんだよ よかった よかった ボンゴが居なくなってから悪い事ばっかりだったんだよ 頭の中がぐちゃぐちゃで叫んでないとおかしくなりそうで
ごめんねボンゴ 刺しちゃってごめんね
でもよかった生きてたんだもんね」
犬になった僕は千晶さんの胸に抱かれながら
なんとなく思い出そうとしていた
僕は確かに犬だった記憶がある でも千晶さんとは初めて会った気がする
それにさっきまで人間だった事も確かだ 水泳部でバタフライの選手で17歳で 確かさっきもプールで泳いでて あれ? さっきなんで街を歩いてたんだろ? なにしてたんだっけ?
ヴー 頭が痛い
いい加減強く抱きしめすぎだよ
僕は衝動的に千晶さんの腕を噛んだ
千晶「きゃ!」
僕を恐ろしい物を見るような目でみる千晶さん
不意に僕は頭を地面に押さえつけられる
千晶「お父さん やめて!」
父「千晶 これはボンゴじゃあないよ」
僕は押さえつける指の隙間から 千晶さんの父親をみた
その瞬間いきなりフラッシュバックで過去の映像が次々と脳内を飛び交う
この父親が千晶さんを犯そうとしているシーン
吠え続ける犬
この父親にめった刺しにされる犬
プールで泳ぐ千晶さん
暗い水の底で沈みながら上を泳ぐ千晶さんを見ている僕
気付くと僕はびしょ濡れで千昌さんの前にたっていた
「ち ちあきさん…」
僕は千昌さんに近いていったが 千晶さんは恐怖におののいた顔で 僕を透過して 僕よりも もっと後ろを見ている
僕は後ろを振り返った
千晶さんの父親が押さえつけていた犬が黒く変色して溶けて 地面に染み込んだ影になってしまった
気がつくと僕の体は真っ黒になっていた
そうか 僕は影だった
飛び込みの事故で死んでから プールの底についた影として生きているんだ
たまに気に入った人がいるとその人の影に意識を分散させてついていくんだっけ
意識を分散させすぎたせいで記憶が あやふやになっていたようだ
そうだ僕はこの子を助けたかったんだ
それでボンゴになったり男のになったりしたんだ
でも所詮は影か
もうなにか黒い揺らめきとしか認識してもらえない
最後の力でこの父親をなんとかしなければ
ボンゴだった影が本体の黒い揺らめきに移動してきて吸い込まれる
父親に向かって行こうとしたその時 黒い揺らめきになった僕を千晶さんが後ろから抱きしめた
僕を捕まえた 千晶さんはそのまま線路の金網に突っ込む
ほとんどサビていた金網は崩れ 僕と 千晶さんは線路に落ちていく
千晶「さっきボンゴヲ抱いた時、全部わかったよ 私もあなたと影になりたいの」
僕らは ちょうど走ってきた電車に轢かれた
今は二人は一体化して
中央線の先頭車両についた影として、時々なかまを増やしながら幸せに生きている
ちなみに
千晶さんの家はJRへの賠償金で破産したらしい
END