
ただし! いろいろ問題が山積み。
まず、今回お直しをご希望なのは黒の紋付羽織。
通常、後ろ袖の家紋の位置は中央になるように仕立てられているのだと思います(知らんけど)
ま、今回は生地幅いっぱいに仕立てられているので中央に家紋がありました。
なので、袖付け側に足し布をするということは家紋の位置が外寄りにずれます。
6センチ足せばその半分の3センチは家紋が外寄りになります。
お客様はそれでもOKという事でした。
そして、足し布用にご用意されていた布は、同じ黒色でも質感も色も違っていました。
ということは、足し布としては使えないということになります。
使うと悪目立ちしますね。
この問題をクリアするためには、素人的に3つの方法があるなと思いました。
表に見えないところを裁ち落として足し布として使う。
ただし、折り線が完全に消せるかどうかが問題。
② 紋付羽織袴の場合、同じ生地で袴下の着物もセットになっているので、
着物の袖を裁ち落として羽織の袖に移植する方法。
羽織と着物の両方の袖をお直ししなければならないので作業量が増える。
③ 着物の右身頃に付いているオクミは着ると見えにくいのでここを使う。
これも足し布としてお預かりした布を使い着物の形に戻す必要はあります。
いろいろお話ししているうちに、
ひょっとしたら私でもできるのではないかという妄想に駆られてしまい、
ついついお受けしてしまいました。
おっかしいなあ、
「悉皆屋さんにお持ちください」とお断りするつもりだったんだけど…
とりあえず、
「私は和裁の専門ではないので和洋折衷みたいななんちゃってお直しになります」
という御了承を頂き、やってみることに。
てことは、
自分的に出来そうな③の方法にすることにしました。
オクミを使うと折り線残りが少ないという利点もあります。
ただし、③も問題があります。
画像お借りしましたが、
着用するとこのように右身頃のオクミの剣先三角部分は見えます。
赤い線の部分↓
ということは、袖に使える布はこの部分↓大丈夫かな?
実際に羽織の袖丈から割り出した接ぎ目が青いしつけ糸のラインでした。
↓
うん、着用すればどうにか隠れる程度だと思われます。たぶん。
ここがもし剣先まで使うようならば、
着用で見えなくなる下前の衿先を接ぎ合せるしかないなと思っていましたが、
どうにか足りそうで助かりました。
と、ほぼ一日段取りばかり考えて、次の日やっと取り掛かりました。
まず、上のしつけ糸のラインを基準に差し替え布のパターンを作りました。
てゆうか、ヘラ台出したけどヘラ付けが間違えそうで怖い
お預かりした足し布で、オクミの印つけ。しつけ糸使用w
これが出来てから、着物のオクミを裏地から引っぺがします。
もちろん、着物のオクミ付け線もしつけ糸で印を忘れずに。
からの、
オクミ差し替え出来上がり↓
違いがわかるようにわざと白っぽく撮影してみました。
同じ黒でも全く違いますね。
これを袖に接ぎ合せなくて良かった。やばいです。
ということで、いきなりの羽織出来上がり。
着物から取り出したオクミ布を半分の幅にカットして、
羽織の袖に6センチの出来上がりで移植手術。
↓接ぎ部分は縫い代割っています。
写っているのは羽織の後ろ半分です。
袖の家紋がやや外側寄りになりましたが、許容範囲かと思われます。
てゆうか、普通の人は家紋の位置とか気にして見ませんよね
裏地も足らなかったけど同じような羽裏生地の手持ちが無かったので、
普通の胴裏を利用させていただきました↓
墨絵の柄がある方が身頃です。
裏地は表地より布幅が広かったので足し布幅は少ないです。
手間は同じですけどね。
ということで、
今回は羽織袴でお召になるということで、
着用して見えなくなる着物の袖はお直しの必要なしということでした。
もし着物の袖も同じ寸法にお直しする場合は、
羽織の衿から不足分を裁ち落としすることもできます。
最後に畳んでたとう紙に入れようとしたら、
長くなったお袖だけはみ出ましたw↓
細い反物の巻き芯があったので、袖の折れる所に一本入れておきました。
こうすれば余計な畳シワが防止できますね。
以上。
本日も長々とお付き合い頂き
ありがとうございましたm(_ _)m