前回の続き
ムドラーでは感情の表現手段でしかなかった結印が、仏教に
取り込まれ「仏尊が衆生に対して発した誓願」や、「仏尊そのものの
シンボル化」という意味合いに変化したと前回書きましたが、
それに伴い、両の手と五指にはそれぞれ意味が設けられました。
仏教の結印は、概ねそのルールに基づいて作られていったようです。
以下は、ほぼほぼ 本からの受け売りですが――
指には、以下の三種の意味が込められており、
五蘊(ごうん)・・・
現実世界に存在する「色(物質・肉体)」・「受(感受作用・感覚)」・
「想(表象作用・想念)」・「行(意志・記憶)」・「識(認識作用)」ら
五種の原理のことで、物質と精神との諸要素を収める。
五根(ごこん)・・・
仏道修行の根本となる能力で、「信」・「勤」・「念」・「定」・「慧」の
五種からなる。
五大(ごだい)・・・
一切の物質を構成する要素で「地」・「水」・「火」・「風」・「空」の五種
以上が五本の指、それぞれに割り振られています。
大指(親指)は、「識」・「慧」・「空」で、梵字は「空」を意味する「キャ」
頭指(人差し指)は、「行」・「定」・「風」で、梵字は「風」の「カ」
中指は、「想」・「念」・「火」で、梵字は「火」の「ラ」
無名指(薬指)は、「受」・「勤」・「水」で、梵字は「水」の「バ」
小指は、「色」・「信」・「土」で、梵字は「土」の「ア」
そして、手の方ですが、
「右手」と「左手」では意味が対を為す必要があるようでして、
右・・・「慧」・「観」・「智」・「智」・「金剛界」・「仏界」・「日」
左・・・「定」・「止」・「福」・「理」・「胎蔵界」・「生界」・「月」
となります。
つまり、
「慧」に対しては「定」、「仏界」に対しては「生界」と意味が
割り振られるようです。
また、場合によっては両手の形で「二羽」・「二翼」を表します。
十本の指は、上述した意味の他に
「十度」・「十輪」・「十蓮」・「十法界」・「十真如」・「十峰」などを
表することもあるようです。
また、「爪」は「甲冑」を意味するのに用い、
両の掌を合わせた際に生じる「掌内」は、「満月」や「虎口」を
意味するのに用います。
以上です。
このルールに基づけばオリジナルの印も作れそうではあります。
が、
その印形が霊験を表すようになるためには長い年月、かつ
たくさんの方が信心と観念を以って真言と共に結ぶ必要が
あるので、まぁ一個人の俄か仕立ては意味の無いことですな。
それに、既に数千種もある訳ですから被ること必至です。