たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!"

たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!"

主にオペラの感想等を亡備録として書き連ねていこうかなと思ってます。
その時感じたことをそのまま書くようにしてますので、文筆がおかしいことは多々ありますが、良ければご覧下さい。


オペラ観賞の感想などを手記してきます。大好きなオペラ歌手はレオ・ヌッチ。

今日は先日素晴らしい公演を聴かせてくれた、新国立劇場公演のベッリーニ作曲『夢遊病の女』の千秋楽に行って参りました。今日だけ開演時間が13時で1時間早かったんですよ。で、X(旧ツイッター…これいつまで要るんや)でフォロワーさんにそれを教えられて、焦りましたよね(笑)14時に間に合うように行こうとしてたので、ほんとに教えてくれて感謝でした。ちなみにチケット持ってる後輩も14時開演だと思ってたということで、危なかったです。思い込みって怖いですな。


今日の公演は9日に増して素晴らしいものとなりました。実にレベルの高い公演。


まず、エルヴィーノ役のアントニーノ・シラグーザがのっけから素晴らしくてそのまま最後までずっと素晴らしかった。前回はちょっとお疲れ気味かなと思いましたが今回はそんなこともなく100%解放といった具合で、シラグーザここに有りというような歌唱にうなりました。

出てきてすぐ歌う"Perdona, o mia diletta...Prendi: L'anel ti dono"では、非常に甘い声と雰囲気、そしてイタリア語の響きがいちいち美しい。"Son geloso del zefiro errante"の方の2重唱も同様で、なんという甘美な時間。しかもマエストロのベニーニがかなりゆったりめでしっかりと聴かせる。常人の歌い手では歌いきれそうもないテンポ感。腕?いや、喉か。技術も声もあるから崩れちゃうこともなく2人の呼吸もピッタリと合うし、安心して聴いていられる。"Non più nozze" や"Ah! Perchè non posso odiarti"の劇的な表現も上手いし、アクートも綺麗に決めてくる。"Tutto è sciolto…" でのこの世の終わりのような悲しそうな入り方も最高でした。シラグーザ、まだまだベルカントのトップを走り続けています。


アミーナ役のクラウディア・ムスキオも前回よりも良くて、シラグーザもそうだった(と思う)のですが、歌いこなれてきて、ヴァリエーションがほんの少し難しいものになったような。彼女は世界の最前線のベルカントオペラの楽しみをしっかりと打ち出しつつ、惜しみなくそれを聴衆に出し切ってくれたのが本当に好印象。要はヴァリエーションをさぼることなく、役に落とし込んでそれを表現していました。

"Sovra il sen la man mi posa" のコロラトゥーラ部分はベニーニがわけわからん速さで歌わせていたけどそれにしっかりと応える技術力。良く転がる声。素晴らしかったし、テンション上がりまくりでしたよ。この曲の合唱はこれまた最高で、残響感もまた良い。ほんと素敵。『夢遊病の女』の合唱ほんと良いよね。全体的に主張してきてそれがベニーニによって欲しい形で表現されて津波のように迫ってくる。最後のアリアでは"Ah! Non Credea Mirarti"でのピアニッシモの極上の美しさ、そしてそれを跳ね除けるような"Ah! Non Giunge"での超絶技巧的な歌唱、そしてヴァリエーションの豊富さ。更には合唱も入ってきて最高潮の盛り上がり。どこも素晴らしくてやはり彼女がソリストではMVPだなと感じずにはいられませんでした。


合唱は前回同様に今日も素晴らしくて終始燃えてました(笑)2幕冒頭の合唱は立ち上がりたいくらい燃えました。新国の合唱団の方々一人一人にハグしてありがとうと言いたいよ(ただの迷惑行為や)。ガチで最高。オケもこれまた文句なし。文句なしどころか、文句なんかあるわけない。これぞベルカントという感じでイタリアの風しか吹いてなかった。ベニーニの意図をよく汲んでいるんだろうなと思いましたね。あとどこだったかなぁ。ちょっと忘れちゃったけど弦楽器のピッチカートがズンズン胸に響いてきたとこがあってめちゃめちゃ熱かった。


ソリストだと、妻屋秀和さんは期待通りで安定感抜群。伯爵ってこんなかんじだったんだろうなと思える歌唱と所作。流石です。伊藤晴さんは2曲目のアリアが前回も良かったのですが更に良かったです。第一声目からノリノリというか、喉がパッカーン開いてる感じで、ひっじょーにベルカンティッシモでした。渡辺正親さんはイメージだともう少し重めな物をやるのかと思ってましたが、声自体は公証人らしく、脇をしっかり固めてました。


そんなわけで、新国立劇場のおかけで『夢遊病の女』が更に好きになりました。ありがとう新国。また、この作品はよく知ってるつもりだったのですが、新たに愛妙と連隊の娘とノルマを足したような雰囲気ありますよね。ちょこっと。うん、まぁそれならそれで好きになるわ。全部大好物だもの(笑)


13時開演だったし、出待ちもサクッと終わったので16:30くらいにはオペラシティをあとに。いいねー。早く終わるってのも。地方から来てる人間にはありがたいかぎり。


あ、そうだ。出待ちと言えば。

9日も出待ちをしたのですが、1人の歌手に大量にサインもらってる人いたんですよね。今日はそういう人比較的少なかったかとは思うけど、ほんとにそういう人さ、マジで迷惑。演者さんも大変だし、なんなら警備員さんも大変だし、そんなんはマジでやめましょうって思っちゃいますね。あとさ、なんか良くわからないマニアの中であるルールみたいなやつ?「まずはサインで、そのあと写真」って知らんがな(笑)お前はサリエリか(笑)私もかれこれ20年近く出待ちとかしてきてるけど、1部で勝手に作られてるその謎のルールみたいのほんとなんなん。運営とかがこれこれこうしてくださいねって言ってるなら全然守るし、言われたようにやるけど。ちなみに全然怒ってるわけではないです。単純になんやねんという。


さ、そんなわけで、来シーズンはどんなベルカントオペラが我々を待っているのか。楽しみですなぁ。え?ベルカントオペラやるの決まってるのかって?知りません(笑)圧です。やりますよね?っていう(笑)





今日は、ベッリーニ作曲の『夢遊病の女』を聴く為に新国立劇場へ行ってきました。ベッリーニの作品の中でも特に好きなこの作品ですが、残念ながら聴ける機会は決して多くはないんですよね。なんとなくタイトルが重いから劇場としてもやらないんじゃね?夢遊病だもんな(笑)でも中身は美しい音楽に活き活きとした合唱、耳に残るアリアの数々といった具合に、聴きやすいしノリ易い作品なんだけどね、なんて思ったり。ちなみに、新国立劇場としても初の上演だそうです。なんならベッリーニ自体が初という、少し耳を疑う状況。今回ようやくそれを打破できたことは日本のオペラ界にとっても良いことだと思います。ようやく眠りから覚めたのかしらね。新国も。ベルカントやらな過ぎで言えばもはや夢遊病どころか仮死状態やんという感じでしたけど。ロメジュリかと。いや、仮死というか瀕死?ロドリーゴですか?で、起きたなら起きたで、もう寝るなよってね。北京にお触れ出したろか。そんな気もしております(いちいちうるせぇんだよ)


感想と致しましては…満足だぜっ!!

やっぱベッリーニ良いねー!!音楽が素晴らしいのなんの。そして、そう思われてくれたベニーニの手腕といったら。あぁ素晴らしい。ワクワクを100倍にしてパーティーの主役になろう、どうもドラゴンボールZです。そんな感じでしたね(何となく伝わる人には伝わっちゃうやつだけども)


ベニーニはしっとりと歌わせる所はかなりゆったり目なテンポ。エルヴィーノとアミーナの2重唱やアミーナの最後のアリアなんかはとってもゆったり。そういうところから、劇的なシーンに移るとこれでもかとテンポアップして畳み掛けてくる。それが気持ちをぐわーっと高揚させてくる。舞台にのめり込ませてくる。あぁ楽しい。これぞベルカントオペラ。そんなことを思わせてくる。また彼の理想を形にする為に彼の意図を組んでそれを見事に表現してくる東フィルがまた素晴らしいのなんの。さすがオペラの東フィル。

ほいでほいで、MVPと言っても過言ではないのが合唱です。ベニーニが音楽を畳み掛けてくるとそこに大抵合唱も関わってくるのですが、こんなにも合唱が雄弁に語るのかと思うほどでした。重装歩兵の戦いのような、地鳴りのように心に迫ってくる感じ。線でなく面で。あの合唱があってこその今公演と思うほど素晴らしかったですね。


ソリストもみなさん素晴らしかったですが、まずは夢遊病の女その人、アミーナ役のクラウディア・ムスキオについて。元々はローザ・フェオーラがアミーナにはキャスティングされており、彼女のアミーナが国内で聴けるなんて最高やんけと思っていたら降板。その時はがっかりしたのですが、今となってはそんな思いは微塵もなく、恐らくまだ20代後半くらいの年齢かと思いますが、スター歌手の本邦初公開を体験できたことを嬉しく思っております。

アミーナの1幕のカヴァティーナでのコロラトゥーラの妙技。合唱との呼応も気持ちいい。2幕のフィナーレで最後のアリアまでの緊張感。あれだけゆったりと歌いながらも決して緊張感が切れない凄さ。どれも唸りました。また、終始ピニッシモが美しいのよ。それと、なーんか演出のせいなのか、彼女が歌い始めると、ものすごくそれを全面的に感じるというわけではなにせよ、陽というよりは陰を感じる自分がいて、そういうオーラを持ち合わせている(表現できる)所も良いなと感じましたし、歌や所作から本当に夢遊病の人が舞台上に出てきたような印象すら持ちました。彼女の日本デビューに立ち会えて本当に良かった。

 

次にエルヴィーノ役のアントニーノ・シラグーザですが、前半かなりお疲れ気味な様子で精彩を欠いていたなと思いました。シラグーザをあまり聴いたことない人だとそう感じないかもしれませんが―つまり、聴けないレベルではなくて、シラグーザならもっと軽々上も鳴るし本調子じゃなさそうと感じるレベル―何度も聴きまくってる私としては結構大変そうだなという印象でした。しかし、そんな中でも1幕の2重唱は持ち前の甘い声が最大限活かされていてムスキオとの相性もばっちり。「僕はそよ風にも妬けちゃう」みたいなことを怒りながら言う彼に声が素敵過ぎて可愛らしさも感じてしました。ネモリーノみたいやなと。あとは、1幕フィナーレでの"Non piu nozze"からの喚き散らすあたりも良かったし、2幕のアリアではそれまで温存していた(と勝手に私が思っている)喉を惜しみなく使って、アクートもバンバン決めて、観客から大きな拍手を贈られていました。シラグーザはこうでなくっちゃ。ちなみにそれ終わってからのロドルフォが説得する辺りではホッとしたのもあったのか、完全に解放してました。尻上がりに良くなるとはこのことですな。何れにしても60過ぎてあの声を保ってるのは奇跡です。来て歌ってくれてありがとうと言いたいです。


ロドルフォ伯爵の妻屋秀和さんは、1幕開口一番の声がめちゃめちゃ明るくて物凄く良いところで鳴っていて、思わず拍手したくなりました。そこからのアリアがまた良くて、下もめちゃめちゃ鳴っていて感動。妻屋さんまた磨きがかかったのかなと思うくらい素晴らしかったです。あの明るさでしっかり豊かな声のバスって居ないんです。貴重。そして舞台に妻屋さんがいると締まるね。これ結構大事。


リーザ役の伊藤晴さんですが、ある種1番驚いたかもしれません。最近重めな役をやられている印象だったのですが、今回のリーザはめちゃめちゃハマってました。1幕にも2幕にもアリアが用意されているのですが両方ほんとに良くて、特に2幕のアリアは手が痛くなるくらい拍手しました。技術的にも様式的にも違和感なくて、え?であればこういう役もっとやっていったらいいのにぃ!!ってなりました(笑)ベルカントもっとやって欲しいなぁ。ガチで良かった!!


そんなわけで、指揮もオケも合唱もソリストもみんな良かったわけですが、演出だけがなんとも言えなかったですね。まず幕開きのダンサーのシーンが長すぎ。アミーナの心の負の部分なのか、病気への恐れのメタファーなのか、そんな感じかなぁとか思いながら見てましたけど、だとすると一貫性がないなぁと思ったり、1幕の幕開きでアミーナに生えてた木は、成長して、加工されて、最後教会(家?)になっていったんだろうけど、それってとても意味があるんだろうけど理路整然とは読み解けないし、なんだかなぁという感じ。最後はアミーナが飛び降りるという個人的には要らないサプライズ。そういや前にジェシカ・プラットがこの演出でやってるの見たことあるぞなんてその時今更思い出したりして。結局彼女は幸せだったのかどうか。うーむ。悩んだけどあまり分からなかったので、後で恐らくヒントか答えのあるだろうパンフを読んでみようと思います。


さ、そんなわけで、演出だけよくわからん的な感じはありましたが、それ以外はほんと最高でしたので、そんな公演に出会えて良かったです。初めてプロのオペラを観るという会社の後輩が、1幕終わった段階で「めちゃめちゃいい話ですね。凄い楽しんで見入ってました」と言っていて、その子のセンスもすげぇなと思いながら、喜びに胸躍らせて2幕へ突入できました(笑)オペラ連れてって喜んでくれると嬉しい。初が夢遊病はレベル高いかと思ったけど全然大丈夫だったー。うふふ。


さ、千秋楽も楽しみだぜ!!


















高校の先輩がコンサートを開催するということで聴きに行ってきました。高校の頃からお世話になっていて、近年は私の主催している小杉山歌劇団にも毎回参加してくださっている大好きな先輩の晴れ姿、目に焼き付けねばと思い勤務調整をして臨みました!!

場所は静岡市の一等地でしょうね、おまちもおまちにある札の辻クロスホール。はじめましてでしたが、とっても綺麗でオサレなホールでした。キラキラと白が映える結婚式場のようなまさに「ハレの舞台」といった感じ。大事なお弟子さんと二人での初コンサートにはぴったりの場所といった感じでした。


二部構成で、前半はオペラアリアや日本歌曲、ドイツ歌曲などを披露し、後半は先輩の作曲した一休宗純の書いた『狂雲集』を元に作られたモノオペラのお披露目でした。


前半良かったのは、ドニゼッティの『愛の妙薬』から「人知れぬ涙」や『トスカ』から「星は光りぬ」はよく歌い込まれていて流石でした。シューマンの「献呈」も素晴らしかったです。実に優しくそして喜びに満ちて歌っているのが印象的でした。シューマンが奥様のクララに捧げたこの曲を会場にいる皆様へ捧げますという気持ちで歌われていたのかな。良かったです。白眉はスペシャルゲストの望月智代さんと歌った『蝶々夫人』の「愛の2重唱」が素晴らしかったです。この曲っていきなりピンカートンが「俺のこと好きだろ?」っていうオーラがぶわーっと流れてくる感じがなんともムカつくのですが、杉浦さんからはそれがめちゃめちゃ出ててムカつきました(笑)本人の名誉のために言っておきますが全然そんな人ではないのですよ(笑)ピンカートンは声も合うしこんなにハマるんだって新しい発見でした。本人が集中してノッていく感じがまた良かったです。

弟子のまこっちゃんは、これまでのイメージよりも声の層が厚くなっており、上も下もよく鳴るようになったという印象。何より師匠にどんどん似てきているなと感じました。益々これからが楽しみですね。


後半の『狂雲集』ですが、もうほんとに大拍手をお贈りしたいです。ご自身で作曲されたにしても、よくあれだけ沢山の曲を覚えてそれを間違えずに披露できるものだと感心しっぱなしでした。それだけ気合い入っていたんだなというのも伝わってきました。しかも演技も最高。お客さんの反応もめちゃくちゃ良くて、ドッカンドッカンウケてました。早口の曲は少しロッシーニ風、いや、フラ・メリトーネ風?(笑)な感じもあったりして初めて聴いたのにノリノリで聴けました。ピアノと歌の息もぴったり。40分くらいかな、1人で歌い演技をして動き回って、ほんとに尊敬。これまで以上に尊崇の念を抱いてしまいました。いやー、ほんと凄かった。楽しめました。ちなみに「狂雲集」書いた台本作家と一緒に聴いていたのですが、終わってから渾身の下ネタ部分がカットされたと嘆いていたのはここだけの話(笑)


素晴らしいコンサートありがとうございました!!

今回、杉浦さんが会場のお客様みんなに愛されてる感じが終始していて、それが会場内に充満していて、あぁここは素敵な空間だなぁと思い私の心も暖かくなりました。秋のコンサートですが心は春のよう。

そして、先日『アルジェのイタリア女』の2重唱を2人でやってリンドーロ噛みまくってた人とは思えないくらい光り輝いてました。

ガチでマジでカッコ良かったっす先輩!!

これからもよろしくお願いします!!!!

病み上がりのこすちゃんより。







【ネタバレだらけ注意】


今日は二期会によるモーツァルト作曲『コジ・ファン・トゥッテ』を聴きに新国立劇場へ行ってきましたー。

なんと、前回ブログを書いたのが4月だそうです。それから書いてないらしいんだけど、観賞には出かけてるんです。多分ずっと忙しかったんだなと思う。お疲れ俺。そんなことを思いつつ、今日は高速バスで帰るので3時間も書く時間があるので書いちゃうぜということで放屁録を。まてまてまてーい。誰がおならの記録をつけてんねん。忘備録や!!

ということで、本日早くも満塁ホームランが出たところで本編のお話へ。


今回の演出はロラン・ペリーが演出するということで、教師びんびん…ではなく興味津々(トシちゃん世代でもねぇだろ)。ペリーと言えばフローレスの地位を確立した公演と言っても過言はないだろう、ドニゼッティ作曲『連隊の娘』を演出したことで有名。2021年に二期会ではヴェルディ作曲『ファルスタッフ』の演出で招聘したのも記憶に新しい。彼の演出は一見奇抜そうな感じがするけど、よく見てみると全くそんなことはなくて、音楽と動きが緻密に計算されていて、静と動が見ていて気持ちいい。とにもかくにも音楽を活かし切る演出という印象があります。そういう意味では、私の尊敬するジャン・ピエール=ポネルに通じる様な感じもしています。そんな彼が『コジ・ファン・トゥッテ』を演出する。そりゃ楽しみになっちゃいますよね。どんな舞台になるんだろうとワクワクしながら観賞しました。もちろん今回もパンフレットは買いましたが、これを書き上げてから読みます。自分の感覚だけの記録をしておきたいので。


幕が開くと、フィオルディリージとドラベッラがレコーディング室の外から部屋中の様子を覗いている。真っ暗な中、部屋に入ってくると、電気が点く。そこから序曲の演奏が始まる。見たところ今からレコーディングをする様だ。フィオルディリージとドラベッラは舞台後方の長ソファーに座り多分ベーレンの楽譜らしきものを読んで歌うところの確認。部屋の中にはソリストとスタッフ達。フェランド(下手)は口の体操をしたり体の体操をしたり。途中で後方にいるドラベッラにお前もやれよばりに体操をやってみせる。それに応えるドラベッラ。グリエルモ(上手)は途中でトイレに出かけて、出番ギリギリに戻って来る。アルフォンゾは最初は下手側の奥のソファーで新聞を読んでいたけど、センターのマイクにスタンバイ。そこから『コジ・ファン・トゥッテ』のレコーディングが始まる。そんな始まり。


ちなみに、フェランドとドラベッラは緑色、グリエルモとフィオルディリージは薄い青っぽい色?服の色を着ているので、関係性がパッと見で分かりやすい。


お客さんは私も含め最初の頃は見方が分からないのとマイクに向かって録音を続ける風景が続くので何となく退屈。ただし、これがどこかのタイミングでペリーの魔法がかかるんだよななんて思って観てたのでワクワク。冒頭の男3人のレコーディングは無事終わり、後ろにスタンバイをしていた女性2人の出番。舞台下手側にハの字の1画目のようになるようにフィオルディリージとドラベッラがマイクと楽譜と一緒に並ぶ。逆にアルフォンゾは上手隅の手前で同様にスタンバイ。

2重唱が終るとアルフォンゾが仕掛けてくるわけですが、そこから急に照明が絞られて、上手にいたスタッフも居なくなり、舞台には3人だけに。アルフォンゾが現実の話のように、彼氏が旅立たなければならないということを2人に伝えます。そして、男2人が肩を落として彼女の前にやってくる。5重唱が終ると、合唱がレコーディングとして(だと思うんだけど)集合して歌う。そこからはレコーディング中の演技ではなくてガチの話として物語が進んでいくようでした。恐らくアルフォンゾによって心理的に不安にさせられたフィオルディリージとドラベッラがレコーディングを進めていく中で、自分の本音の気持ちの部分が登場人物に寄ってしまったということではないのかなと思いました。そしてそれが派生していき、登場人物が本来の自分を見失い、キャラクターと同化していったということです。だだし、1幕の終わりや2幕の終盤で楽譜をめくったりマイクが降りてきたりしていたのでそこが本来の自分とキャラクターとの境を分かりやすく表現してくれていたように感じます。という完全に私見ですので違ってたら笑ってね(笑)


あ、あと、デスピーナをスタッフに設定したのは良かったですね。とても自然に観れました。ホットココア的なものを淹れてくる辺りそれっぽいもんね。


演者もみんな適材適所で素晴らしかったです。

特に素晴らしかったのは、フェランドの糸賀修平さんと、フィオルディリージの種谷典子さん、ドラベッラの藤井麻美さん。

糸賀さんは、ツヤッツヤよ。お声がね、ツヤッツヤ。ツヤッツヤのピカッピカ。甘くて光り輝いていて遊び心満載という感じのすんばらすぃ声。どうもーイタリアでーす。ってずっと言ってるのよ声が。もう嬉しくなっちゃったよね。糸賀さんは生では端役みたいのでしか聴いたことなかったけど、今回聴いてみてマジで拍手。冒頭のあと5重唱から歌はもちろん演技も冴えまくりで所作もオペラっぽいし、最高でした。納得いかないのは1幕の「愛の息吹は」はあの5倍くらいの拍手の量があって良かった。ほんとに。クッソ良かった。マジで。Bravoとか言いたかったけど恥ずかしくなっちゃって言えなかった私の不甲斐なさというとこは申し訳ないけど、マジでめちゃめちゃ良かったもん。拍手は惜しみなくしました。フィオルディリージを口説こうとするけど、ヒドラが!バジリスクが!とか言って避けられる辺りのシリアスな所からの、グリエルモの「女たちよ」からの「裏切られ」のアリア、このあたりの一連が超絶良かった。「裏切られ」のアリアとかそれまでと全然表現変えてきてて、本気のフェランド120%って感じでマッジで良かった。鳥肌もんでしたよ。だからわたしゃBravo叫んだわよ。これをリベンジBravoという(うるせぇよ)。あと「あぁ、私にはわかる」のアリアのカットはもったいなかった。聴きたかったー!!世界レベルの素晴らしいフェランドでした。良いもの聴かせていただけました。ありがとうございます。


そして、種谷さんも良かったわー。フィオルディリージって自分のイメージだと声種ではなくて、声質的には少し重めなイメージだったんだけど、種谷さんの若々しい軽々とした声により、どこぞのオバサンの悶えというか、苦しみみたいな感じ聴こえずに、純粋に自分の心の中に芽生えてしまう愛に戸惑う若い女性という感じが新鮮でぴったりでした。「岩のように動かず」では他の相手を好きになるなんてことは微塵も見せない毅然とした女性を表現していました。演出的にもマイクが降りてきていたので、まだまだ抵抗出来るというか、純粋なフィオルディリージのままで歌いきってくれたという感じだったのかなと思います。その後の、「行ってしまうわ…」のロンドはさらにさらに絶品でした。フィオルディリージを録音しに来たソプラノ歌手とフィオルディリージが完全に一体化してましたね。種谷さん、おキャンな役からもうこんなにも苦しみを表現するような役をやれちゃうようになったんですね。成長が嬉しいわよ。愛に苦しむフィオ。その愛の重圧が視覚的にも分かりやすく、部屋の壁が迫ってきて自分の動ける範囲が気付いたらとても狭くなっていたというものが非常に良い効果を出していたと思います。もう動けないんですね。ただ、迫ってくる壁がギーギー音出てたのは微妙でしたが。あれ、まさかあれも計算?フィオルディリージの心の軋む音だったり?(笑)種谷さんのヴィオレッタ聴けなかったので今回聴けて本当に良かった!!次も期待して待とう。


藤井さんは、イタリア語がとても明瞭で声量があって、とてもはっきりとした声。ですから、イタリア物は何でも合うと思いますけど、ドラベッラはこれまた合ってましたね。ドラベッラはイタリア物なのかはさておき。この役って偏見で言いますが、ほんとに偏見ですが、どんなに上手い人が歌ってもそれなりってイメージなんですよね。でも藤井さんはそこを覆すべく、大胆な演技と歌で素晴らしいドラベッラを演じてくれました。最初のアリアで聴衆の空気感を変えましたよね。そこから拍手が出始めた。そういう空気感とかオーラを持ってる人はやっぱオペラ歌手には必要ですよね。声も良いけど演技派ですね。見とれました。


他にも宮下さんのベルカントで上も良く鳴るグリエルモや九嶋さんの舞台狭しと走り回りながら、声色変えながら歌いつつも、しっかり聴かせてくれるデスピーナとか、どれもかなり高水準だったと思います。素晴らしい『コジ』を体験できたんだなと改めて思います。良かったなー。


指揮者のクリスティアン・アルミンクは手堅いといった感じでしょうか。ややオールディーズな雰囲気。テンポてきにはなんだか遅いなーとまでは言わないにせよ、早くはないねというくらいで、ほんとにややゆったりめみたいな感じ(わかりにくっ)。

個人的にはオケがグイグイ推進力強めで盛り上げていくのが好きですが、今回の演出にはちょうどいいテンポだったかもしれません。


先輩のブログなんて1人しか読んでませんよという後輩に告ぐ。今回の二期会の『コジ・ファン・トゥッテ』めちゃめちゃ良かったです。やっぱり人間模様ですよね。演出の魅せ方や歌い手の表現力の凄さはもちろんですが、やっぱモーツァルトの音楽が素晴らしい。明日他の組でまだあるみたいなので、行ってみるのも良いと思います。てか、行け(笑)今日こんな素晴らしい公演だったのに集客がイマイチだったのは悔しい。ではでは。


新国の入口のとこ


座ったあたり(U39席)

タイムテーブル

出演者

パンフレット


今日はテアトロ・ジーリオ・ショウワまで、私の大好物のオペラを聴きに行ってきました。

まぁこの時点で「お前の言うことだからどうせロッシーニだろ」とか、「お前はロッシーニのカリカチュアにどんどん似てきてんだよコノヤロウ」とか、「シンプルに太り過ぎなんだよ」とかそういう声が飛んできそうですが(最後のただの悪口)、そうです。あたすが聴きに行ったのは寸分の違いもなくロッシーニのオペラです。演目はこれまた大好きな『チェネレントラ』。英語で言うと『シンデレラ』、フランス語だと『サンドリオン』というあれでごわす。


今回のプログラムは2018年4月28日、29日の藤原歌劇団公演が初演となったフランチェスコ・ベッロット演出の再演。ちなみに同年5月12日の第58回大阪国際フェスティバルでも上演された演出です。筆者は4月28日の公演と大阪で実演に触れています。


2018年藤原歌劇団公演のチラシ


2018年大阪国際フェスティバルのチラシ

今年は藤原歌劇団は90周年だそうで、この『チェネレントラ』はその記念公演だそうです。


2024年(今回)のチラシ(表)


2024年(今回)のチラシ(裏)


誰をお目当てに行ったのかは言わずもがな。小堀勇介さんです。小堀さんでロッシーニはマストで行きますと、まぁこういうことになるわけですが、今回も素晴らしかったです!!

小堀さんのラミーロは何度も聴いているのですが、毎回何かしらの変化があります。今日は初めて聴くバリエーションがありました。小堀勇介薬籠中物のラミーロでしょうが、あぐらをかくことなく、真剣に役と向き合い、声の変化に合わせて進化し続ける彼の素晴らしさ。うむ、応援のしがいがあるぜ。

最初の2重唱でお客さんの心を鷲掴み。会場を小堀ワールドに変えちゃうんですよね。声出す前の前奏から、期待感が増々になっていくので、期待感のロッシーニクレッシェンドからの、「とぅっとえでぜーると、あみーち、ねっすんりすぽんでぃ」で、はいきたー、となるわけで。ちなみに、ねっすんりすぽんでぃの歌い方が個人的にはとても好き(しっかりアルファベットを使いなさい)。小堀さんが歌うとみんなその声を逃さず全部聴くぞって空気感になって、会場の集中力がガーン増すんですよ。これは前からそうで、そこがめちゃ強みだと思うんですよね。お客さん一人一人に小堀勇介から触手が伸びていって、思考から何から一体になっていく様な感覚。

アリアは2018年と同様にしっかりとハイDを出してくれました。それも嬉しいのですが、個人的には最初のハイCの鳴りが凄すぎて鳥肌たちました。最後もしっかりアクートきめて舞台から見えなくなるまで伸ばしてましたね。最高だぜ。そしてこれは何度もブログで言ってますが、小堀さんはしっとりと歌い上げるとこもうまいのよ。『連隊の娘』だったら「ああ、友よ」の方(も良いけど)「マリーのそばに」が素晴らしいみたいな。ラミーロも中盤のしっとりと歌うとことても良かった。明らかに小堀さんがオケの音を引っ張ってきてたもんね。


その次に良かったのはドン・マニィフィコ役の押川浩士さん。2018年の時はダンディーニを歌われていて、それも良かったのですが、今回のマニィフィコもそれを超えるくらい良かったです。 ロッシーニのキャラクターの中でも好きな役では上位にくるこの役。3曲もアリアがありますが、1度聴いたら何となく口ずさみたくなるような楽しい曲ばかり。押川さんそのどれも高水準で歌ってくれました。声を張ると全然違うのですが、そうでないところはどことなくコルベッリっぽかったりするなぁなんて思いながら聴いていました。声ももちろんですが、ロッシーニが好きなんだろうなという思いが溢れてました。所作が完全にブッフォ歌いのそれ。イタリアからブッフォ歌い連れてきたのかなと思ってしまいましたよ。その昔、それこそこれも藤原歌劇団だったと思いますが、オーチャードホールでブルーノ・デ・シモーネが同役をやった時に感じた、「これぞイタリアのブッフォの所作」みたいな感じを思い出しました。演技派です。お客さんも後半につれてどんどん反応良くなっていきましたが、個人的には1幕フィナーレでマニィフィコが登場した時の「け、こ、き…」のとこめちゃ面白かったです。そんなにウケてはなかったのが悔しい。すげーうまかったのよ。切り替えが。やっぱそういうとこからもどこがポイントなのかを熟知してらっしゃるなと思っちゃいますね。演出家はいるにせよですが。あとダンディーニとの2重唱も面白かったね!


そういえば、これは今に始まったことじゃないのでしょうがないけど、演者ではなく字幕でリアクションしちゃう聴衆たちの存在。難しい問題ですが笑うポイントがずれたりするんですよね。気になる。


最後はクロリンダ役の楠野麻衣さん。マジで良かった。楠野さんとはかなりお久しぶりでした。いつぶりだろう。『ランスへの旅』以来かな。しっかり声を聴いたのはかなり前。夜の女王を沢山歌われていた時代。そこから進化しまくっていた!!2018年に光岡さんのクロリンダを聴いてしまったので、この役はあれ以上のものはもうないと勝手に思っていたのですが、今回しっかりと自分のものにして舞台乗せてきたなという感じで、特にアリア(ロッシーニの作曲ではない)がガチで絶品!!思わずBravaを叫びました。歌っているとずっと妙技の嵐。難しいヴァリエーションをこれでもかときらびやかに転がしながら歌う姿に興奮しました。そもそも声が役にぴったりで、細かい芝居も゙色々やられていたので、クロリンダとして没入して観れました。


オケはモーツァルトのようなまとまり感はあって音的にも悪くはなかったのですが、いかんせん真面目過ぎていたかなという印象。その昔のライブではないアバドのかんじというのか。そしてゆったりめのテンポ感だったので、もっと疾走感みたいなものがあったら良かったなと思いました。ロッシーニはやっぱそういうとこで活力を見出していかないと面白みに欠ける。ソリストが早く行きたそうなとこもゆっくりめに振るので「うっ」と我慢するようなシーンもありました。あとは、序曲が分かりやすいですが、もっと休符とか厳し目にしっかり切ることでお客さんに「いっくぞおおお」みたいな振りがあると良いなと思いました。あとはボリューム感とかスケール感に余裕とブッフォならではの遊びがあると良かったなと思います。ロッシーニクレッシェンドもっともっとこだわれたかなぁって思います。

なんだろね、全然ダメーとかじゃなくて、惜しいって思っちゃった。


最後にひとつ苦言を呈するとすると、小堀さんです。サイン入りブロマイド売り切れてたんだけど。どう落とし前つけてくれんねん!(うるせぇよ。呈する相手がちげーよ)

ガチ苦言というか、残念なことがそういや1つあった。飴舐める為の袋の開封音と入口で配られたビニールの擦れる音がめちゃめちゃうるさかった。人生賭けてやってる演者に失礼過ぎる!!

少しも出すなとは言わないけど、限度があるのよ。かなりずっとうるさかった。


そんなわけで、眠すぎるのでここまで。

久々のオペラ楽しめました。ありがとう藤原歌劇団。ありがとうチェネレントラ。ありがとうロッシーニ!!