甦った三島由紀夫・53 | ヌース出版のブログ

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『ロゴスドン』Webの連載小説「甦った三島由紀夫」を更新しました。

 

第53回

中国人留学生C (その三)


 
C 今日は三島さんに、日本の美についてお聞きしたいと思います。私、来日した年に京都の竜安寺の石庭を見たんですが・・・まず感じたのが、月並みですけど静寂です。そして非常に精神的な深みが無生物の庭という風景に潜んでいる・・・というより何て言うんでしょう?
M 息づいている。
C ああ、そうですね。ともかく凄くスピリチュアルなものが辺りに漂っていて、私に語りかけてくるような気がしました。庭の「こころ」ですかね。とても緊張しました。でも「美」という点では、どう考えてもよくわかりませんでした。それで先生にお聞きしようと。
M 石庭の美を「美」と呼ぶなら、それは日本人の美意識の根本が「死」にあるのであって、石庭は死そのものの不死を形象化したものだと私は思っています。
C すみません、よく分かりません。具体的に言うと・・・?
M 例えば、そして最も完璧な実例として、ギリシア人は美の不死を信じていた。人体を不死の美として石に刻み込んだわけです。それがギリシア彫刻です。しかし日本人は不死の人体美などは信じていない。けれども人間の不死は、魂の拠り所として精神の基盤となるものである。だからそれを表現するには死の空寂を何かに譬えて、例えば石に込めて形象化するしかなかった。それは極めて具体的な或るもの、とも言えましょう。
C ということは、日本人の求める美とは普遍的なものではなくて、一回的なものと考えていいでしょうか。

 

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