手術室
ちょっとした入院と手術。抜糸が終われば、また普通の日々が始まる。
都合、人生で何度目の手術台なんだろう…と思いながら、台に上がった。
家族で手術体験があるのは私だけ…と今日まで私は思っていたが、実は違うらしいのだ。
術後、父に手術の内容などを話していたら、『いや、実は俺も一回だけ、あるんだよ…』と云う。
父は『俺は包茎の手術したんだよ』
聞けば、就職して数年後、周囲から『結婚のためにも』やっておいた方が良い…と促されたらしい。
当時、父が勤めていた『親方日の丸』な某国鉄は、職場の仲間にバレる事も伏せるために、健康保険など様々な書類は偽名が可能だったとかで、そういいう意味では、古き佳き時代を反映しているが、しかし…だ。こちらは、そんな呑気な手術ではない。正直、父がかって包茎であろうと、私には無関係だ。『そりゃあ、良かった…ね』…何か良いのか意味不明な返事を私は父に返した。
『急に、父は私に何を言い出したのだ?』と戸惑う。そして、麻酔効果が薄くなり、次第に縫合した針と糸目の一つ、一つが互いに主張を開始したような痛みに襲われる。
だが、唐突に『六十年前に受けた包茎手術』をネタにして、妙な笑いを誘う父。おかげで、少しだけ麻酔切れの痛みが緩くなった…。
けっ…そんな訳ないだろ。『ほっこり』なんかしねぇっうの!






