たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!"

たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!"

主にオペラの感想等を亡備録として書き連ねていこうかなと思ってます。
その時感じたことをそのまま書くようにしてますので、文筆がおかしいことは多々ありますが、良ければご覧下さい。


オペラ観賞の感想などを手記してきます。大好きなオペラ歌手はレオ・ヌッチ。

12月14日は赤穂浪士討ち入りの日。そんな忠臣蔵な日に、なんとまぁ全然それとはまったく何も関係のない、沼津で上演された『ヘンゼルとグレーテル』を聴きに行きました(笑)とってもちなみに父親の誕生日でもあります。

何せこちら、今をきらめくロッシーニの星石田 滉さんがヘンゼル、このところいろんな公演に引っ張りだこの宮地江奈さんがグレーテル、魔女が破壊力満点な伊藤達人さん、先日の日生劇場『サンドリヨン』で妖精を演じられて好評だった鈴木玲奈さんがまたまた妖精系キャスティング、眠りの精と露の精で出演するということで、情報が出てからとても楽しみにしておりました。いやー豪華な面々ですよねぇ。しかも旬な人たち!!更には東京じゃなくて沼津公演というのが

静岡県民としてはありがたや〜でした。

 

今回演出の田尾下さんは、このオペラの纏うクリスマス感を前面に押し出して、クリスマスプレゼントを待つ子供たちの物語として独自の世界観を作ることに成功していました。例えばお菓子の家はクリスマスツリー、魔女は悪いサンタクロース、お菓子にされる子供たちはプレゼントと読替えており、眠りの精/露の精はサンタクロースの手下(歩く時の動きからするともしかしたら魔法で操られていただけかもしれませんが)として設定されていた...と思います。違ったらすみません。また、通常であれば魔女は最後に窯に押し込まれてお菓子になるところが、今回は悪いサンタクロースが良いサンタクロースになって大団円を迎えるという作り。片方の押し付けられた正義や価値観ではなく、全ての人が一つになって平和を祈るように描いた最後のシーンは、そもそも音楽の持つ純粋さや崇高さ、それらの美しさと高揚感で、毎回聴くたびに感動するのですが、今回はそこにまた違ったメッセージも込められていたので、より胸にくるものがありましたし、ウルっと目頭が熱くなるのを感じました。とても素敵な読み替えだったと思います。

また、歌詞も田尾下さんのクリスマスバージョンの書き下ろしで、これを覚えるだけでも演者の方は大変そうだし、結構歌いづらそうな言葉のはめ方だなぁなと個人的には思いましたが、小島よしおです。そんなの関係ねぇと(ただ古いよね)。しっかりと言葉を噛んで発しておられました。更に演者の皆さんは更に舞台をところ狭しと動き回るし、こんなにやるのかと思うくらい踊るし、かなりハードだっただろうと思います。しかしそんなことをものとも感じさせないブレない歌唱。これはやっぱすごかったですね。さすがという感じ。私だったらぜえぜえしてもう歌どころじゃない。持久走の後みたいになっちゃうと思います。もしくはシャトルラン(マジどうでもいいわそこ)。兎にも角にも、オペラ歌手万歳という感じで、尊敬の眼差しで観賞致しました。

 

ヘンゼルもグレーテルも、本当の子供がやらない限り、大人が頑張って子供を演じてるみたいな感じになっちゃうのがとってもたくさんあるわけですが、今回ヘンゼルの石田 滉さんもグレーテルの宮地 江奈さんも、そういった印象は皆無。踊りやメタファ的なポーズがたくさん出てきたのもあって、既述したように舞台上をたくさん動き回っていましたが、どこも俊敏で所作が子供っぽかった。声も若々しくてどこを取っても瑞々しい。朝露のような透き通った声が実に役とマッチしていました。

 

ヘングレの好きなシーンは、まず、幕開き冒頭から「踊りましょうよ」までのシーンなのですが、今回日本語の言葉数が結構多かったので情報量が多かったのもあり結構集中して聴きました。これまで聴いていた日本語がまぁ観賞の邪魔をするする。で、言葉数が多かったのが功を奏したのか、結果的にのんびりした2人というよりは、やんちゃでおてんばな兄弟像がくっきりと見えました。

それと、実は私よく考えたら宮地江奈さん初めて聴きました。こんなに有名になられてるのに!聴いてみて思ったのは、オールマイティになんでもやれそうな声質でしたね。グレーテルにおいては、透き通っていて純粋さが感じられてぴったり。なんでもない時は お兄ちゃんの前では主導権握っちゃうんだけど、いざという時にはお兄ちゃんを頼っちゃうかわいい妹みたいな感じがしていてかわいかったですね。YAMAHAで有名になった?ソーファミソファミレのとこもめちゃくちゃ良かった。子供が一人で歌ってるみたいでした。なんかそういう時あるじゃないですか。子供が何かに集中していて、歌メインじゃないけど独り言のように歌ってるとき。あと起こされた後の「ディリリリリ~ン」のとこも明るくてとても良かったですね。宮地さんのヘンゼルはトトロのメイみたいなかわいさがありました。「お父さん、お花屋さんね」的な(どういうことやねん)。

滉さんは頼りないヘンゼルというよりは声がずっと男前な感じでかっこ良かった。序盤の最初に出した声がいきなり明瞭で、日本語が美しかったなぁ。凛としてる。日本語だけどベルカント。2人で歌う祈りの2重唱はもう絶品で素晴らしいのなんの。美しかったわぁ。立ち位置が前後になって「静」だけではく思ったより「動」がある中で歌っていましたが、わたしゃ歌唱で涙が出ましたよ。歌詞が、神様へ祈るというものではなく、サンタさんへのプレゼントを願うというものにはなっていましたが、ヘンゼルとグレーテル(さらには子供たち)にとってはもしかするとサンタクロースは神様と言っても過言ではないのかなと。願いを叶えてくれる存在ですものね。そういう意味ではまさにあのシーンで願う子供の気持ちとしてはマッチしていたと思いました。今回2人が主役だったのは大正解。推進力があって、グイグイ世界へ引き込まれていきました。

 

眠りの精・露の精を演じた鈴木 玲奈さんですが、「あれ、玲奈さんどこにいるの?」って思ってたら、いやあんたなんかーい!!という感じでミセスクロース?として舞台に乗ってました(笑)マジで気づかなかった。眠りの精も露の精も、悪サンタの手下的に思っていたのですが、明らかに人の好さが声に出ちゃってました。というか母なる安心感というか、特に眠りの精はお母さんが寝かしつけているかのような印象で、優しく優しく歌っていたので感動しました。もしかすると、妖精ってそもそも人間に悪戯したりするのが常なので、そういうレベルにおいて楽しんでいただけなのかもしれません。悪サンタに操られててあそこまで優しい歌にはならなそう。眠りの精に対して露の精は、視界がぶわ~と開けていくような爽快感。朝露にお日様の光が照らされてキラキラとダイヤのような輝きを見せるようなそんな瑞々しくも爽やかな歌唱。さすが腕がありますねぇ。全然違う2曲をしっかりと印象付けて歌ってくれました。

 

魔女の伊藤 達人さんは、席が遠かったのでしっかりと確認できませんでしたが、グリンチみたいな緑色の顔色で登場していた

…と思います。グリンチはクリスマスを盗むし、キャラクター設定は若干これも込みなのかななんて。但し、近くで見ていた後輩はジョーカーと言っていたので、そっちかもしれません。ツリーに押し込めた後の歌詞が確か「サンタの顔したジョーカー」って言ってたと思うので、ストレートにとジョーカーの設定(バットマンのリアルなジョーカーではなくこの場合悪役という比喩表現としての意味)かもです。ちょこっとしらべたところ、クリスマスツリーというものは古代のゲルマン民族が崇拝していた永遠の象徴で、更にキリスト教にとっては神が与える生命の象徴でもあるそうなんですね。なので、その中に入ることで魂が浄化されたのかもしれません。そしてまた外に出ることで生まれ変わったのかもしれません。肉体の死、そしてまた生まれるというその生命の神秘。そして善人としてのサンタクロースをまた生んだ、もしくは、「魔法が解けてサンタになった」と歌っていたので、元々の善良なサンタに戻った、そんな感じでしょうか。

伊藤さんの魔女...というか悪サンタは、否が応でもお客さんを楽しませちゃいましたね(笑)なんか常にロックでエンターテイナーでした。「イッツショータイム」って言ってましたもん。ずっとダイナミックで圧倒されました。サンタのクセと圧が凄いんじゃ、でした(笑)ヘンゼルに七面鳥を食べさせる理由が大きな箱にする為で、アリアで分かったのはこの悪サンタは世界征服が一番の目的だったんだなとわかったわけですが、なかなか面白い設定。最後はクリスマスツリーの中に入ることで浄化されて良いサンタになって出てきたのですが、このあたりのメッセージ性は優しくて、クリスマスに子供たちと観るには良いなと思えましたし、現代向きだなとも思えました。『魔笛』の夜の女王の扱い方みたいなものにも通じる。また、ずっとツリーが上下2本舞台に立っていて終盤にドーンと真ん中に大きなツリーが建立するのですが、ヘングレと森というのは切っても切れないもので、やはりドイツの森という要素が作品全体的に覆いかぶさっているように思うのですが、その象徴としてのツリーということも考えられるなと思い、だからこそあえてツリーを最初から据えておいてあったのかなと思いました。

 

そしてそして、最後のお父さんが出てきてからの音楽と流れが死ぬほど好きなのですが、ペーター役の野村さんと子供たちの合唱とても素敵でした!記述しましたが、ここでサンタとミセスクロースも出てきてみんなで「平和を祈る」と歌いましたが、感動しますね。音楽と子供たちの奇跡です。涙です。

 

全体的にとても良かったので、幕終わりと、マエストロ揃ってから特大のBraviを献上致しました。

こういう音楽的な活動を1950回もやってくれているトヨタはさすがですね。よ!日本の基幹産業!!です。

トヨタにも大きな声でBravoと言いたいです!!(多分それより車買ってくれって言う)

マエストロの初谷さんは初めましてでしたが、テンポ的にしんどいとこは無く、沼響を手堅くまとめておられたと思います。

こういう企画があると静岡県民としてはとても嬉しくなるのでぜひまたお願いします。

すべての関係者の方に敬意をこめて。

 

 

《出演者等の情報》
管弦楽:沼津交響楽団 
指揮:初谷 敬史 
演出家 田尾下 哲
音楽監督・お話 三枝成彰
コンサートミストレス:吉貝 多佳子 
児童合唱:タンザワミュージックスクール 

ヘンゼル:石田 滉(メゾ・ソプラノ)
グレーテル:宮地 江奈(ソプラノ)
父ペーター:野村 光洋(バリトン)
母ゲルトルート:鳥谷 尚子(メゾ・ソプラノ)
魔女:伊藤 達人(テノール)
眠りの精・露の精:鈴木 玲奈(ソプラノ)
 

 



今日は日生劇場にてマスネのオペラ『サンドリヨン』を聴いてきました。

いやぁ、めちゃくちゃいいオペラでした!!

心がね、とにかく優しい気持ちになる!!

誰もが知ってるあのストーリーを変にこねくり回すことなく結構ストレートに演出してくれたのも良かった。

 

サンドリヨンってのはシンデレラのフランス語版になるわけで、例えばイタリア語だとチェネレントラになるのですが、はい、そうです。そうでございます。チェネレントラ。これはロッシーニが作曲したシンデレラの物語を使ったオペラがありまして、私も大好きでよく聴きます。世界レベルで見ると、かなりの頻度で上演の機会も多いオペラになります。さすがはベルカント隆盛の現代。しかし、サンドリヨンはそれに比べてかなり上演機会は少ないです。私の契約してる音楽のサブスクでもしっかりした録音のものは1つしかありません。『マノン』や『ウェルテル』とは大きな差です。駄作だから?いやいやそんなことは決してありません。今日聴いてより素晴らしさを感じた次第でございます。

 

私が聴いたのは11/15(土)組みの公演。本当は自分のところの稽古がなければ2days行きたかった。2日目は山下裕賀さんが出るんだよね。あと姉姉妹に別府さんと北薗さんが配役されてるのも面白そう。まぁ行けないものはしょうがないということでじっと我慢の子であったというわけですが、今回はほんと総合的に、全体的に素晴らしかったんですよね。

 

演出は、広崎 うらんさん。演出家でダンサーさんでもある彼女は舞台に出てくるダンサーの振り付けもしたそうですが、舞台装置を含めてポップな感じとクラアシカル間みたいな感じではありましたが、かなりオーソドックスなものを打ち出してくれたという印象。魔法の物語をより輝かせるような全体的にキラキラとした場面をたくさん見せてくれました。
サンドリヨン=リュセットの家のシーンでは、下手に大きな暖炉とその前に灰の山、上手に全身鏡と買い物しまくった箱。上手の奥に丘が三本線で抽象的に描かれお城がうっすらと見える。お白の舞踏会のシーンではとど~んと真ん中に大階段を据えてくれました。その大階段の後は回転するとリュセットの家の壁になっていたりして、常にその階段もしくはリュセットの家の壁は舞台の中心に据えられていました。各場面ともわかりやすくて、美しい。装置も衣装も照明も素晴らしかったなぁ。衣装のメタリックな感じは普通近未来みたいな設定で多用される気がしますが、今回はそういう感じは受けずに品がおざなりになることもなく、サンドリヨンの世界観を崩さずに舞台に華を添えていました。照明もね、あのー大階段の上でのリュセットと王子のシーンだったか王子1人の時だったか、白のライティングが映えまくっていて、ソリストが輝きまくってて良かったんですよね。どこだったかなぁ。…ちょっと思い出せない。くっそ~。また、アライブペインティングというものは初めて見ましたが、物凄くよかった!!バンドルフとお抱えスタイリストが前説的に幕前で挨拶代わりの口上があり、マエストロが紹介されるやいなや、指揮棒が高々と上がりすぐに音楽が始まりましたが、その時の紗幕に投影された映像と音楽が合い過ぎていていきなり涙を流しました。自分でも驚きでした。なんでしょうね、なんかめちゃ合っててその世界にいきなり埋没したというのか、360度四方八方サンドリヨンの世界が自分の間の前で溢れたというか。プラネタリウムでいきなり満天の星空に包まれたような感覚。SFとかで池の底とかに光輝く別の世界があっってそれがめっちゃくちゃ綺麗なCGで「うわ~きれいだなぁ」なんて思った時の感じというのか、とにかく「はっ」って呼吸止まったもの。そこから映画のように字幕が出てきて...とずっと感動していたのですが、それがアライブペインティングだったんですね。しかもわたくし、終演後に1階後方の黒く囲まれたスペースにお客さん達が拍手していたので、そこでやっと「え?あ!!あれライブ!!!!?」と知ったのでした。すげーよマジで。あれを音楽と合わせてライブでやってたなんて身震いしました。中山晃子さんかっこいい。センスがありすぎ。素敵。

 

配役表通りにソリストの感想をいってみましょう。

まずはリュセット役の盛田 真央さん。前回聴いたのは藤沢のパミーナだったかと思いますが、その時も拍手喝采でしたが、今回も良かった!!何となく暗い感じがかちょっとパミーナとかぶる部分もあるなと思いましたが、リュセットの方がより声が合ってたと思います。盛田さんの明るい声質がよく合ってたと思います。有名な?コオロギの歌(勝手に命名)でのリュセットは暗くならないように自分を鼓舞してる感じがしますしね。コオロギの歌は"Ah! que mes sœurs sont heureuses ! - Reste au foyer, petit grillon"のことです。また、3幕の冒頭のアリア"Enfin … je suis ici"はオケもリュセットの気持ちをめちゃめちゃ表してきて好きなのですが、盛田さんの迫真に満ちた姿に心撃たれました。後半はやや技巧的な部分ですが、それだけに留まらず血の通ったリュセットの気持ちがしっかりと乗っていました。また、リュセットと王子の最後に歌われるあまりにも耽美的な美しい2重唱(途中から3重唱)は白眉でしたね。なんて美しいのかしら。これ聴くと『ばらの騎士』の「マリー・テレーズ」の3重唱を思い出します。何ならそのあとの2重唱も。ある種逆なわけですが。恍惚としてきますね。愛と美しかない空間。ハープとか出てくると私は弱い。

リュセットですが、最近のハリウッドでやたらと描かれる強い女性みたいなものとは違った、乙女という感じがあります。ただ、弱々しい乙女ではなく意思や逆境に耐える芯の強さみたいなものを兼ね備えていますが。盛田さんの表現が全編的にそれを貫いていたように思います。ロッシー二は、魔法の要素を全て排除することで、魔法ではなく人間が物語を動かすこと(特にアンジェリーナの善良さとか優しさとか)を意識してチェネレントラを作曲しましたが、魔法があっても、そのおかげで彼女が幸せになれて良かったねみたいには思いませんでした。きっかけは魔法で、また会えたのも魔法だったかもしれないけど、お互いの心が通じ合ったことによって幸せになったという結果はやはりそこにも人間的な感情によって2人が結びついたことへの感動があるなと思いました。リュセット自らガラスの靴履いて最後は死にそうな王子の前に現れています。決して夢みるプリンセスなだけではないですよね。

 

シャルマン王子役の杉山由紀さんは、終始悩める王子を格好よく演じていました。衣装が白で金髪だったのですが、2次元の王子キャラ全快みたいな見た目で、世界観がしっかりしていないと安っぽくなってそこだけ浮きそうなのに、それが全くなくて、うらんサンドリヨンの世界では何の違和感もなくぴったりな美しい様相の王子でした。2幕のアリア"Cœur sans amour, printemps sans roses"なんかを聴いていると、愛のない心は、バラのない春だみたいなことを言っていて、あの~、すみません、個人的には、オルロフスキーとケルビーノを足してなんかを隠し味に入れたようなこの王子に、「こらぁ、暗い暗い、しゃきっとせいや!!(笑)」と言いたくなりますが、彼の悩みですからそう一蹴するものよくないですね。そんな彼はサンドリヨンを見つけた時から音楽的にも優しくなってそれこそ春を迎えます。2幕でどんどん希望に満ちていき、気持ちが激しく高ぶっていく杉山さんの歌唱と表現がとても良かったです。3幕の森のシーンでの2重唱は既述してますが、実に美しく愛に満ちていて最高でした。一途にサンドリヨンからの愛を求める姿に、「こんなイケメンにここまで愛されたら嬉しいだろうな」と思ってしまいました。表現こそなかったですが、妖精に自分の愛の証として心臓を木にぶら下げるんですもんね。なんだろう、待てよ。本当は怖いグリム童話みたいな感じになってる...。まぁでもそれだけ愛してるということですよ。もしかしたら比喩なのかもしれないけど。

 

お次は妖精役の鈴木 玲奈さんですが、拍手です。めっちゃ良かった!!かなり難しいコロラトゥーラの役というイメージでしたが、見事に役にハマっていました。技巧的にも申し分ないし、高音は綺麗だし、見た目もまさに妖精感満載。玲奈さんの声は高ければ高いほど本領発揮すると思うので、この役はぴったりだと思っていたんですけど、やっぱり素晴らしかった。1幕のアリア"Ah! douce enfant, ta plainte légère"は、最初の前奏がまずワクワクさせてきますよね。あそこ大好きなんですけど、あと途中のチーンもいいですね(笑)オケも良いし、単純に好きな曲なんですけど、あまりたくさんの録音に恵まれていないので残念。映像は近年増えてきましたが、まだ全然。この時の玲奈さん、演出で高いところから見下ろすように歌っていたのですが、構図もキャラクターも相まって、私はレジャーシート敷いてディズニーのパレードを見ているようでした。フェアリーゴッドマザーだもの。サラガドゥーラ、メチカブーラ、ビビディバビディブーって言うあの人よ。今回は若々しいのでフェアリーゴッドマミーという感じとでも言いましょうか。ほんとうまかったなぁ。伸びやかで放物線を描くように会場中に響き渡る声に私は魔法にかけられたようでした。全く不安なとこがなくてずっと楽しそうな姿にこちらも嬉しくなりました。玲奈さんの良いとこの1つは、自分がやってて楽しいみたいな気持ちが会場に伝わるとこだと思ってて、今回もそれをめちゃめちゃ感じました。それってすごく大事だと思う。リュセットが起きてから妖精に気づいてからの流れも好きで、妖精に続いてコロラトゥーラで応えるとこも好きなんですけど、2人とも素晴らしかったですね。玲奈さん音符の粒がしっかりしてて、気持ちよく転がってくれるので聴いていて耳が喜びます。もう2回出てきてる3幕の2重唱からの3重唱は本当に素晴らしくて、そこだけもう一度コンサートでやってほしいくらいです。この音源とかNHK録ってないのかな。録ってると会場に書いてあるよなぁ。っく~。惜しいぜ。これが残らないのは。とにもかくにも私のスタンダード妖精が鈴木玲奈となりました。拍手。とりあえず、ちょっと路線が違うかもしれませんが…いや、違わないか、いや、どうなんだろう...ロッシーニも歌ってほしいですね(キター!!ロッシーニ好き!!)

 

さ、段々と書いてて疲れてきたのであとは簡単に(ごめんなさい)。

継母のド・ラ・アルティエール夫人役の齋藤 純子さんは、嫌な女っぷりをややかっこよく演じてくれました。この役やってる人結構横に大きい人が多いイメージがありましたが、スラっとしたかっこいい夫人で、嫌な奴ってより、兄貴かっこいいっすと言いたくなる素敵さも光ってました。衣装が紫の派手派手の登場はシンデレラの継母よりクルエラのような派手さがありました。毛皮じゃないけど。1幕冒頭の娘に色々立ち振る舞いを教えるシーンは、音楽も面白くて好きですが、3人の演技も相まって音楽との調和もとれていて、観ていてとても楽しめました。難しいんですよね。やりすぎると面白くなくなっちゃうし、歌がないがしろになるとまたダメだし。さすがのお三方。ちなみにお姉さんのノエミ役の市川 りささんは初めて聴きましたが、相方のドロテ役の藤井 麻美さんに負けないくらいのグイグイ前のめりに演技されていて良かったです。藤井さんは何でも屋だなと(笑)マジで何でもやってる。でもすごいのは何でもやってるというか、何でもやれちゃうとこなんだよね。幅広いわ。演技も歌も同様に上手い。新国研修生15期はさすがだぜ。

パンドルフ役は北川 辰彦さん。リッカルド・ムーティ指揮の『シモン・ボッカネグラ』でパオロ役で出演されていたのを最近聴きましたが、さすがに全然違う(笑)バンドルフはもっと面白おかしくやってもいいのかなという気はしましたが、代わりにやりすぎないことでリアルさが増しました。ド・ラ・アルティエール夫人に「出ていけ」とどやす所は、愛する実の娘のサンドリヨンを思って、いつも越えられない一線を越えてしまったという感じにグッときました。1幕冒頭では「1発言ったるで~…やっぱだめだ~ここを去ろう」みたいになってた振りが効きすぎですよね(笑)でも、だからこどバンドルフという人間のリアルさを感じ取れたんだと思います。一辺倒でなかったので。

 

マエストロの柴田 真耶さん&読売日本交響楽団ですが、フランスオペラの軽さや洒脱さを基本に持ちつつ、そこに場面によってこれでもかと華やかさやを描き、時にはあたたかさを持って演奏されていたように思いました。特徴的に何度も出くるテーマのような部分は良く分かるように強調されていて、聴きたい音がしっかりと届いてきたので、安心して聴けました。また、このオペラでは合唱やそれ以外のソリストも芸達者でないと成立しないのですが、みなさん非常に上手かった。1幕冒頭のバンドルフとの絡みのとこは大好きな合唱のシーンですが、定番の面白さでやってくれて最高でしたし、最初のシャルマン王子のまわりの人は皆さん演技が上手くて、役者かと思ったらしっかりと声楽家の方で驚きました。

 

とても楽しめました!!

2時間しか寝てない状況で行って、終演後新幹線に乗り、そのまま夜勤からの、明けでそのまま自分の団体の稽古からの、また夜勤という死ぬんじゃないかというスケジュールの中無理してでも行って良かったです(笑)
この公演に携わってくださった全ての人に感謝します。

またこのプロダクションで再演してほしいです。ありがとうございました。

 

【以下公演の情報】

 

指揮:柴田真郁   演出・振付:広崎うらん
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:C.ヴィレッジシンガーズ

【上演日程】
2025年 11 月15 日(土)・16 日(日)各日14:00開演

【キャスト】 11月15日(土)/11月16日(日)
サンドリヨン(リュセット):盛田麻央/金子紗弓
シャルマン王子:杉山由紀 /山下裕賀
妖精:鈴木玲奈/横山和美
ド・ラ・アルティエール夫人:齊藤純子/星 由佳子
パンドルフ:北川辰彦/河野鉄平
ノエミ:市川りさ/別府美沙子
ドロテ:藤井麻美/北薗彩佳

王(全日程):龍 進一郎
大学長(全日程):照屋篤紀
儀典長(全日程):湯浅貴斗
総理大臣(全日程):的場正剛
精霊(全日程):相原里美/工藤麻祐子/日下萌音/斉戸英美子/畠中海央/馬場菜穂子
ダンサー(五十音順/全日程):川竹麻耶、木原萌花、鈴木孝太、中込 萌、長澤風海、松本ユキ子

アライブペインティング:中山晃子

主催・企画・制作:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]
協賛:日本生命保険相互会社








モーツアルトのオペラというと、『フィガロの結婚』『魔笛』『ドン・ジョバンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』それから『後宮からの逃走』といったところでしょうか。そしてそれらのオペラにはたくさんのアリアと重唱が書かれており、私はモーツアルトはアリアもさることながら重唱が大好きなわけで。例えば『フィガロの結婚』の2幕フィナーレでどんどん人が増えていき、7重唱にまで至るあのジェットコースターのような音楽に毎回興奮させられますし、『魔笛』2幕後半に出てくる「パパパの2重唱」では、2人の掛け合いのかわいらしさや、沸き起こる喜びは、聴いているこちらも同じ様に喜び、幸福感を味わいます。しかーし、今回の『羊飼いの王様』では、なんと重唱は2つしかありません。1幕フィナーレのエリーザとアミンタによる2重唱と、2幕フィナーレの全員での5重唱です。あとは全部アリア。わお、

めちゃバロック!!そんな気がしてならないこの作品。モーツアルト19歳の時の作品だそうです。ちなみに最晩年の『魔笛』が35歳での作曲。約16年あるとこうも様式というのか、作品の作り方がかわるのだなと興味深いです。

 

今回園田隆一郎さんがソリストを厳選。精鋭の皆様を配役してくれました。

以下ソリスト。

 

アレッサンドロ大王:小堀 勇介

アミンタ:砂川  涼子

エリーザ:森 麻季

タミーリ:中山 美紀

アジェノーレ:西山 詩苑

 

いかがでしょう。豪華ですよねぇ。モールアルトの中でもかなりマイナーな作品ですが、こんなにも素晴らしいソリストで聴けるなんて最高でした。盆暮れ正月が一気に来たような豪華さ。さすがは園田さん。藤沢では園田さんが道を走ると信号機が全て青になるらしく、「あんたは天皇陛下か!」というレベルだそうなので、そりゃぁこのソリストは可能かぁなんて(んなわけあるかい)

 

あらすじを簡単に申しますと、

先王の息子アミンタは新しい王(ストラトーネ)によって身の危険があるかもしれないということで、羊飼いの子として育てられており、本人もそのことは知らずに育ちます。やがて暴君であった新しい王から、アレッサンドロ大王が人々を開放し、前王の王位継承者を探し始めます。その結果アミンタがその本人だということがわかり、王位を継承するように促します。その際、現王であったストラトーネの娘でありこれまた羊飼いの娘として匿われていたタミーリと結婚し平和的な展開を望みます。しかしアミンタには心に決めたエリーザという恋人がいました。彼は王位継承して、タミーリと結婚するか、羊飼いとして恋人と一緒になるか悩みます。結局アミンタにもタミーリにも恋人がいて、そちらを取るという選択肢を選び、それに対してアレッサンドロ大王が寛大にそれを認め、さらには王位継承もさせてめでたしめでたしというフィナーレです。

アフタートークでの話がでてましたが、アレッサンドロ大王は良い人なんだけど、なんだろう、空気読めない人なんですよね(笑)良かれと思ってやったんだけど結果その下の人たちを苦しめているという。現代においてもこういうことは良くあります。何にもしないで良いから座っててよ社長みたいなことと同じというか。

 

このオペラ、全然詳しくないので、あくまで主観的に思ったことを書いていきます。

パンフレットの順番でまずは小堀さんから。

 

小堀さんは私が最も生で聴いているオペラ歌手だと思いますが、やはりロッシーニなんですよね。ロッシーニにドニゼッティ。ベルカントなイメージ。イメージも何もベルカントを一番歌ってるはず。たくさん集めて先生のとこに持ってきてね(それはベルマーク)。

但し、例えば私が聴いたもしくは聴きたかった小堀さんのモーツアルトで言うと、2014年静岡国際オペラコンクール第7回の本選でドン・オッターヴィオの「彼女の幸福こそ私の願い=Dalla sua pace la mia dipende」を聴いており、2017年には国立音楽大学大学院オペラ公演で、『フィガロの結婚』のドン・バジリオを歌っていて(私は聴けず)、2018年にモーツアルト愛好会の464回例会では『イドメネオ』や『後宮からの逃走』のアリアを聴き(これが過去聴いた小堀さんのリサイタルでベスト3に入る素晴らしさだた)、2020年のモーツアルト愛好会の第483回例会では『コジ・ファン・トゥッテ』のフェランドをやるということで意気込んでいたら降板で聴けず...とまぁこんな調子で結構モーツアルトもレパートリーとしては定期的に歌われているんです。

しかしさすがに今回の作品は過去一度も聴いたことが無かった...と思う。たまたまリサイタルの中に組み込まれていたみたいなことも記憶としてはなかったはず!!そんなわけで新たなる小堀勇介が聴けると思いとても楽しみでした。
まず、思ったのは、小堀さんのいつも出してる声の位置よりもちょっと低めな所で歌う役なんだなということ。しかもアリアでめっちゃ低い音が鳴りまして驚愕。下のシ(H)が出てきたのです!!こんな低い小堀勇介は初めてや!!って。でも以前の藤沢市民オペラでやった『湖上の美人』のロドリーゴでは更にその下のラ♭(As)も出してるよとマエストロにツッコまれてしまいました。ああ、なんてこったい。記憶力よAddio...。

曲は、最初のアリアの“Si spande al sole in faccia” を聴いたときに最近のフローレスを感じました。まさかのモーツアルトで感じるフローレス。張るんじゃなくて入れ込む感じというのでしょうか。鳴らすより響かせるというのか。めちゃくちゃ感じました。次のアリア“Se vincendo vi rendo felici ”では細かい音符を楽々と歌い、少しロッシーニ...いや、チマローザっぽいのかな、いや、やっぱりモーツアルトだ、なんてなことを感じつつ楽しんで聴きました。最後の2幕最後のアリアの“Voi che fausti ognor donate”ではこれは最後のカデンツァでハイC(もうちょっと上出てたような)をしっかりと決めてました。低いとこから登っていき最後トリルも綺麗で実に見事でした。多分ここのことだろうと思うのですが、アフタートークで砂川さんや森麻季さんに「最後Cで終わっちゃえばいいんじゃない」と言われて園田さんからモーツアルトの様式に反するからダメと言われましたというような話がありましたが、やはりモーツアルトはそこに戻ってくるからモーツアルトなんだなと思いましたね。例えばマゼットのアリアとか最後上げた方がかっこいいんじゃねとか思ったりしたことがあって誰かそうやって歌ってる人要るかなって調べたことあるんですけど、誰も、ほんと誰一人そんなことしてないですもんね。昔高校の頃部活で「モーツアルトは最後下げるから良いんだよ」と先生に言われたのを思い出しました。様式美大事。それと、小堀さんのレチタティーヴォはいつ聴いても素敵ね。流れるように美しいイタリア語をお話になられる。ずっと高貴。同じ大王でもにこちゃんとは大違い。あれ頭の上にお尻がきますからね。で、なんで名古屋弁なんだという気持ちが(待て待てドクタースランプええし、この話ドクターストップや)。

小堀さんありがとう。この機会でしか聴けないのではないかという役をしっかりと堪能させていただきました。

 

お次は砂川さん。まずお召し物が良いよねってなった。白シャツにネクタイをしてたので男性の役ですよってのが見た目から分かりやすかった。どうやら初演時はカストラートが担当した役の様です。最初のアリア“Aer tranquillo e dì sereni”では、さわやかで好青年っぽさの表現が実にうまい。絶対この子いい子だよなってなったもん。声聴いて。コロラトゥーラも申し分なし。砂川さんというと近年重めな役をおやりになっているイメージでしたが、こういう役もとても高い水準でやれてしまうのかと、オペラ歌手の深さみたいなものを感じましたね。調べたところ、今回は別役ですが森麻季さんが2008年のNHKニューイヤーオペラコンサートでこの曲を歌っていました。YouTubeで確認できますので興味ある方は検索してみてください。2つ目のアリア“L'amerò, sarò costante ”は有名なアリアらしいのですが、全然知らなかった...。勉強不足な僕。国を治めるのではなく彼女を愛するんだと何度も思いを反芻する音楽は、とても優しく、やはりアミンタの人間性がとてもでているように感じましたし、そう感じさせてくれてた砂川さんがさすがでした。ゆりかごに乗っているような感覚でこちらも優しい気持ちで聴けました。

 

3人目は森 麻季さん。何故か森麻季さんだけは森さんとは言わないで必ず森麻季さんとってしまうんですよね。で、麻季さんですが(朝令暮改か)、お声が全く変わりませんな。ずっとキラキラしてるし、ずっと美しい。日々の努力の賜物だろうなと思いました。見習わないと。1幕冒頭のアリア“selva, al prato, al fonte”ではバロック感全快というような感じで美しいコロラトゥーラも聴かせてくれつつ、このあとのオペラの展開も楽しみにさせてくれるようなワクワク感も感じさせてくれました。非常に伸びやかで明るく無理のない発声。2つ目のアリア“Barbaro! oh Dio mi vedi”では、最初もしこれがヴェルディだったら絶対こんな曲は書かないだろうなという、なんて美しい曲かと思いました。但し、ずっと聴き進めるとモーツアルトの所謂有名な作品にも通じるようなオケも煽って感情も高ぶっていく部分が出てきて、最後の終わり方もモーツアルトの大好きな終わり方。フィガロの伯爵夫人3幕アリアのような。いろんな曲の原型がここにあったりして。ばーるばろ、が頭から離れなくなります。

このオペラの中で印象的なものの1つとして、1幕の最後がアミンタとエリーザの2重唱で終わるところだと思うのですが、あまりないパターンですよね。しかも調節技巧をお互いが出し合うみたいな感じで時より聴こえてくる森麻季さんのコロラトゥーラが冴えまくりでした。また、下を支えつつ同じように転がる砂川さんもやっぱり素晴らしかった。これは白眉かもしれない。あまりに凄くて聴き入ってしまいました。拍手もなかなか鳴りやまなかったです。

 

女性最後は中山 美紀さん。

アントネッロで大活躍中の彼女は今回園田さんの大抜擢だったそうですが良かったです。最初のアリア“Di tante sue procelle”では、もうこれでもかと超絶技巧を披露。特に繰り返し以降のバロック感。ヘンデルが時頼顔を出しそうになるようなそれはもうすんごい歌唱でした。手品で散々驚かされた後に、最初に振っておいてそれ以降全く触ってなかった箱の中にからサインしたトランプが出てきたみたいな、まだあるのかと驚きっぱなし。技術力に1点の曇りなし。お客さんもかなり沸いてました。生みの親のウォルトもかなり喜んでいたみたいです(ミッキーじゃねぇから)。2つ目のアリア“Se tu di me fai dono”は、『偽の女庭師』のナルドのアリアや『後宮からの逃走』のブロンデの最初のアリアを若干彷彿する曲っぽいような感じがする気がするくらいに私にはなんとなく聴こえましたが、中山さんはこちらもうまかった。ずっと鈴が鳴っているようで繊細な声で、役どころとしては王女なんだろうけど、声が可愛いいというのもあり、ややブッファの香りも出していたので、他との対比という点でも成功していたと思います。めちゃ良かった。誰も否定しないでしょう。個人的には、なるはやでロッシーニの世界にきてほしいなと思ってます。「なるはや」って「なると早食い」の略じゃないですよ?なるべく早くということです(誰もおもわねぇよ)。

 

 

最後は西山さん。

ちょっとびっくりだったのは、声が小堀さん方向というのか、小堀さん寄りなのよね。アジェーノレ1曲目はあまり思い出せないのですが、2つ目アリア“Sol può dir come si trova ”では、かなり激しめな前奏から始まるアリアで、このオペラの中で一番激しい感じの曲で頭に残りやすかったです。なんだろ、エレットラでも出てくるのかなという雰囲気。一番なじみ深いモーツアルトのオペラの曲という感じがしました。西山さんの表現もオケに呼応して集中力の高い歌唱を披露。

 

最後の2幕フィナーレは私が大好きな感じ。ロッシーニだと初期のファルサのフィナーレでありそうな感じ。でも、やっぱりロッシーニではなくモーツアルト。ロッシーニだと盛り上がっちゃえよイエーイなんですけど、モーツアルトは品よく自制しながらという感じ。更に思ったよりも長いところも違います。もう終わるのかなと思ったら違う主題みたいな感じになってまた戻ってみたいな。演奏としてはこれだけのメンバーが一同介して歌うんだからそりゃ爽快よ。とても心地よい気分で追われました。園田さんがそういうオペラをやろうかと考えていた時に、「誰も死なないでみんなハッピーで終われる」もので考えたと言っていましたが、まさにそういう最後でした。

 

あとは、チェンバロの矢野 雄太さんも素晴らしかった。今回コレペティとしても携わったそうです。矢野さんのチェンバロですが全く気にならないのが凄い。変に主張してくるとちょっと正直うざいみたいなとこがあるんですけど、全くなくて、歌手と同じ呼吸で通奏低音やってくれてるので、スッと言葉が音楽と共に入ってくる。必要な時にはしっかり表現してにょきっと出てくる。うまいなぁって。終わってから、じわじわとうまかったよな~と再確認。チェンバロの入るものは絶対それによって歌手のテンションが変わるので、今回矢野さんのような方が入ってくれて本当に良かったと思います。歌心の分かる人が弾かないと気持ち乗らないと思うんで。

 

そして、園田隆一郎指揮の神奈川フィルですが、マエストロの意図を汲んで演奏していた印象でした。実際園田さんがアフタートークで「こんなにリハーサルでやったことが全てハマることはない」と称賛していました。序曲から気持ちのアクセルを徐々に上げてくれる感じで、そこからずっと変なとこ1回もなかった。もちろん詳しくないから本当のとこわからないけど、知らなくても、「あ、いまのとこおかしい」とか気づきますやん?やっぱ色々聴いてるから。でもね、まじでそういう感じはなくて、既述した矢野さんのように、空気のように、だけども必要な時はしっかりと表現してくれるみたいな感じで、素晴らしかった。音楽も全体的に活気に溢れて、前向きにグイグイ推進力を持って進んで行ったのは園田さんの意思がオケにしっかりと伝わていたんだろうと思った。初めて生で聴いたのでこれが私のスタンダードになるわけですが、今回の演奏がスタンダードになれてマジで良かったなと思います。素晴らしかった!!

 

この日は翌日もみなさま本番ということもあって楽屋口にも行かずにさらっと帰りました。

園田さん素晴らしいオペラを教えてくださりありがとうございました!!

また、関係者のみなさまにおかれましては、公演のためのご尽力に心から敬意を表します。

こういった非常にレアな演目に取り組んでいらっしゃる姿勢に惚れてます。

これからも頑張ってこういった素晴らしい活動を行っていってください。

もちろん出演者のみなさまもありがとうございました&お疲れ様でした。






ついにその日がやってきたという感じで朝を迎えた11月9日。

今日は『レオ・ヌッチの最後の来日』と題されたリサイタルの日でした。

このブログでも何度か書いているので割愛しますが、彼のオペラで育ってきた私にとっては永遠のアイドルであり、目標であり、心の師匠でもあります。

昨年のリサイタルが最後だと思っていたので、今回また来てくれたことは喜びと共に感謝の気持ちで一杯です。

 

前置きはいいとして、今回の曲目は以下の通り。

 

 

【『椿姫』ハイライト】
第1幕 ヴィオレッタのアリア「不思議だわ~きっとあの人なのね~花から花へ」(soprano)
第2幕 ヴィオレッタとジェルモンの二重唱「ヴァレリー嬢ですか?」(baritono, soprano)
第2幕  ジェルモンのアリア「プロヴァンスの海と陸」 (baritono)
第3幕への間奏曲 (instruments)
第3幕 ヴィオレッタのアリア「さようなら、過ぎ去った日々よ」 (soprano)

【『リゴレット』ハイライト】
第1幕 リゴレットのモノローグ「俺たちは同類だ!」 (baritono)
第1幕 リゴレットとジルダの二重唱「娘よ! おとうさん!」(baritono, soprano)
第1幕 ジルダのアリア「慕わしい人の名は」 (soprano)
第2幕 リゴレットのアリア「悪魔め、鬼め」 (baritono)
第2幕 リゴレットとジルダの二重唱「日曜ごとに教会に~娘よ、泣きなさい」(baritono, soprano)
第2幕  リゴレットとジルダの二重唱「復讐だ!」(baritono, soprano)

 

どうでしょう。このヌッチの最後にぴったりの選曲は!

盆と正月が一緒に来たような、ファンにとっては嬉しいプログラムではないですか。

ちなみに発売当初の予定と少し変更があました。

テノール歌手の来日が無くなり、さらにソプラノの変更もありました。

以下ヌッチからのメッセージ。

 

<レオ・ヌッチからのメッセージ>
 今回の公演は熟慮の末、父と娘の関係性に焦点を当てたプログラムにすることにしました。
この関係性は、ヴェルディが芸術家としてのキャリアのなかで、最も深く描いたテーマのひとつです。
ヴェルディ自身の、妻と子を失ったという個人的な経験は、彼の作品にまちがいなく大きな影響をあたえていると思います。そして、いうまでもありませんが、このテーマの重要性は、現代においても変わりません。
 ぜひ、このプログラムに期待してください!

 

ということで期待大で会場入りしました。

今回のお席は最前列のど真ん中。本当にありがたいことです。こんな良い席で聴けるなんて神様ありがとう。

また、先輩・後輩それから知人に職場の人まで呼んだので、自分の近しい人11名がサントリーホールにいるなんてことはなかなかないのでちょっと興奮しましたね。

また、ヌッチということだからなのでしょうか。会場内よく見る方々であふれかえってましたし、久々にお会いした方やネットでは知っていたけどリアルではじめましてをした方もいたりといった具合で会場内の熱量の高さを感じましたね。

 

さあでは実際の演奏はどんな感じだったのかをみていきましょう。

前半は、【『椿姫』ハイライト】でした。

 

1曲目の、

第1幕 ヴィオレッタのアリア「不思議だわ~きっとあの人なのね~花から花へ」は、ソプラノのエンケレーダ・カマーニによる演奏。いきなりこの曲から始めなければならないというのはなかなかキツイのではないかと思いながらも固唾を飲んで聴き始めたのですが、あらっ?あらあらっ?ちょっと何よ、良いじゃないの。え、めっちゃいい!!イタリア感満載!!そうありがとう万歳!!透き通って交じりっ気のない純度の高い声。コロラトゥーラも美しく、高音も伸びやか。フレージングも滑らかで非常に聴き取りやすい発声。ピアノの美しさ。何よめっちゃいいじゃないのよ~とテンションが上がっていきました(笑)ヌッチが聴ければあとは正直どうでもいいという気持ちが消えた瞬間でした。もっとこの人で聴いてみたいと。


2曲目は、

第2幕 ヴィオレッタとジェルモンの二重唱「ヴァレリー嬢ですか?」でした。

まず驚いたのが、ヌッチの気合の入り様。小道具の杖をついて下手から舞台に入ってきたのですが、まぁすごい迫力とオーラ。何なら最前列にいたので見えてましたが、舞台に入ってくる前の脇にいる段階から気迫みたいなものが溢れていて完全にジェルモンが乗り移っていました。登場したら会場が一気に張り詰めた雰囲気に。そして第一声が放たれた時の胸を撃ち抜かれたような気持ちは忘れられません。「うわ、すげーや!!」って。マッシモ歌劇場来日公演の時に同じシーンでヌッチが登場した際に、それまで何となくだれていた会場の雰囲気が一変したのを思い出しました。それと、相手の言うことをしっかりと受けてかなり細かく演技をしていましたね。だから常に嘘が無く、常に人間的な感情のやりとりが見えました。気持ちがと歌が一体化しているとでも言いましょうか。ヴェルディの特徴はやはり演劇と音楽の融合。まさにこういうことを言うのだなと、ヌッチの演奏を聴きながらそう思わざるを得ませんでした。エンケレーダも負けじと堂々たるヴィオレッタを演じていて胸が熱くなりました。ジェルモンも娘や家の名誉の為に必死なのでそこに対して真っ向から悪い奴だと言い切れないという部分を感じさせてくれたヌッチ、気高く自らを犠牲にするヴィオレッタですが、年齢層高めな感じではなくて、若々しく瑞々しさのある声と容姿で「可哀そうすぎだよ」と思わせてくれたエンケレーダ。ややゆったりめのテンポで聴けて、二人とも本当に素晴らしかった。あ、そうだ、1つ気づいたのが、ヌッチの足元の革靴が、簡単な革靴というかエナメルのピカピカのではなかったのだけ年齢を感じました。これはメモ程度な話。

 

3曲目は、
第2幕  ジェルモンのアリア「プロヴァンスの海と陸」でした。

冒頭のフルートかな。吉本新喜劇なら多分ずっこけていたというか狙ったのかと思うくらいのミスがありましたが、ヌッチはそんなのお構いなしの歌唱。Sì, dell'incauto, che a ruina corre,Ammaliato da voi.は怒りの矢がヴィオレッタに向けてグサッと突き刺さったかのようでした。voiの言い方が多少崩してはいましたが強くアクセント付けて強調していて、「あなたに」というよりは「お前にな!」みたいな感じの印象を受けました。以前はそういう風には歌ってなかったので、また表現が深くなっていると思いました。そういう意味では1番と2番の歌詞の内容をよく捉えた表現の仕方がやはりうまい。特に2番になると御年83歳というところも乗っかって、冒頭の「年老いたお前の父親がどれだけ苦しんだかお前にはわかるまい」のあたりの表現はグッとくるものがありました。今回舞台上に椅子が2つ置いてあってそれに座ったり立ったりして歌っていましたが実に効果的で、2番になったら座って杖に体重を乗せて歌い始めたのですが、その姿が場面に物凄く合っていて、最近は演出活動も盛んなヌッチさすがだぜと思って観ていました。恐らくヌッチの考案でしょう。あと、最後のDio m'esaudì!を最後まで伸ばしてオケの終わりと同時に切っていたのですが、やっぱ沸きますよねそれは。マジで衰え知らずかと思いましたよ。ヌッチのこの曲、一体何回聴いたことだろう。でも、今回より表現が増していたのは驚きでした。この日ヌッチは恐らく鼻風邪を引いていたのか、途中で鼻水を拭くシーンが結構ありましたが、歌っている時に垂れてきても決して直接的に拭いたり、すすったりせず、演技の中でそれを消化していました。そこに舞台人としてのプライドとマナーを感じました。重唱や歌のないところではハンカチを出してはいましたが、歌っている時には決してお客さんになるべくわからないようにという配慮がすごかったです。あくまでもリゴレットで、ヌッチの時間を舞台で見せちゃあかんみたいに思っていたのではないかな。

 

4曲目は、
第3幕への間奏曲。

この間奏曲聴くと、もうヴィオレッタの死しかない結末をダイレクトに感じるので悲しみしかないのですが、これがあるからこの後のヴィオレッタが活きるので、そういう意味でも演奏してくれて良かったです。で、弦が素晴らしかった。ヴィオレッタの生気が失われていくような様を感じさせてくれました。

 

そして5曲目、前半最後は、
第3幕 ヴィオレッタのアリア「さようなら、過ぎ去った日々よ」でした。

これが、いやこれも実に素晴らしかったが正しいですが、エンケレーダの繊細な表現はヴィオレッタに求める歌唱でした。めっちゃ泣けた。ジェルモンからの手紙を読みながら舞台に登場したのですが、その時に裸足で歩いてきました。そして読み終えるのですが、Giorgio Germont...È tardi!はやっぱグっときますよね。そしてめっちゃ純粋なヴィオレッタを最後まで演じてくれました。大抵悲壮感漂いまくってて重々しく歌う人が多いのですが、ずっとベルカント。ずっと声が美しくて、だからこそ涙を誘われた、そんな感じでした。何回読んだんだろうあの手紙は。あぁ悲しい。アルフレードを失って、病気で自分は死にそうで、誰も頼る人がいない状況に置かれたのにも関わらす、心の美しさは消えていないというところが声から感じ取れました。また、ピアニッシモが美しくてやられましたね。音を絞るみたいなことはひとつもなくて、スッとピアニッシモに変われるのには舌を巻きました。しゃくることが全くなくて、いきなりその音の上の方から鳴るので最高に綺麗で美しいんです。最後は立膝で前かがみになって歌いそのまま前に伏せて歌い終わりましたが、彼女も憑依系なのかもしれません。めちゃくちゃ良かったです。聴衆がすぐに拍手しませんでしたもんね。息をのんで聴いていたので。拍手の時間もかなり長かったです。あのーすみません、誰か彼女を早く日本で何かできるように動いてください。普通に好き。

 

と、ここまでが前半。もうめちゃくちゃ良くて今思い出しただけでも胸のあたりがカーっと熱くなってきます。ヌッチも良かったのは当然として、エンケレーダがこんなに良かっただななんてという思いもあり、なんて贅沢な時間を過ごせたのだろうかと今振り返り思ってます。また、大御所中の大御所なのに舞台に工夫がたくさんあって、常に全部のプログラムが本気だったのは感動します。手を抜いて歌だけ歌ってても誰も文句言わないだろうに、人を楽しませたい、喜ばせたいという気持ちが前面に出ていました。さ、後半もみていきましょう。

 

後半は、【『リゴレット』ハイライト】でした。
 

1曲目は、

第1幕 リゴレットのモノローグ「俺たちは同類だ!」でした。

こちらもジェルモン同様に、役を降ろして足を引きずりながらの登場。降ろしても何もリゴレットは=ヌッチなので、もう勝手にあの動きになってしまうんだと思ってますが。で、ここでもさすがだなと思ったのは、Pari siamo!からではなく、Quel vecchio maledivami!を入れてからアリアに入ったことです。やはりリゴレットは最初のモンテローネの呪いがずっと付きまとうわけで、何ならそれが永遠の伏線みたいなことにもなっていると思うので、そこをまず提示しておいて、最後のSi,vendetta!に向かっていきたかったのだろうと推測します。自分がもし演出するとしてもここは同様に入れたいなと思いました。さすがヌッチ(が演出もしてると思ってる)。

Questo padrone mio,Giovin, giocondo, sì possente, bello,Sonnecchiando mi dice...Fa' ch'io rida, buffone!Forzarmi deggio e farlo! …と、ここの部分のヌッチがとても好きなので全文上げましたが、なんという表現力か。明らかにこれまでよりも表現に磨きがかかっていて、表情も豊かに歌っていました。そしてこのあとの、

Oh dannazione!…Odio a voi, cortigiani schernitori!
Quanta in mordervi ho gioia!
Se iniquo son, per cagion vostra è solo…

ですよね。そこまでとは打って変わって怒りがこみあげてくるこのあたりの感情の変化、からのMa in altr'uomo qui mi cangio…でジルダの元に帰ることのへの喜びや安らぎを感じさせてくれる歌唱と、めまぐるしく変わる音楽と気持ちが見事でした。私はこのアリアを聴くたびに、世の社会人はみな少なからず思うことが詰まっているように感じます。

 

2曲目は、そのまま1曲目とつながって歌われましたが、

第1幕 リゴレットとジルダの二重唱「娘よ! おとうさん!」でした。

ヴィオレッタも良かったエンケレーダでしたが、こちらも素晴らしかった。彼女の声は綺麗で美しいのですが、何より純粋さみたいなものがあります。それがジルダとの相性がバッチリで、むちゃくちゃ良かった。ヌッチはリゴレットが唯一心を許せる娘の前では、他の時とは全く違う、非常に優しい父親としての表情と声で歌い、2人の声が重なると優しさで会場があふれるようなそんな感じがしました。純粋に愛し合う親子という感じがね。

また、前半のPer compassion mi amò.Moria… le zolle coprano.Lievi quel capo amato.Sola or tu resti al misero…O Dio, sii ringraziato!のMoriaや、sii ringraziato!では泣きながら歌っていてウルっときました。Moriaは過去もそういう方向で歌ってた感じはありますが、sii ringraziato!でかなり泣きながら歌ってたので、83歳ヌッチは、リゴレットがジルダを得たことは、神に涙が出るほど感謝したくなるという気持ちになられたのかなとか、いろいろかんがえさせられました。全体的にそういうポイントポイントの演劇的な表現の幅がこれまで以上に深まったように感じました。おかげさまで、リゴレットにしか見えなくて、ヌッチは舞台上からいなくなってましたよね。ま、これは毎回のことか。音楽的には後半がかなりゆったり目で、並の歌い手だと音楽が崩れそうでしたが、2人ともきっちりハマっていて幸せなまま聴き終わりました。最後の最後、Mia figlia, addioのMia figliaの2回目も感情がさらにその言葉に乗っていて、より素敵だなと幸福感がマシマシでした。

 

3曲目は、
第1幕 ジルダのアリア「慕わしい人の名は」でした。

このアリアは聴かせどころも分かりやすくて、上手い人が歌わないと全く面白くないのですが、はい、めっちゃ良かったです。Gualtier Maldè… nome di lui sì amato,
Ti scolpisci nel core innamorato!を聴けばそのあとの予想がつくんですけど、確信しましたよ。あ、これはやっぱりヴィオレッタも良かったけど、これも絶対良いぞと。この曲って高音を叫んでしまう感じがあると一気に冷めるわですが、全くなく非常に美しい発声でした。マジで良かった。彼女のリサイタルあったら絶対行くわ。彼女が今回歌った中では一番良かったかな。私の前にはエンケレーダしかいない状態で聴いていたわけですが、彼女の後ろにパイプオルガンと階段の様になって見える客席があって、舞台の照明が彼女に降り注いでいて、室内楽が奏でられていて...みたいな状態があまりにも美しくそして神々しくて、それだけで涙が出そうになりましたが、そこに純度100%の声が乗ってきて、私は今何を見ているのだろうか。天使なのか、女神なのか。そんな気持ちにすらなりました。抑制の効いたコロラトゥーラ、粒の揃った言葉、音程の良さ、あまりにも美しいピアニッシモ、ジルダの恋焦がれる様子を全身で、表情でも集中力切れずに演じ続ける様、すべてにおいて素晴らしかったですね。これが技巧に自信がありますみたいな感じでひけらかす感じだと(それはそれでテンション上がるけど)ここまでの興奮は得られなかったかもしれません。ヌッチがメインだからということもあって抑えてたのかもしれませんが、控えめでステージマナーも素敵で、エレガントでしたが時より見せる笑顔にはキュートさもあって素敵でした。これも歌い終わりはすぐに拍手が出ずにみんな聴き惚れてましたね。声の純粋さはこのままずっと失わないで活躍していってほしいなぁ。

 

4曲目は、
第2幕 リゴレットのアリア「悪魔め、鬼め」でした。

何度このアリアを生も含めて聴いたことでしょう。

まずは最初のブチギレのところですが、Se dei figli difende l'onor.ではめちゃくちゃ伸ばしてて、ヌッチのリゴレットはやはりこれだよなと健在ぶりを改めて感じました。音楽が鳴り始めると目も身体も若返るというか、何か物凄いものを目の当たりにしてるというか、時間を超越した神なのかという思いも生まれます。

そして特に後半ですが、この曲もこれまで以上の表現力が見事でした。

Ah! Ebben, piango Marullo… Signore,Tu ch'hai l'alma gentil come il core,
Dimmi tu ove l'hanno nascosta?このあたりはずっと泣きで歌っていました。必然的に私も泣きました。ほんとに泣いてるみたいだったんですもん。うますぎる。泣きながら歌うってムズイと思うんですよね。で、全然やりすぎとか感じないで自然に泣きが入るから実に効果的。実際「泣けてくる」とか言ってますしね。後半のずっとジルダを返してほしいと懇願しているところはやはり涙涙でした。Pietà, pietà, Signori, pietà.では全盛期のようなヌッチの輝かしい声がカッツリハマりました。感動です。

 

5・6曲目は、
第2幕 リゴレットとジルダの二重唱「日曜ごとに教会に~娘よ、泣きなさい」
第2幕  リゴレットとジルダの二重唱「復讐だ!」でした。

この辺から、あぁプログラムとしてはもう終わっちゃうんだなぁと複雑な思いも感じつつ聴きました。ジルダは怯えたような困惑の表情で舞台に出てきました。怖かったのでしょうね。そしてすぐに抱きしめるリゴレット。当然ジルダは可哀そうですが、大事に大事に育ててきた娘がかどわかされて貞節も奪われ、リゴレットも可哀そうなんですよね。後半のAh! piangi, fanciulla, scorrer.Fa il pianto sul mio cor.からはとてもゆっくりなテンポになったのですが、今回はやらない3幕の最後にジルダが死んでしまうところを彷彿するようでもありました。リゴレットの彼女に対する優しさがジルダを包みこむかのように歌われました。そして、前奏を少し演奏してそのまま「復讐だ!」に入ったのですが、ヌッチの目がギラギラと輝き、復讐復讐の鬼と化しました。細かい音符もなんのその。グイグイ突き進み、エンケレーダもそれに引っ張られるようにボルテージは最高潮へ。しかも、最後のTe colpire il buffonenoの後 saprà.で伸ばすが常で、その前は安んでから歌うのが毎度のことなんですけど、今回はsapràで伸ばす前に、Te colpire il buffone si... saprà.とsiを入れたんですね。確かにそれを入れてるのを聴いたことありますが、近年全くなかったのでテンション的には爆上がりました。ただね、ただ、そのせいなのかどうかは不明ですが、最後のアクート伸ばすとこは結構喉が開いちゃって微妙な感じで終わってしましました。ヌッチがそこでミスるなんて初めて聴いたよ。まぁでもね、そこは決まらなかったけど、そこまでずっと素晴らしかったので全然良いんですけどね。そら約58年?のキャリアだもの。1回くらいそうなるさ。逆にレアかもわからん。とにかく、燃えたことだけはお伝えしておきましょう。

 

でね、でねでね、そのあとBisを叫びましてね。ヌッチ目を丸くしてリアクションしてくれて。そこからBisを連呼。「おいおい待てよ」的なことがあり、エンケレーダはどこかに行ってしまい、残されたヌッチ。第1バイオリンと話をすると始まりました。なんとびっくりもう1回「悪魔め、鬼め」でした!!「そうだ、復讐だ!」はこれまでも基本アリみたいなイメージというか、Bisとセットみたいな感じがあったので当然のごとく叫んだわけですが、なんというサプライズ。このあたりからアイコンタクトや実際に話しかけてくれたりと、最前列真ん中の席で良かったという思いを堪能。曲が始まってもアイコンタクトが続き、盛り上がりました。この時は、Se dei figli difende l'onor.のとこ時計見て歌ったりしてちょっと笑いがあったり、前半はふざけてましたが、後半はしっかりとリゴレットとして歌いあげてくれました。2回目はまた違った「悪魔め、鬼め」を披露してくれて最高でした。なんだろう、Bisでやってくれた時の方が若いころのリゴレット感が出てましたね。歌うごとに若返るレオ・ヌッチ。歌い終わったら銃で撃つ指ジェスチャーをされました(笑)

 

※追記 上記の「悪魔め鬼め」はどうやら元々のアンコール予定になかったようです。サントリーホールのホームページのアンコール曲目に載ってませんでした。これは私を含めたBisを叫んだみんなの願いがヌッチを動かしてくれた感じですな。



そのあとはエンケレーダがお着替えをして登場。曲目は「私のお父さん」超ぶりっ子な感じで上目遣いな女子という感じでしっかりとラウレッタになりきって歌ってくれました。私がジャンニ・スキッキなら、秒で結婚認めますわ。こちらの歌唱も素晴らしくて、やはり高音が美しいのよね。私のお隣で新たな掛け声を発明していた方がいました。KAWAII‼という(笑)わらってしまいました。Bravi‼の発音でいけそうです。前列?私とその方?盛り上がってましたねぇ。

 

もう終わりかと思いきやまだありました。前奏がちょっと鳴った瞬間にマジか!!となりました。だって「祖国の敵か」なんですもん!!!最近歌いたくなってそれこそヌッチの参加してる全曲盤のCD聴いてたとこだったので、こんな偶然があるのかとテンション上がりましたね。僕が「あ!!」というリアクションしたら、ヌッチも指さして「そうだぜ、それだぜ!!」という展開。で、これがむちゃくちゃ良かった。どんどん若返るということを既述してますが、この曲もまさにそうでした。もう幸せでした。そもそも大好きなんでねこの曲自体が。

 

さ、もうないのかなと思ったら、ヌッチの大好きな締めのあれがやってきました。そうです。「勿忘草」です。これの前奏が聴こえてきた時に「わすれねぇよ!忘れたくても忘れられるわけない」と思ったか口に出したか。そんな感じでバイオリンのソロを挟み、移調しエンケレーダが歌いました。その時にヌッチが日本語で「うたって!うたって!」と言ってきたので「OK喉は温まってるぜ」という感じでフルボイスで歌い始め、「最後上に上げて」というジェスチャーも受け「OKそのつもりだぜ」と思い、「あれ俺こんな良い声出たかな」と思うくらい良い声が出ました。ヌッチに応えなきゃという一心でしたね。もちろん会場のみなさんも歌ってる?ので会場中大盛り上がり。アンコールとしてもこれが最後でしたが、最後カーテンコールで後ろを見たらサントリーホール総立ち。圧巻でした。ほんとに総立ちでした。その中でヌッチがエンケレーダを指して「cinquanta anni」と言っていたので、前列はドカーンと大爆笑。ということはエンケレーダは約33くらいってことだ。へぇ。凄い人連れてきてくれたもんですよ。あとは、ヌッチが「Arrivederci」と言ってくれので、隣の方と私は大いに盛り上がって「Arrivederci‼Arrivederci‼」と叫んでました(笑)だって「Addio」じゃないんだもん。また会えるかもだもん。

 

終わってからサイン会はあるのかななんて思いながら楽屋口へ行くと、何やら長蛇の列。これはもしやと思ったらありました!!

ヌッチにもエンケレーダにもアドリアーナ夫人にも会えました。

そこでヌッチに「いい歌だった、良かったよ」と「勿忘草」を褒めてもらえました。なんという喜び。これだけでご飯何杯でもいけますわ。

そんなわけで最高の1日を過ごさせていただきました。

関係各所の皆様お疲れ様でございました。そういう裏方さんのおかけで楽しませていただけています。

で、おもったんですけど、ヌッチまだまだいけますね...うふふふふ。

これ以上は言わないけど。

 












どえらい演奏会に行ってきましたよ。

全てがメインディッシュの演奏会。しかも私の大好物しか出てこないというありがとうシェフ的な企画。

そう、日本ロッシーニ協会の演奏会でございます。

コロナ禍を経て6年ぶりの開催とのことで、前回の演奏会も聴きに行ってるのですが、あれからもうそんなに経つのかと思い驚愕。そんなに前なのねぇ。時が経つのは早いわぁ。

今回の出演者は、テノールの糸賀 修平、小堀 勇介、渡辺 康、それから、メゾソプラノの富岡 明子というあざーすな方々。あざーすじゃねぇな。もとい、心より御礼申し上げますな方々でした。

想像しただけでも生唾モノでしょ?

僕は楽しみでよだれが垂れすぎた結果溺れそうになりましたよまったく(んなわけあるかい)

今回のプログラムは、日本ロッシーニ協会だから実現したというか、普通それらでプログラム組まないよねという内容でしたが、だからこそ嬉しいというか、好事家としてはありがたいところなわけでして。

プログラムは以下の通り。

【第一部】

1.《オテッロ》より ロドリーゴとイアーゴの二重唱「いや、恐れてはならぬ」

 Otello (1816) N.3 Duetto Rodrigo・Iago(No, non temer)

 渡辺康/糸賀修平

2.《オテッロ》より ロドリーゴのアリア「なんですと!ああ!何をおっしゃるのですか!」

 Otello (1816) N.6 Aria Rodrigo(Che ascolto! ahimè! che dici!)

 小堀勇介

3.《リッチャルドとゾライデ 》より ゾライデとリッチャルドの二重唱「リッチャルド!…私はなにを感じているの…」

 Ricciardo e Zoraide (1818) N.11 Duetto Zoraide・Ricciardo(Ricciardo!… che veggo…)

 富岡明子/渡辺康

4.《湖の女》より ロドリーゴのカヴァティーナ「我はお前たちと共に、我が勇者たちよ」

 La donna del lago (1819) N.6 Cavatina Rodrigo(Eccomi a voi, miei prodi co fra)

 糸賀修平

5.《湖の女》より エレーナ、ウベルト、ロドリーゴの三重唱「どうか分別をもって」

 La donna del lago (1819) N.9 Terzetto Elena・Uberto・Rodrigo(Alla ragion deh rieda)

 富岡明子/小堀勇介/渡辺康

【第二部】

6.《グロリア・ミサ》より 二重唱「クリステ・エレイソン(キリストよ、憐れみたまえ)」

 Messa di Gloria (1820) N.1-2 Duetto Tenore I・II(Christe, eleison)

 糸賀舜平/渡辺康

7.《グロリア・ミサ》より テノール独唱「クィ・トリス(世の罪を除き給う主よ)」

 Messa di Gloria (1820) N.6 Tenore solo(Qui tollis peccata mundi)

 小堀勇介

8.《湖の女》より エレーナとウベルトの二重唱「あなたは既に人妻ですか?」

 La donna del lago (1819) N.2 Duetto Elena・Uberto(Sei gia sposa?)

 富岡明子/糸賀修平

9.《エルミオーネ》 より オレステのカヴァティーナ「憎むべき王宮よ!」

 Ermione (1819) N.4 Cavatina Oreste(Reggia abborrita!)

 渡辺康[ピラーデ・糸賀舜平]

10.《アルミーダ》 より リナルド、カルロ、ウバルドの三重唱「その臆病な顔つきの」

 Armida (1817) N.14 Terzetto Rinaldo・Carlo・Ubaldo(In quale aspetto imbelle)

 小堀勇介/渡辺康/糸賀修平

※ 小堀勇介/糸賀修平/渡辺康が当日訂正されたプログラム

11.《ゼルミーラ》より 第2幕フィナーレ【ゼルミーラのアリア】『玉座へお戻りください、怒れる星は』

 Zelmira (1822) N.11 Finale II [Aria finale Zelmira](Riedi al soglio: irata stella)

 富岡明子[助演:渡辺康/糸賀修平]

いかがでしょうか。

重くね?(笑)

いや、声がじゃなくてよ?もちろんプログラムがね。なんて素敵な演奏会かしら。さいこー。

しかもね、今回はロッシーニ協会からお知らせ来た瞬間に予約したら、最前列のど真ん中4席を確保出来たのでしっかりとかぶりつけました。うふふ。メインディッシュをかぶりつきまくりでお腹いっぱい。パンシロン欲しいくらい。

さあでは前半から振り返りましょう。

1曲目の《オテッロ》より ロドリーゴとイアーゴの二重唱「いや、恐れてはならぬ」

Otello (1816) N.3 Duetto Rodrigo・Iago(No, non temer)

ですが、もうそれは。それはそれは。それはそれはそれはすんばらしかったですよ。のっけからこんなに素晴らしいかとテンション爆上がり。冗談抜きに。マジで良かった。なんか魔笛で言うと鎧武者のようなめちゃくちゃ強そうな2人。技術と声の無双感。いきなりこんな凄いのをドーンやられちゃって否が応でもその後の演奏会への期待が高まりましたね。CDで販売して欲しいレベル。マジで良かった。後半のアジリタ祭が気持ち良すぎました。独白になったり掛け合いになったりその度お互いの醸し出す声の空気感が絶妙でした。糸賀さんのガチなロッシーニ実は初だったかもしれないんですが、やっぱね、兼ね備えてるよね。持ってる声自体がベルカント聴くにはもってこいですし、鍛錬された技術とそれだからこそ可能などこのポジションでも同じ様に響く艷やかなまさにイタリアの響きが聴いていて喜びに変わる。さすがです。それと、驚いたのは渡辺さん。こんなにロッシーニ良いとは思ってなかった!!渡辺さんは、ロッシーニが凄いんだよってイメージが無かったのですが、今回聴いてむちゃくちゃ良くて、え?こんな感じだった?ってなりました。元々上手い歌い手さんですけど、ロッシーニがこんなにハマってるというイメージがなかったんですよね。キャリアの中でこつこつ努力されて、揺るぎない今を得た、(勝手に)そんな感じもして好印象甚だしい。安定感もさることながら、声もノーブルで伸びやかそれでいて転がる。むちゃくちゃ良かった。これはもの凄い2人の二重唱を聴いてしまったぞいきなりニヤニヤが止まらない。

2曲目は、同じく《オテッロ》より ロドリーゴのアリア「なんですと!ああ!何をおっしゃるのですか!」

 Otello (1816) N.6 Aria Rodrigo(Che ascolto! ahimè! che dici!)

でしたが、我が盟友小堀勇介が歌いました。間違えた。親友だった(やめとけ)。

何度もこの曲は小堀さんで聴いてるので、また聴けるなんてやったーってな感じでした。今回いきなりのやはりメインディッシュ的な曲で、準備も無い中でいきなりということもあったからなのか、ちょいとばかりアクートがきつそうなとこはありましたが、これまで聴いてきたどの演奏会よりも、表現力が増しまくっていました。小堀系ラーメン表現力マシマシ(ワオおいしそう)。出てきてお辞儀して顔が上がってくる時にスイッチ入ったのが分かるくらいの全集中の顔つきでロドリーゴの色んな感情がひしひしと伝わってくる。以前もそういう風に感じることはありましたが、今回は明らかに何個か更に上に行った感じ。内面をえぐる感じが歌に乗ってました。まさに舞台上に見えるはロドリーゴ。前半の悲しそうなところからの後半怒りで復讐の鬼となりまくし立てていく様は圧巻。私も聴いていて煮えたぎってしまい、終わってから暑くてね。若干乾燥していたホール内でも汗ばんだわよ。あと、1カ所は歌い方変わってました。やっぱ進化していくなぁって思ったよ。

3曲目は、《リッチャルドとゾライデ 》より ゾライデとリッチャルドの二重唱「リッチャルド!…私はなにを感じているの…」

 Ricciardo e Zoraide (1818) N.11 Duetto Zoraide・Ricciardo(Ricciardo!… che veggo…)

こちらは、全体的に富岡さんと渡辺さんが非常に高い集中力で歌われていてヴァリエーションも凄くてグイグイ惹き込まれました。富岡さん久々に聴きましたがアジリタがやべぇっすよ姉さんって感じ。どんだけ転がるのかしら。下降も上昇も気持ちよすぎ。しっかりメゾなんだけど上も楽々出るし理想ですね。渡辺さんはこれまたずっと声が美しくて、聴き惚れました。アクートも鳴りまくり。1曲目よりもより喉が開いた感じで更に更に素晴らしい歌唱でした。この曲が聴けるなんてそれこそロッシーニ協会だからですね。嬉しい。しかもこんなに素晴らしい2人で聴けて。ロッシーニだなぁと思わせる変化に富んだ二重唱、全く飽きずに前半中盤後半と聴けました。拍手。

4曲目は、《湖の女》より ロドリーゴのカヴァティーナ「我はお前たちと共に、我が勇者たちよ」

 La donna del lago (1819) N.6 Cavatina Rodrigo(Eccomi a voi, miei prodi co fra)

でしたが、まさかの糸賀さんがこれを歌ったんですよ。おいマジかってなりましたよね。これ糸賀さんの範疇よやつちゃうやろと。でも逆にどんな感じになるのだろうとこの木なんの木くらいきになっちゃったわけで。でね、やっぱりそこは糸賀修平なわけですよ。しっかりやれちゃうという。確かにやっぱりもっと重めというかパワフルやんちゃ系な感じは欲しいなとか少し思いましたけど、そもそも糸賀さんにこの曲振ってるからそれを求めるのは酷な話で。すごく大変だと思うんです。低いとこからの跳躍もあるし、低めなとこで転がしたりとか、ただ、それでも型崩れしないで形式的にも綺麗に仕上げてきていて、かつ、血気盛んな雰囲気を損なわず歌っていた糸賀さんにマジで拍手です。ほんとにすごいなと思う。やっぱこの人凄いやって感心しながら聴いてました。

5曲目、1部最後はこちら。

《湖の女》より エレーナ、ウベルト、ロドリーゴの三重唱「どうか分別をもって」

 La donna del lago (1819) N.9 Terzetto Elena・Uberto・Rodrigo(Alla ragion deh rieda)

とてもロッシーニっぽいなと思う前半二重唱から、後半がのヴェルディで言うとトロヴァトーレの三重唱のような燃える系のやーつに移る曲ですが、まずは富岡さんのアジリタがやばすぎるということを全面に押し出していきたいですよね。喉?どうなってるん。どこの位置で転がっても全て粒ぞろいであまりにも美しい。耳福。耳に残るはあなたの美しく音色。そして小堀さんが爆発ですわ。前半も後半も申し分ない歌唱。以前、ロドリーゴをやられていたことがありましたが、やはりウベルトが合ってますな。アクートもキンキンです。やっぱこう刺さる感じで鳴ってくれると正直心弾みますな。で、ここでまた渡辺さんに驚いたのですが、こちらはロドリーゴを歌われていて、これまでのイメージではないダイレクトに刺さる感じのアクートがビシビシきました。いろんな面持ってるやん。聴かせてくれるぜ。3人の白熱の三重唱で1部が盛り上がって休憩となりました。そういえば曲終わりはけるときに小堀さんガッツポーズしてました(笑)やったったでってことでしょうかね。やられましたよぐふっ。

さぁ、2部はどんなんだったでしょうか。

2部1曲目は、

《グロリア・ミサ》より 二重唱「クリステ・エレイソン(キリストよ、憐れみたまえ)」

 Messa di Gloria (1820) N.1-2 Duetto Tenore I・II(Christe, eleison)

でした。こちら糸賀さんと渡辺さんの2人による歌唱でしたが、もうこれは美です。美。美しさしかなかった。上を歌っていた糸賀さんがあまりにも美しかった。耽美というのでしょうか。綺麗〜にずっとハモっていて、王子ではなく天使が舞い降りてきそうな、そんなホールになっておりました。もちろん下も寄り添っていかないと美しくハモらないので、結局2人共素晴らしかったです。普段あまり聴かないのでこれを機に聴いてみよう。

2曲目は、

《グロリア・ミサ》より テノール独唱「クィ・トリス(世の罪を除き給う主よ)」

 Messa di Gloria (1820) N.6 Tenore solo(Qui tollis peccata mundi)

でしたが、なんなんこれ。むずすぎでしょ(笑)

グローリア・ミサはもちろん聴いたことあるけども、忘れてましたこの曲。で、改めて思う、なんなんこの曲(笑)大迫半端ないってくらいの感じでこの曲半端ないって、ですよ。むずいよね。宗教曲っぽくもないし、かといってめちゃオペラっぽいかと言われたらそんな感じもないし、掴みどころがないぜ。ロッシーニさんよ。ただ、後半は完全にオペラのアリアのようではありましたね。ヴェルディの亡命者を思い出しました。歌曲だけどもう後半オペラアリアやん的な意味で。いやぁ面白い。この曲もっと聴きたくなった。で、小堀さんこれを暗譜で歌いきっていてまずそこが凄い。しかもヴァリエーションもしっかりと入れてる(と思う)。これは白眉ですな。すげぇとしか言えない。お口あんぐりです。素晴らし過ぎて天にも昇る気持ち。それにこの曲が小堀さんの声に合ってね。協会のチョイスも素晴らしいです。安いギャラでこれを歌わせて申し訳ない的なことを会長が言ってましたけど(笑)

続いて3曲目は、

《湖の女》より エレーナとウベルトの二重唱「あなたは既に人妻ですか?」

 La donna del lago (1819) N.2 Duetto Elena・Uberto(Sei gia sposa?)

富岡さんと糸賀さんが歌いましたが、ここでお気付きだろうか。糸賀さんは、ロドリーゴもやってこのウベルトもやってたんです。すごっ!!そしてやはり糸賀さんはウベルトだよねということに落ち着く。明るく若々しい声が会場を包む。シラグーザを彷彿。あくまでも彷彿。声若いなぁ。凄いわ。20代くらいの若さあふれる声よ。努力しまくってるんだろうなと思う。尊敬。そっちに集中して富岡さんの方があまり記憶がないけど、後半のヴァリエーションの応酬みたいなとこから最後まではソプラノかと思うくらい上が鳴りまくってて圧倒されました。

4曲目はこちら。

《エルミオーネ》 より オレステのカヴァティーナ「憎むべき王宮よ!」

 Ermione (1819) N.4 Cavatina Oreste(Reggia abborrita!)

個人的にはフローレスのイメージが強い曲なのですが、今回歌った渡辺さんは渡辺オレステをしっかりと打ち出してくれていましたね。普通にうまくてただただ聴いてしまった。で、合間合間に入ってくる糸賀さんがこれまた上手くて、この曲をこんな高水準に聴けるなんて嬉しいという気持ちがぐわーっと芽生えてきました。糸賀さんの煽りというか後半の音楽的な煽りというのか、相乗効果でどんどん盛り上がっていきました。良かった!!

5曲目は、

《アルミーダ》 より リナルド、カルロ、ウバルドの三重唱「その臆病な顔つきの」

 Armida (1817) N.14 Terzetto Rinaldo・Carlo・Ubaldo(In quale aspetto imbelle)

でした。いわゆるアルミーダの三重唱と言えばの曲ですね。前半のハモリが他では感じたことないくらい美しくて、この曲こんなに美しかったのかと思いました。後半はテンポ的にはもうちょい早い方が好きでしたが3人のこれでもかという応酬が凄くて、燃えまくりでした。小堀さんよくそこから上出ますねって感じに更にヴァリエーションでアジリタも駆使しまくって凄かったし、他の二人もそれぞれがこれでもかと出しまくってて、うん、ほんと、燃えたわ。燃焼。痩せたと思う。燃焼して。

6曲目は、

《ゼルミーラ》より 第2幕フィナーレ【ゼルミーラのアリア】『玉座へお戻りください、怒れる星は』

 Zelmira (1822) N.11 Finale II [Aria finale Zelmira](Riedi al soglio: irata stella)

富岡さんのアリア。もうこれは超絶凄すぎて神でした。何の無理もないアジリタ。人間業じゃないですよ。何であんなことが可能なのか。訓練の賜物なんだと思いますけど、ルチアーナ・セッラのフォルヴィルとか聴いた時に思うような気持ちになりましたよ。思い出しただけでも鳥肌立つ。富岡さんもっと色んな機会で聴きたいなぁ。日本が誇るロッシーニ歌いですよね。すごすぎるー!!!!!!!!!

そしてそして、アンコールが1曲。

曲目は《4人のソプラノの為の無限カノン》ちなみに副題は一番下にある画像をご覧ください。

で、なにこれ?(笑)

となりましたが、猫や犬ニワトリの鳴き声なんかが入って輪唱していくとても面白くも綺麗な重唱でした。最初にじゃんけんしてましたが、最初に誰が歌い始めるかのじゃんけんだと思いますが、小堀さんスタートとなりました。メインディッシュだらけのなかで最後に、デザートとして出してくれましたこの曲。こちらかわいい曲で楽しくて良かったです。

終演後、男性の方々には最前列にいたやろということでバレてましたが、おかしいな。小さくなってたつもりだったんだけど。あ、顔がでかいからバレたのかな(体も態度もな)。

ということで、素晴らしい演奏会でした。

燃えまくり。みんな素敵。マジで最高。

こういう演奏会をもっともっと日本でやってほしいなと思います。だって、好きなのだもの。

演者の皆様、関係者の皆様、ありがとうございました。

VIVA ROSSNI !!