2022.09.23/25 旬の名歌手シリーズ2022-3/4 リセット・オロペサ&ルカ・サルシ | たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!"

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主にオペラの感想等を亡備録として書き連ねていこうかなと思ってます。
その時感じたことをそのまま書くようにしてますので、文筆がおかしいことは多々ありますが、良ければご覧下さい。

23日と25日は、日本舞台芸術振興会主催の、旬の名歌手シリーズ2022-3/4 リセット・オロペサ&ルカ・サルシ 華麗なる・オペラ・デュオコンサートへ行ってきました。

23日(金)に静岡県で起きた未曾有の災害によってバタバタしていたこともあり、全く感想を書けずにいましたが、ようやく書けるような状況になりました。


まず、曲目はこんな感じでした。

当初予定と違ったのは、2日目にサルシが『仮面舞踏会』のレナートアリアを歌う予定が、『フォスカリ』へ変更。それから演奏順の変更が少しあった程度で、ほぼ最初に発表になった通りのプログラムで聴くことが出来ました。声楽系のリサイタルは、急にプログラムが大きく変わってしまったり、一番聴きたい曲がなくなったりすることがあるので、若干心配してましたが取り越し苦労でした。

私は二人の演奏を聴くのは初めてだったので、若干の緊張と大いなる期待感を持って会場へ。会場はヨンチェヴァやフローレスと同じく、東京文化会館。
今回オロペサをとにかく聴きたくてチケット買ったようなもので、サルシはそんなに趣味ではなかったのですが、演奏聴いて二人共大好きになりました(笑)もうそれはそれは素晴らしかったです。「なんかサルシって大味なんだよねぇ」とか言ってきて申し訳ありませんでした(笑)いやー、これが世界レベルなんだなと思わせるリ素晴らしい内容でしたよ。

オロペサは、私の今聴きたいソプラノ・ベスト5にランクインしてる歌手だったので、超絶楽しみにしてましたが、期待通りの素晴らしさ。すべての曲を職人のようにきちっきちっと完璧な形で聴かせてくれました。声が良いね。超美声いう感じではないけれど、温かみがあって、我こそ歌姫じゃー的ディーヴァというよりは、もっと近い存在のような感じ。上手く表現できないけど、そうだな、超絶歌の上手いお姉さんみたいな。そんなオーラをまとっていました。声の個性も強く、役によって声の印象が変わる。下から上までキレイに同じように響かせることが出来て、高音は伸びやかで決して金切り声を上げるようなこともなく、ポジションがめちゃめちゃ良いので安心して聴いてられる。

彼女が演奏した中で一番良かったのはヴィオレッタかな。「あぁ、そわかの人か〜花から花へ」はソプラノのオペラアリアで一二を争う有名な曲で、何度も実演に触れていますが、やっと世界レベルに出会えた感じ。素晴らしいことこの上なし。若干早いテンポで後半ぶわーっと突っ走りましたが、とても良く声がコントロールされていて、技術的にも申し分ないし、全く破綻がない。ただただ、凄かった。聴き惚れちゃいましたよ。
二重唱の「ヴァレリー嬢ですか?〜お伝え下さい、清らかな娘さんに」は、最後目頭が熱くなりました。どう考えても別れたくないのに、ジェルモンが来たことだけでも、そうしなければならない展開が頭にちらついて、でもまさかそんなことないわよねという状況。しなければならないことを知りたくないと抵抗するんだけど、もうどうすることもできないと諦めざるを得ないヴィオレッタの追い詰められていく姿がとても心突き刺さりました。可愛そすぎる。来年のローマ歌劇場来日公演でヴィオレッタ歌うらしいので絶対行こうと思います。これ泣くわ絶対。
他も全部良かったなぁ。例えば、アディーナやロジーナは、機知に富んで男を手球に取る感じがとても上手かったです。アディーナに関しては技術的にも素晴らしいし、声的に無条件で合うので全曲聴いてみたい。
それから、狂乱の2つも最高でした。ルチアは本人が役に憑依しており、曲と一体化してました。フルートの音に驚いて思わず声を出してしまう1場面も。あれだけのルチアを歌えるのなら、グラスハーモニカ入れてもらえるとより良かったなぁ。ないものねだりですけれど。エルヴィーラの方は技巧的に確かなものを感じましたし、後半のヴァリエーションもセンスが良くて楽しめました。2曲ともとにかく声のコントロールが凄いし、ピアニッシモが美しいのなんの。うん、ベルカント物は間違いない。ただし、ベルカント中心とはいえ、声に人間味があるので、技巧とか様式美とかそういうもののみで聴かせる感じではない。だからヴィオレッタがあれだけ素晴らしいと感じたんだと思うんですよね。歌に血が通ってるというか。だから、ある程度オールマイティさもありつつ活躍していくのかな。いやー、これから楽しみだなぁ。

サルシは、初日に若干高音部がこもるなという印象でしたが、2日目は全くそれを感じさせず、イタリアのバリトンらしい歌い口で、明るく朗々と歌い、曲によっては感情と言葉の結びつきが素晴らしく、心を動かされる表現に凄みを感じ頷きながら聴きました。

彼が一番良かったのは、そうだなぁ、初日はロドリーゴで2日目はリゴレットですね。
「ロドリーゴの死」は、もっと大げさに歌うのかと思ったら、全くそうではなくて、ドン・カルロに語りかけるように歌っていたのが印象的でした。それにとても感動。とにかく優しく優しく歌っていました。泣けます。サルシは歌い終わった後の声の残響が美しくて、こういう曲だとそれがより引き立つので、更に感動を産みます。オケも素晴らしかったのもあって、ほんとに、最高でした。
「悪魔め、鬼め」は、正直初日は全然良くなくて、というか、それのみ良くなかったのですが、2日目は最初の「こーるてぃじゃーにー」の一声目から「おいおい、サルシさん、まじかよ。めっちゃくちゃええやんけえええ!!」と心躍ったのを覚えております。リゴレットの訴える言葉が心にグサグサきましたし、高音部もめちゃくちゃ綺麗に鳴っていて、初日が嘘のよう。イタリア語の使い方もやはりうまいですよね。イタリア人なだけあって。うん、まさにこれぞイタリアのヴェルディバリトンといった感じ。
ヌッチ以外でこの2曲を実演で満足させてくれたのはサルシだけかもしれません。ヌッチの呪いとでも申しましょうか。これらの曲は否が応でも脳内で比較してしまうのですが、今回脳がそれをすることを忘れ、ただ素晴らしい歌唱に感動させられました。

他に、ジェルモンらマクベス、フォスカリも良かったですが、ドゥルカマーラもなかなか良かったです。かなり早めのテンポで言葉を矢継ぎ早に歌う所が大変そうかと思いきや、しっかりくっきりと歌っていて、こっちもイケるのねと少し驚きました。セヴィリアのフィガロに関しては映像で持ってるので何となく想像は出来てましたがそのままでした(笑)
ちなみに、『愛の妙薬』は初日より2日目のアンコールの方が二人の息が合って良かったです。

アンコールの話が出たところで、両日のアンコールはこんなんでした。

初日のアンコール

2日目のアンコール

これを見ると2日目の方がお得でしたね。ただ、「そうだ、復讐は、恐ろしい復讐は」何故初日にプログラムの中でやらなかったのだろう。流れ的には十分やれる感じだったし、会場としてもそれやるだろうと思っていたからなのか、二重唱終わった後の拍手が思ったより小さかったんですよね。ま、2日目も行った人は聴けて良かったねって話にはなるんですけど。ちなみに、めちゃめちゃ良かったです。オロペサもサルシも素晴らしくて、最後のアクートも輝かしく突き抜けて、あー、もう、全曲聴きたくなりましたよ(笑)
ジャンニ・スキッキのアリアも最高。サルシは表情たっぷりに面白く歌い上げつつも所々ほしいところはしっかりと歌い聴かせてくれました。オロペサのラウレッタは、もういい加減いいよこれって感じもしましたが、やはり彼女が歌うと上手いんで、聴き惚れちゃうというね。2日目は、サルシが舞台から消えていくのを止める仕草をしてから泣き真似をして歌い始め、会場の心をがっつり掴んでいました。

それと、オケがまた良かったのよね。今回は東フィルだったわけですが、フローレスの時のシティ・フィルとはまた違った感じ。シティ・フィルは指揮者が若かったのもあり、溌剌としていて若々しく透明感が強かった。東フィルは全体的なバランスがとてもとれていて、音に厚みと包容力を感じました。ヴェルディなんかは最高でしたね。やはりオペラの東フィルですね。指揮をしたランツィロッタはとても手堅くオケをまとめていて、序曲や間奏曲なんかも素晴らしかったです。常にオケからイタリアの音を感じるので、ぴったりな人をマエストロとして連れてきたなと思います。

いやー、とにもかくにもかなり豪華なリサイタルでしたよ。うんうん。こんなスターが揃ったのに何で会場7割くらいしか人いないのかなと不思議でしょうがない。というのは置いておいて、こういうリサイタルもっとやってほしいということを切に願いますね。めちゃめちゃ楽しかったし、実力ある人達だから出来たリサイタルだとも思います。ほんとにどの曲も素晴らしかったし、当然でしょうが、聴いていて不安が全くない。これがプロだよなと。オケじゃないと嫌だと言うかもしれませんが、ピアノ伴奏でのリサイタルなんかもやってほしいなぁ。いやー、とにかく、リサイタルを聴いてから二人にまた来てほしい欲が湧きまくりです。

2日間楽しかった。耳福でした。