今日は先日素晴らしい公演を聴かせてくれた、新国立劇場公演のベッリーニ作曲『夢遊病の女』の千秋楽に行って参りました。今日だけ開演時間が13時で1時間早かったんですよ。で、X(旧ツイッター…これいつまで要るんや)でフォロワーさんにそれを教えられて、焦りましたよね(笑)14時に間に合うように行こうとしてたので、ほんとに教えてくれて感謝でした。ちなみにチケット持ってる後輩も14時開演だと思ってたということで、危なかったです。思い込みって怖いですな。
今日の公演は9日に増して素晴らしいものとなりました。実にレベルの高い公演。
まず、エルヴィーノ役のアントニーノ・シラグーザがのっけから素晴らしくてそのまま最後までずっと素晴らしかった。前回はちょっとお疲れ気味かなと思いましたが今回はそんなこともなく100%解放といった具合で、シラグーザここに有りというような歌唱にうなりました。
出てきてすぐ歌う"Perdona, o mia diletta...Prendi: L'anel ti dono"では、非常に甘い声と雰囲気、そしてイタリア語の響きがいちいち美しい。"Son geloso del zefiro errante"の方の2重唱も同様で、なんという甘美な時間。しかもマエストロのベニーニがかなりゆったりめでしっかりと聴かせる。常人の歌い手では歌いきれそうもないテンポ感。腕?いや、喉か。技術も声もあるから崩れちゃうこともなく2人の呼吸もピッタリと合うし、安心して聴いていられる。"Non più nozze" や"Ah! Perchè non posso odiarti"の劇的な表現も上手いし、アクートも綺麗に決めてくる。"Tutto è sciolto…" でのこの世の終わりのような悲しそうな入り方も最高でした。シラグーザ、まだまだベルカントのトップを走り続けています。
アミーナ役のクラウディア・ムスキオも前回よりも良くて、シラグーザもそうだった(と思う)のですが、歌いこなれてきて、ヴァリエーションがほんの少し難しいものになったような。彼女は世界の最前線のベルカントオペラの楽しみをしっかりと打ち出しつつ、惜しみなくそれを聴衆に出し切ってくれたのが本当に好印象。要はヴァリエーションをさぼることなく、役に落とし込んでそれを表現していました。
"Sovra il sen la man mi posa" のコロラトゥーラ部分はベニーニがわけわからん速さで歌わせていたけどそれにしっかりと応える技術力。良く転がる声。素晴らしかったし、テンション上がりまくりでしたよ。この曲の合唱はこれまた最高で、残響感もまた良い。ほんと素敵。『夢遊病の女』の合唱ほんと良いよね。全体的に主張してきてそれがベニーニによって欲しい形で表現されて津波のように迫ってくる。最後のアリアでは"Ah! Non Credea Mirarti"でのピアニッシモの極上の美しさ、そしてそれを跳ね除けるような"Ah! Non Giunge"での超絶技巧的な歌唱、そしてヴァリエーションの豊富さ。更には合唱も入ってきて最高潮の盛り上がり。どこも素晴らしくてやはり彼女がソリストではMVPだなと感じずにはいられませんでした。
合唱は前回同様に今日も素晴らしくて終始燃えてました(笑)2幕冒頭の合唱は立ち上がりたいくらい燃えました。新国の合唱団の方々一人一人にハグしてありがとうと言いたいよ(ただの迷惑行為や)。ガチで最高。オケもこれまた文句なし。文句なしどころか、文句なんかあるわけない。これぞベルカントという感じでイタリアの風しか吹いてなかった。ベニーニの意図をよく汲んでいるんだろうなと思いましたね。あとどこだったかなぁ。ちょっと忘れちゃったけど弦楽器のピッチカートがズンズン胸に響いてきたとこがあってめちゃめちゃ熱かった。
ソリストだと、妻屋秀和さんは期待通りで安定感抜群。伯爵ってこんなかんじだったんだろうなと思える歌唱と所作。流石です。伊藤晴さんは2曲目のアリアが前回も良かったのですが更に良かったです。第一声目からノリノリというか、喉がパッカーン開いてる感じで、ひっじょーにベルカンティッシモでした。渡辺正親さんはイメージだともう少し重めな物をやるのかと思ってましたが、声自体は公証人らしく、脇をしっかり固めてました。
そんなわけで、新国立劇場のおかけで『夢遊病の女』が更に好きになりました。ありがとう新国。また、この作品はよく知ってるつもりだったのですが、新たに愛妙と連隊の娘とノルマを足したような雰囲気ありますよね。ちょこっと。うん、まぁそれならそれで好きになるわ。全部大好物だもの(笑)
13時開演だったし、出待ちもサクッと終わったので16:30くらいにはオペラシティをあとに。いいねー。早く終わるってのも。地方から来てる人間にはありがたいかぎり。
あ、そうだ。出待ちと言えば。
9日も出待ちをしたのですが、1人の歌手に大量にサインもらってる人いたんですよね。今日はそういう人比較的少なかったかとは思うけど、ほんとにそういう人さ、マジで迷惑。演者さんも大変だし、なんなら警備員さんも大変だし、そんなんはマジでやめましょうって思っちゃいますね。あとさ、なんか良くわからないマニアの中であるルールみたいなやつ?「まずはサインで、そのあと写真」って知らんがな(笑)お前はサリエリか(笑)私もかれこれ20年近く出待ちとかしてきてるけど、1部で勝手に作られてるその謎のルールみたいのほんとなんなん。運営とかがこれこれこうしてくださいねって言ってるなら全然守るし、言われたようにやるけど。ちなみに全然怒ってるわけではないです。単純になんやねんという。
さ、そんなわけで、来シーズンはどんなベルカントオペラが我々を待っているのか。楽しみですなぁ。え?ベルカントオペラやるの決まってるのかって?知りません(笑)圧です。やりますよね?っていう(笑)